うさぎに貴賎なし

 うさぎに貴賎なし。

 うさぎは血統書付きだろうがそうでなかろうが、すべからく可愛いし存在しているだけで尊い。


 純血種の1番人気は、10万円近くとかなりお高めなネザーランドドワーフ。世界最小の品種だ。

 耳は短く、大人になっても体重は1kg以下というのが、この種の理想形である。


 逆に、世界最大のうさぎはフレミッシュジャイアント。

 もとは毛皮や食肉のために品種改良されて誕生した品種だそうだが、今ではペットとしても扱われている。

 いつかフレミッシュジャイアントを飼うのが、わたしの夢だ。


 垂れ耳うさぎの代表は、もちろんホーランドロップだろう。

 警戒心の強いネザーランドドワーフとは反対に、温厚な性格の個体が多いらしい。人懐っこく、接しやすいうさぎと言える。


 毛の長い、モップのようなうさぎもいる。アンゴラ、ジャージーウーリー。

 反対に短毛でシルクのような手触りと名高いのは、ミニレッキス。


 ペットとしてメジャーな品種はこの辺りだろう。

 ひと口にうさぎと言っても、体型や容貌はさまざま。


 立ち耳か、垂れ耳か。

 大きいか、小さいか。

 長毛か、短毛か。


 うさぎ狂いのわたしだって、うさぎなら何でもいいという訳じゃない。


 耳はうさぎらしく立っている方がいい。そして、長い方がいい。


 大きさは小さすぎなければどんな大きさでもいい。あまりに小さいと、儚すぎて胸が押しつぶされそうになる。


 長毛種も可愛いと思うが、やはりつぶらな瞳がはっきりと見える短毛種の方が好ましい。

 とはいえ、レッキスほどの短毛だと身体の丸みがなくなってしまうので、ほどほどの短毛がベスト。


 これが、わたしの好みのタイプだ。

 この好みにぴったりとあううさぎはというと、「ミニウサギ」である。


 ミニウサギとは、正確に言うと品種ではない。


 雑種……今風に言うとミックスだろうか。

 いろんな品種の血が混ざったうさぎが、ミニウサギという名でペットショップでは売られている。


 うちのうさぎは2匹ともミニウサギだ。

 同じミニウサギでも、それぞれ持っている特徴がまったく違うのがおもしろい。


 見た目の特徴から、オスのうさぎを「きなこおはぎ」、メスを「ごまだんご」と仮名したい。

 長いから、「きなこ」と「ごま子」にしよう。


 きなこは、白、オレンジ、黒の三毛でブルーグレーの瞳。この瞳に、一目惚れしてしまったのだ。

 異国情緒溢れる暗い青色の目。瞳孔は真っ黒で、まるで猫のように表情が変わる。

 明るいところではきゅっと縮まり、薄暗いと大きくなる。見る度に表情が違って飽きないし、可愛い。外で写真を撮ると大抵怖い顔になるけど、それもまた楽しい。


 体重は2キロほどで大きめの筋肉質。やわらかい毛質。顔はしゅっと長く、野性味を感じる。

 おそらく、レッキスの血が混ざっているのだと思う。毛は長めだけど、手触りがやわらかい点、顔つきや耳の大きさからそう感じられる。


 一方ごま子は、おそらく、チンチラアグーチという毛色。この文章を書くにあたって改めて調べてみた結果、これが答えと思われる。

 全体的に見ると灰色だけど、毛を1本1本見てみると、灰色、黒、白と色が変わっているのが分かる。この特徴が「アグーチ」、毛色が灰色なので「チンチラ」ということで、チンチラアグーチ。たぶん。


 血統書つきなら毛色も正しい名称が分かるだろうが、ミニウサギではそうもいかない。

 少なくとも、わたしがごま子を買ったショップでは、毛色の説明は一切なかった。


 目は黒、体重は1.6キロと、ミニウサギにしては小柄な方。顔つきは丸く、耳は若干短め。

 メスだから、ということもあるだろうけど、皮下脂肪が感じられるぽよぽよした体つき。だけど決して太っている訳ではなく、むしろコンパクトな体型だ。


 ごま子はネザーランドドワーフの血が濃いと思われる。

 子うさぎ時代は、「ネザーと間違えてるんじゃないか」と思うほど、小さくて丸くてか弱そうだった。

 予想より大きくなり、そして図太く丈夫に育ったが、やはりパッと見はネザーみたいだなと感じる。


 ――と、長くなったが本題に戻ろう。

 ミニウサギはうさぎそれぞれで個性がまったく違うのだ。


 きなこより大きい子もいるだろう。毛色も模様も決まりはない。きなこはまさに、世界に1匹だけではないかというような毛色と模様をしている。

 ごま子みたいに、見た目は何かの品種にそっくりでも、大きさだけが違うということもある。


 純血種は、成長後の姿がある程度予想できる。

 だけど、ミニウサギはまったく分からない。どこまで大きく成長するか、どんな毛並みになるか、どんな顔つきになるか。

 そこがおもしろいし、楽しいし、可愛い。


 血統書付きしかうさぎと認めず、ミニウサギを鼻で笑うという、過激派もいるとかいないとか……。

 うさぎに限らず、犬や猫でもあるのかもしれない。

 幸い、ネット上で「こんな人がいた」という報告を目にしただけで、実際に遭遇したことはない。


 血統書付きと、雑種であるミニウサギ。つけられる値段に差はあるかもしれない。

 だけどうさぎ1匹1匹の命は、みな平等に尊いものだ。

 うさぎに貴賎なし。

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