第31話 ようこそリバーレイン
朝のルーティーンを早々と終わらせた優理は今日は朝から全力ダッシュで狩りをしている。今日は西側の南方面に少しいった来た道と同じ辺りだ。
素材の採取は魔核と魔石中心に集め、たまに見かける鉱石も集めることにした。
あとはいつもと同じように狩りをして、昼すぎ13時すぎには拠点にたどり着いた。
拠点の居住部分を作り始めたので、早くやりたがったのだ。
軽く食材を川に吊るしてから、解体場で今日の収穫したものを綺麗にする。木の枝は資材置き場に保管して、素材は保管庫に放置することにした。
ある程度素材が貯まってきて、下級素材ばかりだが陳列棚が豪華になってきている。ゴブリンの耳は腐敗が進んできた為に川に捨てるといった事もあったがその他の素材は無事で、ブルーの魔石などは小さいながらも数が増えてくるにつれ土の箱が宝箱のように見えてくるので謎の幸福感が募るのであった。
今日もレンガ型を大量に生産して、残りの壁の側面作りをする。コの字型をイメージして作る。レンガ型を隙間を入れつつ均等に並べて側面に土を手で塗っていく。昨日やった分は表面が固まっているようだ。
レンガ型を150個作った辺りで例の兆候が出てきた為一旦生産作業を止め、並べる作業と土と水をませたものを塗りたくる作業を引き続きするした。
「おー半分くらいは出来た感」
気づくと2面目ができており、これで5メートルと5メートルの2面が出来たのだ。アースウォールで作ることも最初考えたが、優理の魔力ではこの規模の頑丈な土壁はまだ作れないのが感覚的にわかり、作れたとしても十分な強度のものは出来ないと感じていた。
その日の作業は、ひと段落したので、食材を調理して食べてからお風呂に入り、焚き木の前に横になり、早めの就寝とすることにした。
この世界の人は、強くなればさらに先に進み、稼ぎと生活が安定するのを確信するまでランクをあげるためにクエストを受けて、討伐、採取などの依頼をこなすものだ。
低ランクでいるとひよっこ扱いされ、低レベル帯のフィールドで狩りを続けていると腰抜けのように酒場で話題になってしまう為だ。ちっこいプライドがあるのだ。だから冒険者は狩りをしてレベルをあげるし、訓練をする。
低ランクの冒険者でも街の下水掃除などをしているものが少ない原因でもある。その点優理は街にもギルドにも行かないし、交友関係もないので話題にすらならないので幸せだ。
この不文律を作った先輩冒険者が悪いのもあるが、これはこの世界では当たり前で何百年も前からそうである為、疑う人もおらず。受け入れるのが当たり前なのだ。
心優しい冒険者の中でたまにいるが、周りに言われて傷つかないで行動できる強靭な精神力をもつものがいたとしてもパーティーメンバー全てではなく、パーティーを抜けたり引き抜かれたりと、更には追放と、結局みんな後ろ指されたくないので、臆病者のレッテルは冒険者の恥とまで思わされる核心は、ギルドとしては嬉しくもあり悲しくもある現状であると言える。
優理のように旨味のないフィールド帯で、弱い魔物が襲ってこないからと言ってフィールドでキャンプなどはることはあってもサバイバルであって、ピクニック感覚ではない。暮らそうなどと考える発想自体がないし。それは全体的にパーティーで生活している事が起因しているものがある。
ソロであれば自由に使える時間も、パーティーであれば制限されてしまう。街にいて自由時間を過ごす時間でさえも、自分の、パーティーの為に考えて買い出しや情報収集を怠らないのが、よい冒険者の行動とされている。
メンバーの危険察知系スキルの取得者は良いが、持っていないものからしたら外は危険だらけで落ち着けない為、どうゆう発想になっても外で暮らすのはありえないのだ。
特に女の子は、ゴブリンがいるかもしれない場所で寝るのにストレスが半端なくそんな理由もあって、こんな場所に拠点のようなものがあること自体が普通ではないのだ。
優理はむにゃむにゃ言いながら夢を楽しんでいる。明日からも続くこの生活に実りがあることを祈るばかりだ、本人は楽しそうなので、きっとこれでいいのだろう。
――翌日
起きて朝のルーティーンを終え、日々同じ訓練を行い、戦闘訓練や素材は十分といったところで前日の続きを行い、3面目の土壁が完成した。
ここで優理は周りの川で以前想像していたあれをできないかと考え行動した。
ここの拠点を覆うような形で溝を作り、魔物除けの水路を引こうと考えていたのだ。アースムーブで土を耕し、拠点全体を囲むように掘っていく。
全体を掘り起こしすぎて魔力残量が乏しいので、自慢の棒槍で掘り、周りを固めていく。ここもステータスに物を言わせて手や武器を使って殴って固めていった。
囲むように作った溝、水路はウルフが飛び越えれない距離にするつもりだったので、幅5メートル程度で計画した。半分程度終わったので、次の日もその次の日も前日と同じ作業をし、なんとか形になったので、川から水を流し水路が完成した。
川に平行になるように沿って、拠点を覆うように25メートル25メートルで作った溝は、外まで合わせると30メートル範囲程度の範囲が拠点になり、10日目の後半、完成となった。
余った時間は畑を作る為にアースムーブで耕して、昼間にとってきた丸太や石を焚き木の周りに設置して、土壁の入り口部分を低めに覆って、トイレ部分となる掘っ建てを川側の解体場の隣、畑を作ったところと平行になるように設置し、完成とした。
このトイレであるが、手の届く範囲で600~700ミリ程度の深さ掘る事で昔のドッポン便所のように貯めるタイプの物を作る事にした。川が近くにあるので水性にするか迷ったのだが、ある事を試したかったので実験用にこの形にしたのだ。
それはスライムを使って処理するといったものだ。定番のやつだ。スライムは核さえついていれば死ぬ事はないという結果になった為だ。ここ数日実験で連れて帰ることが出来ないか検証を続けていたのだ。
スライムは30センチほどの高さなら飛び越える事ができるようだ。ランクが低いからという事もあるだろうから、高位の物に進化した物はわからないが、この辺に生息しているスライムなら大丈夫だろうという推察になった。
他にもスライムの身体の核以外の、ゼリーのような身体をどこまで削ったら死亡判定になるのか、こちらも検証してみたが、割合がというより、“核が完全に身体を離れないところまで”が検証結果だった。
そんなスライムの移動手段を考えていたのだが核が残っていれば死なない事がわかった為、例の如くこん棒ランスで掬って、完成した拠点のトイレに作った穴に持っていき、投入することにしたのだ。
このスライムが分解するものはほぼ全てだが、土や鉱物などはあまり好まないらしく、この竪穴が分解されて横に広がってしまう心配もなくなりスラ製トイレはこうして検証を繰り返し完成したのだ。
最後に、薬草を移し替えた後の結果だが、これはなんとも微妙な結果になったのだ。移し替えた後は元気に成っていた。1日2日程度も大丈夫だった。しかしそれから数日が経ちふと見たときには枯れていた。推察するに、薬草は土中の魔素を養分にしているのではないかという推察になった。
この世界でも薬草に関しては研究されつくされているのだろう。だが栽培し、大量に生産できるのであれば、そもそも薬草採取のクエストも発注されていないはずだ。できないのだろう。土中魔素を吸収して成長しているのであれば魔物の死骸を養分にしてみたらどうだろうか。原価は完全にマイナスだがポーションをかけてみたらどうなるだろう。色々な研究をしてみたくなるが、それは次回のお楽しみにすることにした。
拠点の中には保管所、資材置き場、住居部分、解体場、風呂、トイレ、何も植えてない畑がある状態になり、優理は満足げに空を見上げながらお風呂に浸かり、完成を噛みしめていた。
この拠点に名前をつけるのであれば・・リバーサイドシークレットガーデン
通称RSSG リバーレインと呼称することにしよう。
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