第28話 拠点づくりは楽しいな
――翌朝
周りに昨日の死体を放置していたので、襲われるかと思ったが、そんな事もなく清々しい朝を迎えることができた。
穴を出て外に出てみると、何匹かウルフやゴブリンやスライムやコボルトやラビットが昨日石で投石で倒した魔物を捕食、お持ち帰りなどしていたので、それを見つめながら歯磨きと顔を洗ったりした。ここの動物園は大盛況のようだ。
「やっぱりなんか木の枝とかもほしいよなあ」
ここに何日か住みたい優理は、この先に進むにしてもここには帰ってくる可能性が高いだろうと思い、ここに仮の拠点を簡易的に作ることに決めていた。
まず前日解体を行った川のそばの解体場では、限界まで土魔法で固めたので昨夜のままそのまま残っていた。
住まいの方も寝るだけなので、今は特に変更する事もないと感じている。やはり昨日の火魔法での炙りラビットがそこそこ魔力を使うという事から、昼飯までは木の枝や小枝や枯れ葉があれば拾う事に決定した。
「じゃその辺歩きながら拾っていきますか。ユリエス、いっきまーす!」
北方向に歩くこと1時間、帰りに拾う事に決めていたので、周りを確認しながら草原を進んだが、進んでも進んでも草原で、代り映えのない魔物、代り映えのない景色が広がっていた。
「この先は長そうだな」
見える範囲で木が生えている場所はなかったのだが、生えているタイプではなく枯れ果てて横たわっているでかい木を発見した。周りに木の枝もあったので、とりあえずこの先も変わらない景色と確認できたので、一旦その場所まで戻って枯れ木を回収した。
「やっと戻ってきたーただいまー」
息切れさえもしていないが、これには優理も驚いた。魔物との戦闘経験を経て身体能力が上がっていたらしく? 早く走れるのは勿論の事、大きい木をそのまま持ち上げることができ、そこまで重く感じなかったのだ。
水分が抜けていて軽くなっていたとしても前世の優理では考えもできないくらいの筋力パラメータだ。やはり強くなっている。
ただこの拠点に戻ってきても。斧などもない為、この木を伐ることはできない。仕方がないので、拳と手刀で周りの細い枝を折れるとこは全て折り今回のキャンプで燃やす分を確保するのだった。
「燃えろ」
一言すら必要ないのだが、格好つけたいお年頃の優理は穴を堀り乱雑に置いた木の枝を少量の火力で燃やし、焚火を作った。でかい木はそのまま中央で焼いていく。焼いて焼いて焼き尽くしたら真ん中から折れるかもしれないと思いこのまま使うことにした。
火がついたのを確認したら、ここでする作業もなくなってしまったので、今夜の食事を確保する為に、一旦放置して狩りに向かった。
当初から考えていた、無限ランニング狩りである。
2時間ほど狩りを行い、わかった事がある。ここのフィールドの敵は頭脳? があるらしく、釣りでヘイトをとって走ってもある程度まで追いかけたら諦めていくのだ。
集めて一気に倒す狩りしたかったのだが、うまくいかないものだ。
とりあえず出会い頭に、こん棒メイスで撲殺脳天かち割りゲームとなった狩りはしばらく継続することになった。
拠点から離れて行っているのもあり、またもや死体は放置だ。誰かがこの現場を見たら、何が起こっているのか、理解ができないだろう。
そろそろ夕方も近くなり、目に入ったホーンラビットを撲殺し、夕食用の食材にすることにした。
拠点へ戻ると、焚き木は炭になっており、熱は発しているが入れておいた木の枝は全て燃え尽きていた。でかい木は表面が燃えたかなといった具合で、風もあったせいかまだまだ燃える余地も残しており、注ぎ木する必要もなかったので、川の傍の解体場にいって、本日の食材を解体した。
今日は炭火焼きといっていいのかはわからないが、燃えている焚き木の上に石を置いて、そこの上で焼いてみた。
「はあー、やっぱり炭火はうまいな。ただ毎日焼いてばかりでこの味ばかりだと今はいいけどさすがに飽きそうだな。明日は薬草とかの香草でも採ってきてみるかな」
この世界にきて魔物相手で傷を負った事がなく、雑魚狩りばかりしていた為、薬草の必要性は感じていないが、この辺りの草原には数多くの薬草の群生地が点在しているのは確認していた。
冒険者ギルドの資料を見て、何種類かの薬草の知識は得ているが、知識を得ていないものまではわからない。資料室でみたことない草が、薬草なのかただの草なのか毒草なのかわからないものまであったので、知識を得ているものだけ少量採取することにした。
「さて、昨日の続きをしますかね」
魔法に熟練度があることは水属性魔法で確認が終わっているので、他の魔法の練習もしていく。MP限界までやることはないが、拠点にいる以上、ギリギリまでは使っても、ここにいる魔物は物理だけで対処可能だ。
土の魔法を中心に、練習していく。
プレート状の土板や、レンガのような形の土塊、正立方体に近い形の土塊などをつくっていく。プレート状の土板は解体場の補強に使う。平坦にした川の傍にある解体場の床部分になる。少し間隔を置くように意識して、均等になるように入れていく。
血や水を流すことが多いので、川に流れるように段差もつけて、一部溝のような機構も作った。溝の行きつく先は直接川に面しているが、上にある部分にはプレートは嵌めずに。段差をつけて、そこで内臓や血の残りなどを流したりする為の機構を作った。
正立方体の土塊は、川の横に1メートルくらいの穴を掘ったところに置いていく予定だ。ここは簡易的なお風呂を作る予定だ。掘っ建て小屋のような敷居はないが魔物のはびこる場所で素っ裸になったところで捕まえにくる衛兵も存在しない為気にすることはない。
生活魔法のアースムーブで川の横の土を耕して、自前のこん棒ランスで土をスコップのようにして掻き出していく。入り口を閉めないと水が大量に入ってくるので、入り口を土魔法で簡易的に閉め、入っていた土水を掻き出していく。
筋力パラメータが高い為、ゴルフのスイングのように水を弾き飛ばすだけで大量の水が面白いように飛んでいくのだ。割と楽しそうに作業している。
できるだけ中の底や壁部分は平坦になるように意識して土魔法で中を固定していくが、土はどう固めても土なので、水で崩れるのは止められない。最初だけ気持ちの問題だ。
ある程度綺麗になったところで、床面と側面を再度固めて完成だ。一応恰好つけるために、風呂に入る入り口の床だけプレート状の土塊で均等に整地した。
底から水が漏れ中の水がなくなっていくのが予想される素人程度の工事だが、優理は入れればいいので一旦は満足する事にした。
あとはその辺に置いてある石を熱して投入すれば良い。ひとまず風呂は完成した。
レンガのような土塊は寝床の側面を作るのに使おうと思っていたが、ここでコメカミがちくっとする感覚を味わい、魔力切れの兆候を確認し、今日の作業は終了した。
辺りはすっかり暗くなっていた為、ライトで辺りを照らしながら、現在焚き木の周りで寝転んでいる。昼間につけた火は消えることもなく、変わらず燃えているので、きっと明日の朝までもつだろう。
火魔法を使う魔力がないので、今日は風呂に入ることができない。朝風呂でもしゃれこもうと考えながら、その日はそのまま眠ることにした。
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