第14話 解決は新しいアビリティで
「というわけで、新アビを試したい。ワイルドボアを釣ってきても?」
「もちろんだ!」
ラヴィが力強く応えてくれる。当然の反応だろう。問題解決がもっとも嬉しいのはラヴィなのだから。彼女は新しい靴を買ってもらった子供が外に飛び出したがってるみたいにうずうずしている。
俺がワイルドボアを引き連れて戻ってくると、皆がルーティンに従ってアビを順番に使用する。ここまでは同じだ。
違うのはこの先だ――――。
「ラヴィ! アビを全開で使用しろッ!」
俺からの指示に「え……? こんな序盤から……?」ラヴィが戸惑っている。
「いいから! 試したいことがあるんだ!」
「ああ……分かった……」
ラヴィが半信半疑の表情で頷き、〈サクリファス〉〈デスパレード〉と連続でアビを使用する。
「いけえ! これがあたしの全力だあ!」
闇夜のような禍々しい暗黒色の刀身をラヴィが叩き込む。ワイルドボアのライフがバターが溶けるみたいに見る間に減ってゆく。
当然、ワイルドボアはくるりと巨体を
俺はすぐさま〈影縫〉でワイルドボアをその場に縛り付ける。さあ、ここからだ。俺は無防備なワイルドボアの背後に、
「喰らえええええ! これが俺の新アビだああああああああああああああ!」
新アビリティ〈
瞬間、
「おらぁ! どうだッ! イノシシ野郎! これで俺を無視できねーだろ!」
嬉しさのあまりヒャッハーしてしまう。
ただ一方で頭の冷静な部分で切実に祈ってる自分がいる。頼むから俺に
直後だ――ワイルドボアが振り向き俺に怒りを露にする。新アビで見事、ラヴィから
俺はバトル中だと言うのに思わず「っおしゃッ!」とガッツボーズを作ってしまう。お陰でボアの突進をまともに喰らって無様に地面を転がることになったが。
ラヴィもよほど嬉しかったのだろう。「よおおおおおおおおおおしッ!」を感情をむき出しにしている。
俺たちはこのまま途切れることなく攻撃を続けてワイルドボアをあっという間に討伐する。すぐさま青髪の鬼っ娘がふんすふんすと鼻息荒く駆け寄ってくる。
「ジュノン! なんだあれ! すごいな!」
「〈闇討〉な。いや、正直、成功してほっとしてるわ」
俺は盛大なため息を零す。喜びより安堵が大きいというのが紛れもない感想だ。
「ジュノンくん、その〈闇討〉というのは具体的にどんなアビなんだい?」
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◆NAME:ジュノン・ジュリアス
◇JOB:【
◆LEVEL:15
◇ABILITY:〈隠密〉〈影縫:壱〉〈闇討:壱〉
◆PARTYBONUS:〈俊敏性UP〉
◇ASSET:〈投擲強化Ⅰ〉
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「〈闇討〉は物理攻撃系のアビなんだけど、発動させて敵の死角から攻撃すると必ずクリティカルダメージが発生するんだ」
三人が一斉に表情をほころばせる。
「すごいです! ラヴィさんのパボと相性ばっちりじゃありませんか!」
「素晴らしいよ! ラヴィくんが全力を出すとタゲを取られてしまうという大きな問題点が『敵の死角から攻撃する』という新アビの発動条件と完璧に嚙み合ってる!」
「ラヴィの全力アビに〈闇討〉をカウンターで発動させれば、タゲが取り戻せるのが分かったからさ、
「ジュノンくんのライフが少ない時は、ラヴィくんに意図的に
「おお、さすがエド! 確かにそういう使い方もできるな!」
感心してしまう。年の功だろうか。エドは戦術理解度が高い。
「とにかくアビの『クールタイム』やマナ残量には注意が必須だろうが、これでラヴィに思う存分、戦ってもらえそうだ」
クールタイムとはアビリティの再使用までの時間を意味する。
アビや魔法はどれも強力な効果を発揮するため、連続使用は精神に大きな負担がかかる。だから必ず一定のクールタイムが設けられているのだ。
「そういうわけでこれからはアビ全開で頼むぜ! エース!」
景気づけにラヴィの背中をパシンと強めに叩く。同時だ。ラヴィの丸くて大きな青い瞳からぽろぽろと大粒の涙が零れ落ちる。
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