第06話 サポートしてくれる人

「カトリーヌお嬢様、こちらに」

「え?」


 先程、お母様のビンタから助けてくれたメイドが声をかけてきた。


「すぐ屋敷を出ていけるように、旅の準備を整えましょう」

「あぁ、なるほど。分かったわ」


 流石にお父様も、何もなしで家から追い出すだなんてことは、しなかったようだ。メイドを付けてくれたらしい。


 私は、彼女に誘導されるままついていく。案内されたのは、自分の部屋。


「お嬢様、忘れ物が無いように旅の準備をして下さい。屋敷を出たら、二度と戻って来られないと思いますから。何か必要なものがありましたら、お申し付けください。私が代わりに、急いで取ってきます」

「ありがとう。とりあえずこれで準備は十分、……だと思うわ」


 家から出る予定なんて無かった。だから、事前に準備なんてしていない。だけど、適当に目に付いたもの、着替えなどカバンの中に詰め込んでいく。おそらく、色々と忘れ物がありそうだ。後になって、持ってくるべきだったと後悔するようなモノも、ありそう。


 だけど、そうも言っていられない。お父様から出ていくように言われて、さっさと出ていかないと怒られそうだ。急がないと。


 彼女に手伝ってもらいながら、旅の荷物をカバンひとつにまとめて準備は完了。


「用意、出来ましたか? それなら、行きましょう。コチラです」

「どこに行くの?」

「馬車を用意しています。それに乗って、王都の外へ」

「わかった。ありがとう」


 馬車まで用意してくれたらしい。ありがたいけれど、王都の外へ行った後の予定が決まっていない。私は、どこに向かえばいいのか。


「お嬢様の荷物は、私が運びます」

「あ、うん。助かります」

「急ぎましょう」

「えぇ」


 私が持とうとしたカバンを、彼女が代わりに持ってくれた。急いで移動したいからなのかと思ったが、私を心配して代わりに持ってくれるようだった。


 とても真っ直ぐな、親切な気持ちだと思う。


 ラフォン家から追い出されてしまう未来の無い小娘に対して、なぜこんなに世話をしてくれるのかしら。


 屋敷で働くメイドである彼女の雇い主は、お父様だろう。もしかしたら、この先に酷いことが待ち受けているかもしれない。


 王都の外へ連れて行かれたら、そのまま私は処分されるかも。

 

 だけど、彼女を信じてついて行こうと思う。レナルド王子やラフォン家の人たちと違って、丁寧に扱ってくれる。優しく気遣ってくれたから。

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