第32話 さよならリバーレイン
――15日目 拠点近くの平原
「終わりかな・・・・」
あれから数日が経ち、優理がいつものように朝のルーティーンを行ったあと、いつものように狩りにいくルーティーンを行い、拠点へと帰っていく道でのこと。拠点ではいつもと違う光景が広がっていた。
そこでは拠点の中に4人の人物が入って、大声をあげながら興奮している様子が見えた。
4人の冒険者のような人間どもが思い思いに建物内で過ごし、我が物顔で川に浸かったり焚き木の前で、食材を焼きながら、保管庫を出たり入ったりし、外から木の枝を補充する姿があった。
優理は見た瞬間、急に心が冷めていくのを感じていた。
自分が苦労して手に入れた理想郷、拠点を誰かが利用しているのだ。
魔物であれば撃退するが、人間とはこんな場所では関わり合いたくない。もし盗賊だったとしても人殺しを経験したこともない優理は手を出すこともない。
無意識に自制心のスキルが発動していた。
もし街からきた冒険者であっても、会話するのが急激にめんどくさいと感じた優理は遠くから拠点の方を見るだけ見て、特に何をするでもなく去っていくのだった。
―― 一方拠点では
「おい、ロック。こいつはすげえな!」
「バル・・・ああ、まさかとは思うが・・・驚いた。この状態を見るとここに本当に誰かが住んでいるようだな」
「見て見てみんな!この室内魔物の素材だらけでやばいって!
こんなに貯めこむってやばくない?!」
「デル、落ち着いて!もし人が住んでいるのであればその人の物です。決して触ってはいけませんよ。」
「えー!アンナでもこれギルドに報告する案件だよね?」
「そうですね・・・私も驚いてはいますが」
「そうだな、ひとまずここはここの主に話を聞きたい!出かけているみたいだから戻ってくるまでここで待っていよう!・・・俺たちがここにきた理由とも重なるかもしれないからな。どちらにせよここで休憩したいところでもある。」
「ロック! そうだな! ならちょうど昼すぎだし! 腹減っちまったよ! 肉焼こうぜ肉!」
「それは・・・まぁあとで誠心誠意謝れば使わせて貰えるとは思うが・・・バル、ここの主の持ち物を使うのは許さない。木の枝は補充することが条件だ。いいかい?」
「あー!それなら私が採ってくるよ!私の足が一番早いしね~」
「おうデル!よろしくたのむぜ!」
「ギルドにどう報告するか・・・ここの人物は何故ここに住んでいるのだろうか」
「気になりますわね。話のわかる方であればいいですが」
「そうだな。ひとまず休憩だ」
はい、と返事をするアンナという女と一緒にいる男、この男こそ辺境都市ゼフィストが誇るBランクパーティー「四皇の赤星」のリーダーロックだ。
リーダーの紅蓮魔剣士のロックと、このパーティーの前衛の要のバトルキラーのバルボスは小さな村で兄弟のように育った幼馴染であり、都会に憧れこの辺境都市にやってきた。当初は2人パーティーだった。因みにパーティー名は「双竜の牙」だった。
辺境都市までに来るまでの街で出会った斥候役、前衛も中衛も後衛もこなせる万能弓術師のデル。とあるクエストで寄った田舎で生贄になりそうなところを3人に救われた事がきっかけでパーティーに加わった付与魔術師のアンナの4人で四皇の赤星を結成した。当時の職業は低ランクの物だったが、現在はレベルもランクも上がって全員上位職へと進んでいる。
パーティーとしてのランクと個人のランクではまた別だが、個人ランクCランク以上のランクの者は必ず何かしらの偉業を達成しており、その結果絶大な信頼を冒険者ギルドから得ている。
四皇は彼ら四人の属性を現しており、風属性のデル。土属性のバルボス。水属性のアンナ。そして火属性のロックだ。2属性以上持っている者もいるが結成時はこの属性で有名になった。勿論全員Cランク以上の冒険者だ。
今回ここにいたのは完全に偶然だが、とある調査を受けて行動した結果、調査とは“恐らく”関係ないが、休憩場所を探そうと遠くからデルが確認して発見したこの場所に衝撃を受けて、その人物と話したいと思い、居座っていたのだ。
そんな事とは知らない優理はどちらとしても会話する気はなく、自分の住処の近くに人間がいるということ自体で、もう心は冷めているので、使っているとか入っているとかそうゆう問題ではない。
昼も過ぎ、夕方になっても主は帰って来ない為、解体場も使わせてもらい、料理をデルとアンナが行い、風呂は風呂と気づかなかったので入っていないが、悪いと思いながらこの場所を利用させてもらっていたが辺りも暗くなってきた流れでどちらにせよ移動もしにくくなり、優理が作った土壁の中に高級テントを2棟張って野営することになった。
焚き木の継ぎ足しをしながら火を絶やさないように気を付け、交互に睡眠をとりながら、見張り当番を立てて待つが待てども待てども目的の人物は帰ってこない。
それに過ごしていて気づくがここはあまり人が来ないことで有名な地域でそのわりには過ごしやすく、待つ間に周辺を探索した際に見た素材もこの辺りの魔物や地形と似合わないほどに良質なものが多かった。
次の日の朝になっても現れない目的の人物になにかがあったのかもしれないと感じたロックたちは、数点の証拠を持ってゼフィストの冒険者ギルドへと帰っていった。
「あ~ 充てられて あてもなく歩きながら魔物狩りまくってたけど、ここはどこだー? 草原の真ん中の方か~。むしゃくしゃしてやった~。反省していない~。はあ~やる気でね~」
優理はおもちゃを親に取り上げられた時の子供と同じような感情だった。彼らがわるいわけではないんだろうが、優理も危惧していたようにいつか来ると思っていた。浅い場所だったし仕方がないのだろう。
こうゆう場合は相手を責めることなく、一種の縛りゲーム、自然災害、タイムリミットのようなものだと思う事にしている。優理はそうゆう制限をつけて遊ぶ事が昔から多く、今回もそれを無意識に実行していた。ただそのリミットに間に合わず、負けた、という感情になっていただけである。
優理は素材は集めたりするのが楽しかったし、解体などのいい経験になったので、拠点に置いてきた素材に関して言えば特にそこに対して思うところはなかった。全て売却に出しても目立つのは必然だったので、逆に姿を見られなくて結果よかったかなとまで思っていた。
ただ今後この先のフィールドに進む際にも使えないそうにないなと落胆していたのだ。今まで俺は何をやっていたんだろう的なやつだ。
要は気持ちの問題だ。
こうなったら優理は逆の発想で、あそこを作ったのを知っているのは自分だけである。と考えることにし、それを利用する人が名も知らぬ者に感謝するだろうことを妄想して遊ぶのだ。副次的なものであったにせよ。この遊びを出来るのは優理だけである。
そして誰にも言わないからこのまま忘れ去られてしまうだろうからもう一度だけ言っておこう。
あの拠点の名前は「リバーサイドシークレットガーデン:RSSG:リバーレインだ!!!!!!!」
そんなことを考えていたら、心にかかった黒い靄のような気持ちはすっかり晴れ、これからどうするかな、なんてことを考えていた。
今回の野営、色々足りないものがあることを感じた。他にできることを確認できたことも大きい。まだ研究したい事もある。資料で全て読むだけ、決まった事をするだけの人生なんて過ごしても楽しくないのだ。
まだ街を出てこ2週間程度しか経っていないが、またここから先に進み拠点を作るにも理想のものを作るのにも素材が足りない。
それにここからだと都市内に入るまでに2、3日はかかるだろう。このまま先に進んでもいいが、エールが飲みたくなったのと、ウサギ以外のものを口にしたいのもあったので、一旦街に戻ることにした。
途中で魔物の魔石や討伐証明部位、薬草などを拾いながら街へと進む。アンガスの料理とエールの香りを思い出しながらにやにやしながら進む。
その頭からはもはや拠点の事なんて頭の片隅の奥の奥に追いやり、ほとんど忘れていたのだった。
現在時刻(37日経過) 【21:45】所持金【9580】
名前 ユーリ:ナカノ
種族:人間?
年齢:17
職業:旅行者★
状態:普通
レベル:10
≪スキル≫
【言語理解(共通語)】【ステータス表示:タイム】
【ステータス表示:マネー】
【活力Ⅰ】【気配りⅠ】【黒髪キラー+Ⅲ】
【ポーカーフェイスⅤ】【隠蔽★】【自制心】
【悪路歩行】【料理スキルⅢ】UP【短剣術Ⅱ】UP
【思考加速Ⅲ】【毒耐性Ⅵ】【水属性魔法Ⅳ】
【回復魔法・極】【以心伝心】【たばこ召喚】
【投合Ⅵ】UP【気配察知Ⅱ】UP【気配遮断Ⅱ】UP
【生活魔法★】【精神耐性Ⅳ】UP
【解体Ⅳ】UP
<NEW>
【火属性魔法Ⅰ】【土属性魔法Ⅱ】【風属性魔法Ⅰ】
【魔力操作Ⅰ】
≪ユニークスキル≫
【夢マイスター★】
≪称号≫
【黒歴史】
【大女神の寵愛】
【煙を愛する者】
【異世界からの来訪者】
※優理は、教会にいったことがないので、自分のスキルがわかりません
なんとなく勘と使えたスキルを野生で使っています。
※時間停止型布製アイテムバックは魔力を通して使わないと亜空間倉庫にならないので優理は気づいていません。
持ち物
【布袋:完全停止】【ガイヤスの短剣Ⅴ】【初級魔道書】【冒険者ギルドカードG】
【ユリエスの棒槍Ⅰ】
次回 帰還そして ゼフィストで少し過ごします
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