第12話 やはり私の不運のせいなのか
「盗賊が襲ってきた! ここは馬車を止めずに走り抜けます! 飛ばされないよう、何かに掴まって耐えて下さい!」
「お嬢様は荷台の奥の方へ、身を隠して」
「私が前に座って、隠します。お嬢様、コチラに」
「ッ!? う、うん」
御者のタデウスの慌てた声。執事のゲオルグの指示に従って、私は奥に引っ込む。マイユとは別のもう一人、同行してくれていたメイドのケーテが、私の姿が外からは見えないように座り位置を変えて、隠してくれた。
馬車の走るスピードが上がっていくのを感じる。馬車の床板が、ガタガタと激しく揺れる振動が身体にまで伝わってきたから。
迫りくる危険に、私の胸も激しい鼓動を繰り返す。盗賊に遭遇してしまうなんて。
「おいおい! 逃げんなって!」
「お前ら、アイツを逃がすなよ!」
「「「オウ!」」」
盗賊たちの騒ぐ声が後方から聞こえた。馬車のスピードが早くなり、離れていく。無事に逃げ切ることが出来るのか。
「クソッ! 奴ら、この距離を弓矢で!?」
「危ない、避けろッ!」
「クソッ! 無理です!」
「キャッ!?」
「うわっ!?」
襲ってきた盗賊から逃げ切ることが出来なかった。遠距離から弓矢を当てられて、猛スピードで逃げていた馬車は無理やり止められた。
馬車が急停止して、すごい衝撃があった。荷台の奥で隠れていた私は、横に倒れてしまう。マイユとケーテが、馬車の外に飛ばされてしまった。馬の悲鳴も聞こえてくる悲惨な状況。
「く、だ、大丈夫ですか? カトリーヌお嬢様!?」
「な、なんともないわ。それよりも、二人が外に飛ばされて……!」
「くっ……! マイユ、ケーテ! 大丈夫か?」
ゲオルグが、外に飛ばされてしまった二人のメイドに声をかける。
「ハイ! こっちは、なんとか大丈夫です!」
「ですが、後ろから盗賊たちが近づいてきます! 早く逃げないと!」
二人の元気そうな声が返ってきた。無事だと言うので安心したけれど、盗賊たちが接近してきていると聞いて不安になる。
「タデウス、馬車は? 動かせないか?」
「駄目です。馬がやられてしまった。これじゃあ、動かせない!」
「なんてことだ……!」
タデウスとゲオルグが絶望する。ここから逃げることが出来ない。
「ヘヘッ! こいつは、なかなか上物のようだぞ」
「貴族の馬車か? メイドが二人も居るぞ」
「これは、身代金をたっぷり引き出せそうだぜ」
「しかも、可愛い! 楽しめそうだぜ」
「おいおい。金になる商品なら、手を出すなよ」
下品な声で笑う男たちに取り囲まれてしまった。盗賊に襲われて、私を助けようとしてくれていた彼らを巻き込んでしまった。
やはり私は、不運を振りまく存在だということなのかしら。この結果を見て、そう思わずにはいられなかった。
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