第27話 今はただの見世物だとしても
期限最終日。今日の結果次第で俺たちの進退が決まる。
つい昨日まではそれは俺たちの問題だった。だが、どうやら世間は落ちこぼれパーティーの行く末に思いのほか関心があるらしい。
(どうせ無様に敗れる姿を観てやろうという趣味の悪い関心だろうよ……)
そんなわけで急遽、
正直、断りたかった。見世物になるのはごめんだからだ。しかし、我らが褐色の不良教師が了承してしまったのだからどうしようもない。
「うちのことは気にせんとってください!」
そう
しかも、運命のボス戦が控えているのだ。俺を含めて全員がいつも以上に緊張した面持ちで黙りこくっている。
「うちは皆さんの邪魔にならんようボス部屋の入り口付近から、バトルをライブ中継させてもらいますんで!」
鼠耳少女が軽快に説明するが、誰もまともに聞いちゃいない。
不安がよぎる。この想定外の重圧がパーティーのパフォーマンスにも悪い影響を与えてしまうんじゃないだろうか、と。
「みんな! 気負わず作戦通りに行こう!」
リーダーとして努めて明るく振舞うが、皆の返事があからさまに重い。一抹の不安を拭い去れぬままボス戦へと突入する。
◆◇◆◇◆
悪い予感ほどよく当たるものらしい。
最も対策に時間をかけたボス固有の物理全体攻撃〈キングスタンプ〉の初撃を俺たちはまんまと喰らってしまったのだ。
衝撃波にノックバックさせられ俺たちは弾かれたビリヤードの玉よろしく四散し大地に転がる。全員のライフが一気に半分以下まで削られる。
「ご……ごめん! みんな! ぼくの指示が遅かったせいで!」
バトル中いつも冷静なイケメンエルフが激しく取り乱している。
エドを責めるつもりはない。今回のボスバトルで一番大きな責任を背負っているのは彼で、それを知った上で託したのは俺たちなのだから。
だが軽々しく『気にするな』とは言えなかった。
もう一度〈キングスタンプ〉を喰らったら全滅だからだ。次こそは行動阻害アビを当てる必要がある。
もちろん、そんなことは俺が口にするまでもなく三人とも十分に理解している。だからこそ俺たちは焦っているのだ。
そして、その焦りが個々の動きをさらに狂わせる。まるで初めて組んだパーティーのように皆の動きがチグハグだ。ひどい悪循環である。
(どうする、どうする、どうする! どうする! どうやって立て直す……こんな時、俺はリーダーとして皆になんて声をかければいい……)
焦りが迷いを生み判断を鈍らせる。集中力の欠如から俺の被弾がいつもより多い。エドの持続回復で辛うじて生きながらえているが、残りライフが数センチというギリギリの状態が続く。
落ちこぼれ特有の負け犬根性か。
(……もうダメかもしれない)
ヘドロのような
まるで毒のように負の感情が全身を巡り、頭の中が真っ白になる。ついに俺は声すら発せなくなる。そう、心は折れる寸前だった。
――――その時だ。
無謀にもラヴィが暗黒色の大剣を振りかぶり〈サクリファイス〉〈デスパレード〉とアビ全開の攻撃をキングボアに仕掛ける。
必然的に青鬼少女にボスの
自暴自棄になっているのだろうか。いや、違う。彼女の青い瞳の輝きはまだ失われてはいない。
ラヴィは大剣の腹でキングボアの強烈な突進を受け止めながら叫ぶ。
「あたしはここで終わりたくないッ! もっとこのパーティーで戦いたいッ!」
同時だ。彼女の青い瞳からぽろぽろと涙があふれてくる。
「だって! あたしはみんなのことが大好きだからッ!」
彼女は嗚咽混じりの叫びが俺たちの鼓膜をつんざく。
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