第39話 アン飯は旨いんだ






「お待たせ致しました。先ほどのと合計して1625束ありましたので、買取の方が813銅貨、クエストの方は端数は大量の納品いただきましたので、繰り上げさせていただきました。271銅貨になります。あとこちら通常の納品基準で100束毎に対して5銅貨の追加報酬をつけさせていただいております。こちらが82銅貨。合わせて1188銅貨になります。金貨が11枚と銀貨が8枚と銅貨8枚ですね。報酬はパーティーリーダーのユリエスさんに渡しますので後で分配してください。以上です。」



 衝撃の報酬額、薬草採取のGランククエストで金貨を10枚以上も稼ぐパーティーが現れたのだ。



 若干は有名になりつつあるソロFランク冒険者のユリエス。本人はひっそり活動できていると思っている。この街に来てからは活動を自粛して資料室にギルドからの直々の許可を貰って滞在しまくっているソロBランク冒険者のソフィア。2人はこの冒険者ギルドでは、個人個人では全然まったくの無名で知る者は限りなく少ない、しかしギルド職員からしたらどちらも有名人だ。


 

 この2人がパーティーを組む事により、この物語は加速していく。それと今回と同様に巻き込まれる人が増えていくのだが二人はマイペースで無自覚だからいつだって気にしない。そんな見た事もない二人の冒険者の無自覚な活躍の一端を、周りの冒険者とギルド職員は目にしているのだ。



 通常であれば初心者用のクエストを横取りする上位ランク冒険者として苦情が入り非難されるところだが、今回は初心者は大平原の方で死体狩りに勤しんでいる為、罵倒されることなど有るはずがない。緊急に薬草採取の値段が上がった事が重なったのが原因だ。現にリュナたち受付嬢は感謝を述べている。



 リュナは若干勘づいているが、他の者が知る事はないが、優理が魔物を狩りまくって放置して、薬草を採って売った。自分が自分のケツをふいているだけである。



 衝撃の報酬額、たかが薬草採取と思っているのも多い中での出来事であり、他の冒険者からどよめきが走ったが二人は気にすることはない。きっとこの後薬草採取を受けに来る冒険者が増える事だろう。



 だが、ギルドもそこは理解しているだろうし、本当に狩りつくしていないか、確認の為に職員を派遣する事だろう。ダレスあたりが駆り出されるだろう。


 調査が終わるまで薬草の常設クエスト以外の追加報酬は期待できず、冒険者が薬草を大量に持ってくる頃には追加報酬はなくなり、しばらくしたのち、Gランクの冒険者が受ける基準までに戻っていくだろう。


 全て想像でしかないが、その通りだった。


「ユリエスさん、ソフィアさん。この度は大量の薬草の納品ありがとうございました。また何かありましたらお願いします。」


「わかりました。いつもお疲れ様ですリュナさん。他の受付嬢の方もお手数かけました。では失礼します。」


リュナや、他の受付嬢は感激した。あの無口なユリエスから労いの言葉を投げかけられたのだ。リュナは特に恋愛感情で気になっているわけじゃないが、専属の受付嬢(そんな制度はない)としての誇りを褒めてもらったような、勇気を与えられるようなそんな気持ちになった。


(一時はあの孤高のBランク冒険者、天才魔法少女ソフィアさんとパーティーを組むという謎の展開に翻弄されましたが、これで一歩リードですね。)


(さてユリエスさんはダンジョンへと向かうのでしょうか。ユリエスさんの事なら誰よりも知っていると自負してますので、負けるつもりはありませんが、今回もですがいつも斜め上の行動をしてくるので今の私ではまだまだ知識不足、精進しないといけませんね)


(彼が飽きずにまだこの街にいらっしゃるようでしたらお食事に誘いたいわね。ふふ。楽しみだわ(運命的に確定フラグ)・・ふふ)


 リュナが言っている関係図的にいうと特に間違っておらず、優理の中ではソフィアの印象は一ミリも変わっておらず、出来る受付嬢からいい人に格上げしたリュナが一歩リードだ。とは言えリュナも恋愛対象で興味を持たれているわけでもないので、結局はリュナの独り相撲なのは変わりがなかった。








――冒険者ギルド 2階 会議室






「さて、報酬分配しますか」


「いい。今日、楽しかった。」


「こうゆうのはな、考え方押し付けるわけじゃないけどきちんと分配しないと相手も受け取り辛くなるんだよ。二人で頑張った成果だからな。二人で分配だ。」


「ん、わかった。」


「じゃー1188銅貨だから、594銅貨ずつだな。ちょうど半分こだ。」


「うん、わかった。ありがとう。」


「おう、こちらこそ。薬草の知識とか世話んなったな。ありがとな」


「んーあととりあえずパーティーを続けて組む件は保留だ。俺はまだ街にいると思うから、急な用事とか出来たらリュナさんに伝えとくわ。」


「ん、わかった。」


「じゃー、またなー。」







―――プリモの止まり木亭






「・・・・」


「・・・・」


「なんでいるの・・・」


「ここ、泊まってる。」


「恥ずかしい・・・」


「私、気にしない。」


「あらユリエスさん、可愛い子連れて。プリモに告げ口しますわね?」


「エレーヌさん。泊まってるならわかってるでしょ。ネタは上がってるんですよ」


「ふふ、おかえりなさい。ソフィアちゃん。」


「ん、ただいま、エレーヌ。」


「あーエレーヌさん、しばらく武器のメンテとかあるんで、やっぱ続けて泊まりたいんですけど泊まれます?」


「ええ、歓迎するわ。ずっと住んでもいいわよ?」


「遠慮しときます。街は人が多すぎるので。」


「わかる。」


「ふふ、二人ともお似合いねー。」


「エレーヌさん、後でいいですか?」


「ふふ、夜のお誘いかしら? 照れるわね」


「やっぱいいです。」


「そうやって気になって眠れなくして人妻の心をもてあそぶのね?」


「やめてくださいよ。相手はアンガスがしますので」


「ふふ、期待しちゃおうかしら」


「とりあえず3泊くらいにしようかな、お願いします。」


「はいはい。ユリエスさんの部屋誰も使わないから好きな時に来て泊まっていいわよ?」


「またご冗談を。とりあえず7銀貨と5銅貨です。置いておきますね?」


「ふふ、いつもありがとうございます」



 そう言って冗談ばっかり言ってくるエレーヌさんの美しい所作でのお辞儀が決まったところで、後ろを振り向いたらソフィアはもういなかった。部屋に戻ったのだろう。



 大人の会話は子供には早いか。・・俺も見た目はあんまり変わらないけど。



 ソフィアは今年で17になる。一応成人してから7年経っているが、童顔な為そんなに年相応にも見えない。前世からしたら17歳は若い。優理は35歳まであと2か月を切っているところだ。馬鹿にするつもりはないが、倍ほど年が離れた子とのパーティー。パーティーと言えば野営も当然にある。


 この世界では年の差など割とある組み合わせなのかもしれないが、ジェネレーションなギャップ的に大丈夫なのだろうか。早く解散したい。精神的にきついところもあるだろう。フル〇ンで風呂にも気軽に入れない。いや、むしろ入ってやればパーティーが嫌になって出ていくかもしれない。そうだな最悪はその線でいこう。



優理は静かに決意した。



 今日はクエストをしたので、明日鍛冶屋にいって、魔導書も返しにいくか。商会に行ってもいいな。いつも一人だったから今日は何か落ち着かなかったな。明日はぶらぶら一人でゆっくりしますかね。



 そんな事を考えながら階段をあがっていると




「ユリエスさん? 隣の部屋ソフィアちゃんだから、覗いちゃだめよ?」




 と言われたので無視した。



 今日のアンガスご飯 略してアン飯も最高に美味しかった。牛肉だった。兎、鳥、牛と来たら豚も食べたいな・・・どこかにオークでもいないかな。この宿にいる限りこの美味しいアン飯が食べられると思うとテンションも上がるのだ。忘れよう。ここは俺の好きな宿だ。落ち着ける宿なんだ。(洗脳)


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