第四章 Re:辺境都市ゼフィスト 幸福のプレゼント編

第33話 危険察知MAX


歩いて1日半、ようやく城門が見えてくる。相も変わらず大きい街で憂鬱な気分になる。


 辺境都市ゼフィスト。


「また来てしまったな・・・」


 優理は夜間一旦睡眠をとっているが、優理はもともと眠くなることがない。34年間の中野優理としての経験が寝る事が正しいと感じさせてくるので寝ているだけだ。


 しばらく歩いて半日も経つと南門前に着き、順番待ちをする事になる。


(まだ18日しか経っていないのに帰ってきてしまった・・宿に大々的なお別れをしているのに! 恥ずかしい・・・受け入れてはくれるとは思うが、行動が完全に構ってちゃんだ! 34歳にもなって・・・恥ずかしい・・・)


 真顔であるが、今回も目的を早々と終わらせて街の外に出るのだ(デジャブ)


 最近なにやら魔獣の森の方で巨大な魔力振動波があったらしい。


 優理がこの世界に降りたった際の衝撃だが、優理はその事を知らない。衝撃波が起きた後に、降り立ったからである。


(へー)


 他にも大平原の浅いところにある未開発エリアで豊富な資源が確認されたそうだ。


(なるほど。いってみる価値はあるな)

 

 優理が狩っていたあたりである。脳内でそのニヒルな顔をやめてほしい。


 それと最近になって魔獣の森の中層の川の近くで未開のダンジョンが発見されたらしい。


(ダンジョンあったのか! くー!いってみたいぜ!)


 優理がこの街に来るときの2日目に休んだ岩壁と滝のある場所であるがそんなことは優理にはわからない。つくづく運がいい男である。


 それと王都の方から内密に偉い人?が来ていて、馬車が車輪に嵌っているところを魔物に襲われ囲まれたところで、万事休すかと思われたがどこからか攻撃が飛んできて魔物を吹き飛ばし、助かったという事件があったらしい。


 その偉い人は領主の計らいでもう強い護衛を連れて帰ってるそうだ。


(なるほど。異世界召喚のテンプレみたいな事件だな。」


 もちろん優理が助けた髭じぃとバトル執事、フローラ様である。内密にとは言え、お家騒動である、実際は領地内で殺伐とした権力争いが勃発していて、巻き込ませないように髭じぃがフローラお嬢様を逃がす為に辺境都市ゼフィストまで来たのだが、優理はあの時は商人だと思っていたし貴族の事なんか興味がなかったので、聞き流した。


 優理は頭の中の片隅に置いてある記憶はよっぽどの状況にならないと思い出さないので自分がやった過去の事すら忘れてしまう、頭の悪い子なのであった。


 そんな噂話を話してくれるのは、やはり決まって城門前噂大好きおじさんである。不思議な事だがここに並ぶ度にいつも目の前にいて、優理に話しかけて勝手に情報を植え付けていくという、いやらしい遊びをして遊んでいるおじさんだ。とてつもなく変な性癖をもった変態なのだろう。


 ここは一つ、おじいさんの予定通りにはいかない事を見せてやらないといけないと優理は変な使命感と戦っているのだった。


(させねーよ)


「時におじさんよ」


 銀貨を握らせながら、勝手に話しかけて去っていくオ〇ニー大好き噂おじさん(優理認識)を静止して


「夜のお店は、詳しくないのか?」


 優理は下卑た目を向けながら、変な指の形を作り、噂おじさんに問いかけた。


「ははは。おぬしも好きだのう」


「いやいや、おじさんほどじゃないよ」


 いつも勝手に話して勝手に帰っていく人と思っていたのだが、案外にも普通に教えてくれた。完全に噂おじさんの手のひらの上である。相手にもされなかった。この遊びは優理の負けである。


 噂おじさん曰く、商業区の端っこの方に夜の綺麗なおねえさんが両面に並んでいて飲み屋やら揉み屋やらがいろいろ、もうそれはもう沢山あるらしい。値段はピンキリだが、銀貨5枚から~高くて金貨1枚もあれば大体良質なサービスを受けられるそうだ。


 白金貨なんてものを出そうものならお店の女の子がみんなついてきて大乱〇ス〇ッシュシスターズになってしまうらしい。


(このおじさんやるな・・やったことあるなこれ)


 まぁ俺は小物だからいやがらせで、アンガスを女の子の店に誘ってやるか。プリモにはまだわからないと思うが、エレーヌさんに俺もアンガスも怒られるだろう。俺の評価も下がるが、あのイケメンの評価が下がる場面も是非見てみたいな。あはは


 えちな店にはさすがにつれていけないから、そんな事したら殺されてしまう。大人の女性は謎の怖さがあるからな。前世からで言えばエレーヌさん、だいぶ年下なんだけどな・・・


 たまには同世代で飲むのも楽しいしな、アンガスが嫌じゃないなら料理の仕込みとか手伝ってもいいし。その前に街の調査からだな。


 そんな事を考えていると噂おじさんはいなくなって自分の番になっていた。考え事に没頭すると周りの声が聞こえなくなるのだ。


 城門に入ると、活気づいた街並みに懐かしさを感じながらまず宿の確保の為に、プリモの止まり木亭に向かった。


「あら!!ユリエスさんじゃない、おかえりなさい」


 出迎えてくれたのはおっとり美人のエレーヌさんだ。さっきまで恐ろしい想像をしていた為、申し訳ない気持ちになった。確実に実行はするが。


「はい、ただいま帰りました。すぐギルドにいきますが先に宿をとりにきました、空いてます?」


「ふふ、ちょっと色々あって角部屋空いたままなのよ、いけるわ」


「そうなんですね、ではお願いします。とりあえず予定わからないので一泊分です。」


「あらそうなの、プリモにも伝えておくわね、喜ぶわ」


「はいでわ、いってきます」


 いってらっしゃい、とありがたい言葉をかけていただいたあと冒険者ギルドに向かう。冒険者ギルドは、夕方のラッシュ前ということもあり、多少は混んでいるが、列は短く、長い列もあるが、今回は買取カウンターなので受付嬢との会話も最小で済むだろう。適当なところに並ぶ。


・・・・・視線を感じる。


 その方向を視界の端で見てみるとリュナさんが睨んでいる。気がする。気のせいだ。それはさすがに自意識過剰というものだ。そんなことはある。


 リュナさんがいるのはわかっていたがリュナさんの列は長かった為、違うところに並んだのだ。


 スルーしようとするが、有無を言わさない圧力を感じ、身体が金縛りにあったようだ。勘違いでなければリュナさんの後ろに般若がいるようなそんな空気だ。


 寒気がしてきて怖くなって、あと1組で自分の番だったが、冷静に考えるとここに並んでいても他の受付嬢と話すのも緊張して億劫なことに違いはなく、自分の意思でリュナさんのところに並び直すのだった。


 再度言おう、自分の意思だ。


 あと1組で自分の番だった奴がいきなり列を外れ違うところに並び直したのを見て他の冒険者が訝しげな顔で見つめてくるが、待つのもそんなに嫌いではないので、気にしないで思考しながら待つことにした。


 勘違いでなければその受付嬢もほっとしている表情だ。なんで?


  


――続く

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