第38話 一期一会
何気のない話をしながら気づくと森の中で魔物も襲ってきていたが、会話を中止するほどの敵もいなく、二人とも喋りながら狩りが苦にならない片手間だったので、ソフィアは宙に浮かせたままのアイス系の魔法で、優理は持ってた石を投げながら会話を続けていた。
「お、薬草の群生地じゃん。結構あるな」
「ん、そだね」
「確か根本から採取したらダメなんだよな。それと全部取ったら生えてこなくなるから残しとくんだったよな。前採取した時は半日で薬草ダメになったからな。直射日光は避けよう。ここ採ってからあと何か所か回ってから帰るか。」
「まかせて」
「ん?」
ソフィアはそう言って広範囲の探知をかけた。薬草の群生地の場所がソフィアには星マークでマップに表示されたかのように脳内に見えている。
「ちょ待ち。」
「ん?」
「こうゆうのはな、ゆっくりやるのがいいんだよ。なるべく自分の目で見て、自分の行きたいように行って、在ったら在ったでいいし、なかったらなかったでいいんだ。」
「そ、なんだ」
ソフィアは広範囲の探知を解除した。
「ああ、一期一会って言ってな。一生涯に一度限りの出会いを楽しむんだ。」
「たのしむ」
「押し付ける気はないからな。俺はそうしてるってだけだ。」
「なるほど。私とユリエスも一期一会?」
「まぁそうっちゃそうだな。」
「そ、か」
「てなわけで少し歩いて探そっか」
「うん、わかった。」
それから二人は木になっている果物を採取して食べたり、岩が剥き出しになっている隙間から滝が出来ている下に水が溜まって池のようになっている場所で水に足をつけて涼んだりしながらまったり採取を楽しんだ。無理に動植物や魔物を狩るわけでもなく、襲ってこないものは眺めて楽しんだ。鹿などが水を飲んだりしてる光景は二人を癒しを与えたのだった。
クエストを終え帰る途中。
「今日は結構在ったな。在庫少ないって言ってたし、いっぱい納品しても問題ないだろ。」
「ん、そだね。ねえ、ユリエス」
「なんだ?」
「ユリエスはいつもこんなことしてるの?」
「こんなことってどれだ?」
「魔物、いるのに、果物採って、食べたり、川で遊んだり」
「そりゃ、するでしょ。しないと楽しくないじゃん。ソフィアはしないのか?」
「楽しい? 仕事、だから。そんな考え方なかった。」
「なるほどねー。でもさ、もちろん死の危険性はあるのかもしれない。でもだからって楽しんじゃいけないってわけじゃないだろ?」
「俺は生活の為に働いて生きる為に稼ぐ、食べるだけの生活はしないんだ。自分の好きな事をして、死ぬなら死ぬでそれでいいしな。」
「そ、なんだ。」
「俺は俺、ソフィアはソフィア、だろ?」
「でも、今日、楽しかった。」
「そりゃよかった。」
「街の外。魔物の領域。私もソロ。楽しむ余裕、なかったのもある。でも今日、やってみて、楽しかった。」
「だな~」
「これからも、ユリエスと、楽しく、過ごすね。」
「そうだ・・・ん? なんでだ?」
「パーティー、組んだら、解除するのに、同意がいるよ?」
「え・・・」
「ユリエスと仕事。きっと、楽しい。これからも、よろしくね。」
「え。無理ひとりがいいこわいなにそれごめんなさいソロがいいです。」
「私、気にしないよ」
「んー、もうちょい考えさせてくれ。一人で過ごすのも結構いいんだ。気遣わないで楽しめるしな」
「わかった。尊重、するね」
そうして薬草採取のクエストを終え、ギルドへと戻っていった。
ユリエスとソフィアは倒した魔物をそのままにして帰っていった。次に来た冒険者たちは驚き、戦わずにして得る事が出来る素材を目の前にしたら獲るしか選択肢はなかった。危険性はゼロ。でも腰抜けのハイエナと思われたくない冒険者たちは誰にも告げることなく、残った素材を回収して帰っていった。
(なるほど。だからリュナさん怒ってた? のか。自分の知り合いはパーティーを組むなんて重要な事だし、変な人と組んだりして後悔しないように確認しにきてくれてたんだな。綺麗だし、やっぱいい人だな、リュナさん)
こうして知らない間に、優理の中のリュナの印象が出来る女からいい人へとクラスチェンジを果たしたのだった。
「おかえりなさい。ユリエスさん、ソフィアさん。問題はなさそうですね。」
「ええ、運よく群生地を見つけまして。たまたま採ってこれました。」
「そうなんですね。ではクエストの報酬を確認しますので、ここに出してください。」
「はい、これですね。」
「60,70,80、、、90束ですね。大変品質のいい状態です。さすがです。通常3銅貨での買取ですが、現在10束で5銅貨に相場が上がっておりますので納品分が45銅貨。クエストが30納品で5銅貨、3セットなので15銅貨で合計が6銀貨となります。助かります。」
「いえ? 結構森の奥まで行って群生地を見つけましたので、ソフィアの収納に入れてます。1500ちょいくらいあると思います。」
「・・・・・」
「これだけあれば足ります? 品薄って聞いたんで、奥まで行って採って来たんです。あ、勿論全て狩り尽くさないように半分は残してありますよ。って聞いてます?」
「は、失礼しました。数が多かったので、計算しておりました。全て買い取りさせていただきますのでこちらにお出しいただいていいですか?」
「うん。」
「はい、数を数えますので、少々お待ちください。」
他の受付嬢も加勢して数えている間、二人雑談しながら待つことにした。当然周りの冒険者は待っていてその光景を眺めているわけで、ざわざわとロビーが騒がしくなっているが、この二人は二人の世界に入っているので気にしておらず、もともと性格が似ているのでさっぱりしているのだ。
――続く
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