第37話 際会

「ステータスオープン! 【11:20】【7720】


「ユリエスさん、こんにちわ。本日はどのようなご用件で?」


「んーと初心者向けのダンジョンの情報が聞きたいですね。」


「畏まりました。それでしたら大平原の北西の方に向かうとある洞窟ですね。階層やその他情報は伏せた方がいいですか?」


「そうですね。さすがです。そこのダンジョンの冒険者の平均ランクはどのくらいですか?」


「E~Fランクの方がよく行ってますね。階層毎にここまでという推奨してる規格はありますが、堅実なEランクパーティーでしたら踏破可能かと思います。」


「なるほど。情報ありがとうございます。」


「その他ご不明な点などございますか?」


「いえ、あ。そうだ。また余ってるクエストってありますか?」


「そうですね、それでしたらこちらをお願いしたいですね」


「おー薬草足りないんですね。」


「そうなんです。最近大平原の方で異変が起きておりまして、大量の魔物の死体が発見されたらしく、そちらの回収などに他のベテラン冒険者が初級ランクの冒険者を引率して連れていっておりまして、薬草などの採取依頼が滞っている状態ですね。」


「へぇー。ソウナンデスネ」


 こればっかりは自覚があった優理だった。


「はい、上層部でもスタンピードの予兆かもと考えているようで調査を進めております。今回薬草は品薄の状態なので、少し依頼料が上がっております。個別の依頼として処理させていただいて、実績の方に反映s」


「あーリュナさん。実績は普通の冒険者のと同じで。指定クエストの個別依頼にもしなくていいです。報酬もGランクの分だけでいいです。すいません」


「畏まりました。失礼いたしました。」


「薬草詳しくないので、資料室少し覗いてから向かいますね。失礼します。」



<リュナ>


 迂闊だったわ。ユリエスさんは目立ってるのを気にしない人かと思ってたけど気にしてたのかしら・・・読み間違えたわ。


 ランクに興味がない新人も有り得ないけど。クエストを受けに来ない新人も珍しいのよね。


 たまに来たら大量の素材を綺麗に解体して、血肉まで綺麗に削り取ってクリーンまでして持って来るって・・・普通なわけないわよね、ユリエスさんが。


 あまりギルドに来ないからわからないかもしれないけど、ユリエスさん。もう冒険者の中じゃ割ともう有名なのよね・・・職員もみんな知ってるし。


 私の失敗ね。次は間違えないようにしないと! 担当替えとか嫌よ! (担当なんて精度はない)


 私の予想が間違っていなければ今回の騒動はきっとユリエスさんが関わっている。


 ユリエスさんが来た方向で事件が起きて、ユリエスさんが向かった方角で事件が起きてるのは調査済み。私の情報網があればそれくらいはわかる。これは上には上げない方がいいわね。


 私は反省する女。ユリエスさんの担当者である私が! 一番寄り添ってあげないと!


 きっと担ぎ上げたり、ギルドマスターの呼び出しなんかくらった日にはユリエスさんはきっと二度とこの街のギルドには現れないでしょうね。


 ユリエスさんは勘が鋭い感じがするから私は都合の良い女になり切りましょう。適度に距離を取りつつ、ユリエスさんがしてほしい事、考えている事に寄り添ってバックアップをし、認識してもらう事に務めるのよ。深追いは絶対危険だわ。


 ただ先日届いた大量の素材。たしか大平原の未開領域のところに人が住んでいる痕跡があってそこにあった倉庫にあったものって資料にあったわね。


 私の推測からするとユリエスさんは高確率で大平原に住んでいた? 四皇の話から逆算するとそこに住んでいる主? たぶんユリエスさんだろうけど、がいなくなって街に戻った日がその場所からの期間的に同じになるわ。


 それにこれは私とダレスしか知らないけど、ダレスと話しててユリエスさんがこの前解体して持ってきた素材と大量の素材との類似点があまりにも多いのよね。血肉すらついてない加工されたような品質の納品するような人、どこ探してもユリエスさんしかいないわ・・・・


 あれだけの大量の素材は一気に市場に流すとなると市場価格が崩壊しかねないし、初心者の冒険者の活動資金が稼げなくなる可能性が高くて恐ろしいわね。市場に流さないでプールして置くとなると面倒な事になりそうだし、やっぱりギルドマスターなら話せばちゃんとわかってくれるかしら。出所さえはっきりしていれば。書類は残るんだし。いい? リュナ。これは裏切りじゃない。 ユリエスさんの活動資金を守るのよ!ユリエスさんの活動資金を貯めといてあげる優しさよ!妻としての・・・





ち、違うわよばか!!!!!!




「プルプル。僕悪い冒険者じゃないよ。最近街に来るたびに冷えるな。さて、薬草の資料をとってさくっと行ってきますか。森と言えば魚もいいな・・・」


「きみ」


「たしかこの辺が魔獣の森の採取資料だったような。おあったあった」


「ねえきみ、」


「ん?」


 後ろを振り向くと、優理が本を取ろうと手を伸ばした腕の裾を引っ張りながら今日はカジュアルな衣装に身を包んだこの前の司書さんが立っていた。


「少し、時間、ほしいな。喋れる?」


 司書さんではなく、天才魔法少女ソフィアちゃんだ。


「あー今日クエストで今から森にいくんだ。すまない、他の人を当たってくれ」


「森? 何するの」


「クエスト内容は言えないよ」


「私も。受ける。行く」


「えーと、資料室の管理は? 休み? それに初対面だし、ごめんね」


「管理? 初対面ちがう。この前」


「ああ、2回目だね。俺はソロで活動してるから、ごめんね」


「うんうん。気にしないよ。ちょっと待っててね」


「えーと、うん?」


 ソフィアはそう言い残し一階へと歩いていった。優理は自然災害かなにかだと思ってスルーすることにし、薬草の資料を読む事に集中した。数分後、ソフィアを連れたリュナがこちらへと向かってきて


「ユリエスさんがソフィアさんとお知り合いとは思いませんでした。お二人でクエストに行かれるとの事でしたがよろしかったですか?」


「え、それはやだな。一人が良い。」


「えー。私、気にしない」


「え、おれ、気にする。」


「薬草、採りに、行くんでしょ? 私、詳しいから、一緒いこ?」


「んー。まあじゃいいや。あんまり覚えてないし薬草。一回だけね?」


「畏まりました。下の方でパーティー処理させていただきますね。ソフィアさんがいるので万が一もないでしょうが、でわお気をつけて」


 少しリュナさんの声が低かった気がするが気にしないでおこう。なんか頼んでもないのにパーティーとか不吉な事言われたけど俺はソロだ! パーティーは嫌だぞ! まぁ帰ってきたら解散すればいいし、今日くらいいいか。同業者交流会だ。


「じゃ、ある程度薬草の知識も入ったんで、行きますか」


「うん、ついてく」


(調子狂うな~ このまま夜のお店にいったらついてくるか試すゲームしたいけど・・・まだ若そうだしセクハラだよな・・・しかもついてきそうだしやめとくか)


 そうしてソフィアと優理のパーティーが結成した。少し準備をしたあと、魔獣の森まで歩いて向かうのだった。


「ねえ、聞いていい?」


「なんでしょうか?」


「気に、魔力の流れ、変なの」


「変、ですか? 魔力自体あんまり使っていないので自分じゃわかりませんね」


「そ。なんだ。色も変。」


「色ですか? 何も出てませんが」


「薄い、空気に、溶け込んでいるような、虹? みたいな色。見た事ない。不思議。」


「そうなんですか、そっち方面詳しくないのでわかりませんね」


「うん、誰かに、習った、の?」


「いえ、この本読んで覚えましたね。あと資料室か」


「覚えた? いっぱい、練習、したんだね」


「ん? 本読んだら知識入って来たのでそれでっておっと近い近い!!」


「なにそれなにそれくわしく!」


「えええ・・・早く喋れるじゃん・・・」


「はやくはやく!」


「はいはい。だからー。本読んだら、術式とか知識とか入ってくるでしょ? それで覚えて、後は魔物とかにぶつけて遊んでましたね。初級ばかりですが」


「そんなこと・・・ない。普通そんな覚え方しない!!」


「そうなんですか。たまたまかもですね」


「普通は発動する術式の理解を深めて始点初速維持終点の術式のイメージの練習をして魔力量の調整詠唱句を発現してから魔力操作に練習をして初めて使えるようになるそれなのに順序を飛ばして本を読むだけで使えるようになるなんて想像力が豊かすぎるまるで魔法がどのようなものでどのように構成されていてどうしたらどうなるか知ってるみたいななにそれすごいなにそれ」


「落ち着いて落ち着いて。まぁ冗談だと思って聞き流してよ」


「はぁはぁはぁ。久しぶりに話して疲れた。じゃこれ読んでみて」


 空間収納とも呼ぶべき極小の魔法陣の中に手を入れ、ソフィアは一冊の本を取り出した。


 受け取った優理は手にとりパラパラとページをめくると


「ふむふむ、まだ俺に使えそうにないな。簡単なやつならいけるか。回復系の魔法だな。魔力操作が足りん」


「覚えたの!? さっきの話、 ほんと!!」


「いやいやキャラ変わりすぎでしょ、また疲れるよ」


「すごい、発想力、想像力。 それに知識量が尋常じゃない。」


「全然そんな事ないって。何も知らないし」


「それだけの、事ができて、まだ足りないんだ」


「そうゆうわけじゃないけどさ」


「楽しいな。 ユリエス。」


「名前・・・ まぁいいけどさ。 ソフィア。」


「うん」


 そんな事を話ながら、森の中を散歩するかのように、喋りながら歩く2人だった。

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