第22話 ギルド資料室②
その他 スキルについて書かれた資料がある。
この世界の人には必ず職業があり、その職業は神から与えられる物ではないが、自ら生きる選択肢として選択し、自身を成長させることにより、上位職への道や、特殊な職業になる可能性を得る。
その恩恵はステータス恩恵だけではなく、スキルにも反映される。優理は行かないから知らないが、教会で祈る事により、職業の変更は可能だ。ただし、死んで生き返るセーブなどはできない。当然だが。
優理は自覚していないが、優理に悪路歩行などのスキルがついているのは優理がもつ職業が旅行者だからだ。職業スキルは非常に魅力的なのだ。
職業は職業毎にある条件を満たすことで転職することができる選択肢に出る事はわかっているが、その肝心な条件がいまいちわかっていないので、現状気にしている人はいない。神から授かる者とまで思われているケースも少なくない。
先天的な職、遺伝で受け継がれる可能性、ある下級職を極める事で上位職が発現する、こういった考え方が一般的であると資料には書かれている。
スキルには様々な種類があるが、どんなに苦手な人でも、スキルを生やすだけなら試行回数を繰り返し努力さえすればどうとでも生やす事はできる。
ただし取得経験値の分散効率に職業や種族、得意不得意の才能の差などが違いがあるため、マスタリーまで育てれる人は相当の努力かその道の天才でもない限りは、本当の意味での一流になることなどできない。
長寿の種族は相対的に経験値効率が悪い。人族など寿命が少ない者は効率が高く、そこに種族の先天的な才能、個人の選択した職業の専属スキルなどの後天的な才能といった具合に経験値の入り方に明確な差があるのだ。
優理の場合はまた違うが、旅行者の職業を取得した状態で転生され、莫大な距離の移動による取得経験値が貯まり一瞬でマスタリーになり、一瞬で称号へと昇華、その残りの莫大な取得経験値を大女神の寵愛を授かる際に使用された為、取得経験値は残っていなくレベル1で転生したが、その分一般の人族と比べても基礎ステータスは高い。
加えて大女神の寵愛の称号の効果で全ての取得経験値を一般的な人と比べても多めに得る事ができる。向き不向きもなく、努力はいるが好きなスキルを生やし、好きなだけ伸ばすことが出来る。つまり過保護である。
「ふう」
一通り持ってきた資料を読み終わり、記憶したところで、声をかけられる
「そろそろ、閉館時間」
「ああ、すまない司書さん。すぐ帰る」
「・・・・・?」
突然声をかけられて振り向いたところ、一目で司書さんだとわかるようなその人物は黒髪ロングでおっとり系の大人しそうな雰囲気の少女で、白と黒のコントラストがはっきりついた高そうな刺繍が施されたローブを身に纏い、やっぱり大人しそうな声で話しかけ、こちらを伺っていた。
優理は手にした資料を急いで片づけて、逃げるようにして資料室をあとにした。
「変わってくれてありがとう。ソフィア。・・・ってどうしたの?」
「司書・・・」
優理に話しかけた少女は司書が用事を済ませている間、代わりに受付に座っていただけの冒険者だ。
彼女は天才魔導士のソフィアという少女で、本と知識を得るのが好きなので、日々更新するこの資料室で大半の時間をここで過ごしている。冗談みたいな話だが、司書より司書らしいと言えば彼女の事だろう。
王立図書館も好きだが、王都にいる間はなにかと話しかけられる事が多く、気が休まらなかった。冒険者になった彼女はすぐさま王都を離れるように移動し、中央を目指した。しかし途中ある事が気になってついには辺境までも来てしまったのだ。ほんの些細な虫の知らせのような物だ。
そんな彼女は10歳の成人の儀の職業認定で見事『賢者』を発現させ、瞬く間に人気者になった。なぜなら英雄職、剣聖や賢者、勇者、聖女などは、今までの歴史を紐解いていくと国を揺るがす程の偉業を達成する可能性が高く、国民も貴族も期待も膨らますのは当然の流れだ。
当時から魔力量も多く、知識を水を吸いこむスポンジのように吸収する頭の柔軟性を備えていて、それでいて大人しくて美人ということもあり、王都国民の中ではマスコットのようなアイドルのような存在でもある。
当然司書でもなんでもなく、この場所によくいるソフィアが初めてみる少年に親切心から声をかけただけなのだが、失礼ながらも優理は司書だと思い込み逃げるように立ち去ったのだ。
ソフィアの知識欲は17歳の現在になっても衰えることはなく、さきほどの少年は一体何者だろう? と知識欲が刺激されてしまっていた。
シーナが言っていたように、優理には過保護神の祝福がかけられており、わかる人が見れば、とても不自然な魔力のイメージを与えてしまう。
聖属性のオーラの中に、透明に近い微量な虹色の魔力が入っているように見えるのだが、その魔力に隠蔽がかかっているので、非常に微量の魔力しか読み取ることができない。
現在優理は水属性の魔法を掃除か歯磨きくらいでしか使っていないので魔力量がそこまであがることはないが、今後も魔法を鍛えていくことになれば、当然莫大な魔力量の持ち主になりえる素質があることになる。
そんな優理の正体がわからず、名前も知らない少年に興味を抱いてしまうのは仕方ないのかもしれない。優理はそんな少女の初めてを、魔法と本以外で興味を持つ事などなかった少女の『初めて』を奪っていってしまったのだった。
宿に帰って食事などを済ませた優理は思考する。
孤児院にいって気持ち分寄付をした。屋台のおじさんの串肉を食べた。初めて混浴した・・・。資料を見てこれから何をするかを考えさせられた。
今日で9日が経ち、明日にはここの宿の契約は切れてしまう。
この街に泊まる際には、絶対この宿に泊まろうといってもいいくらいには、アンガスの事も、プリモちゃんのことも、エレーヌさんの事も好きになった。
冒険者になって依頼を受けてしまうと、報告に街に入らなくてはいけなくなるしいちいち戻らないといけない。それにランクが上がるのも面倒だ。常設依頼の方の無期限の仕事を確認して、討伐と採取をしてたまに街にきた時に卸そう。
勝手に卸した魔物をクエスト換算されるような事態になるようであれば、その時は商人に直接卸すことも視野に入れないといけないかもしれない。
自分が自由に過ごす為の努力は怠らない。目立ってもいい事はないのだから。
生活魔法も覚える事が出来たし、水魔法があるから飲み水には困らない。短剣で料理もできる。夢の無人島生活に近づいていってる気がする。嬉しい。
唯一心残りと言えば解体かな。薬草採取の方は知識でどうとでもなるが、魔物の素材は卸値が変わってくるし、それができれば普通の動物の解体もできるかもしれない。できれば経験者に教えてもらいたいところだが。
よし、明日は冒険者ギルドにいってみるか。
野良のパーティーに入って教えてもらうか。ギルドの解体場に入れればお邪魔させてもらって見せてもらうか。初心者講習とかあるのかな。
あるとか言ってたな。・・・めんどくさいな。座学より実技がいいな・・・
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