第21話 ギルド資料室①
「さて・・・ギルドにいきますか」
17歳の身体なので、このまま夜のお店にとしゃれこみたいところだが、お金もたぶん足りない事だろうと思い、ぐっと我慢することにした。
火照った身体を涼しい風を浴びながらゆっくりと冷ましながらギルドへと向かう。
まだお昼過ぎのおやつの時間だが、ギルドの中にはまばらに人がいるのが見えた。囲んで酒を飲み騒ぐ者。明日の予定を考える者。依頼を早く終え疲れた様子の者。あと2時間もすればギルドカウンターは素材や報告をする人で溢れ返ることだろう。
2階へと行き、ギルド資料室へと足を進める。
資料室では、一人司書のような人が受付に座っており、本を読みながらぴくりとも動かず座っている。少し眺めていたが失礼かなと思い直し、入っても何も言われないタイプの場所か、と認識した優理は、初級の冒険者が読みやすそうな資料を中心に資料棚を物色していった。
中央にはテーブルがいくつもあり、図書館のように資料を広げてみたり読むことが出来る場所のようだ。だが端っこが好きな優理は中央のテーブルは視線が気持ち悪く感じてしまうので、あんまり好きではなかった。
辺りを見渡すと、端のほうに半個室タイプの一人用の椅子とテーブルがあり、狭いが横は完全に仕切られているところに好感を持ち、漫画喫茶のようにそこへ資料を持参して読み漁ることにした。
優理が住んでいた森は『魔獣の森』と呼ばれ、深く潜れば潜るほどに魔物が狂暴になり、強い種族が住み着いている危険なフィールドであると資料に書かれていた。主に薬草や錬金術の素材になる滋養強壮のつく素材が多く採取できる場所だそうだ。
深くまで潜れる者は、Bランク冒険者以上の者が推奨されており、Bランク冒険者以上の人物といってもそんなに人数がいるわけでもないので、この世界の住人で奥まで確認できた者はいないとされていた。
もし優理が川沿いを違う方向へと進んでいたら万が一があったかもしれなかったので、こちら側に来てよかったと安堵し、深いため息をついた。優理は2種類しか出会わなかったが、この森の中層ではゴブリンなどの進化種や、ウルフ系、熊系の魔物が多く生存競争を行って生息しているようだ。奥は未確認の為、何が潜んでいるかわからない。
辺境都市ゼフィストの周囲には、大平原が広がっていて、湿地帯や山岳地帯、湖や森いろいろな狩場があるそうだ。初心者推奨の狩場は大平原だそうだ。それと森の浅い層だ。薬草なども期待できる。
冒険者の中では共通認識で、どこを狩場にして身銭を稼いでいるかでおおよそのそのパーティーの強さがわかるので、一種のステータスのようになっている。
優理が今後挑むであろう大平原は、広大な土地がそのまま魔物の跋扈する戦闘フィールドになっているようなところだ。ただそのまま広いフィールドがあるだけでは当然なくどこにでも魔物がいるので大変危険な場所だ。
草原である広大な大地は勿論の事、人の身長を超えるような岩があったり、盛り上がった土の中に洞窟があり、そこがそのまま自然の地下へと続くダンジョンになっていたり、丘になっていたり湖になっていたり川があったりと、広い平原の中にも色々な場所がある。浅い層では割と自然豊かで一年中過ごしやすい気候、環境にあると書かれている。
冒険者になれば当然、様々な状況に対処する必要が出てくる。そのための技術を取得する必要があるのだが、普通はパーティーメンバーで作業を分担して負担を減らして行うところを、優理はソロのためなんでも一人でこなす必要がある。優理は基本人見知りだが、慣れてきたら喋れるし、友達もほしいという願望がないわけではない。
ただ
この世界での常識を知らない事と、命の軽い世界という認識があって、身内が亡くなったり大きな怪我をした場合のことをどうしても考えてしまうのだ。そのため基本的には深く関わらないように生きていくことにしている。
楽しく生きることをモットーにしているため、どうしても問題に巻き込まれたり、喧嘩したり、ネガティブな部分が露見すると楽しく過ごせなくなってしまうのが嫌なのだ。
ソロの場合、もっとも野営の際に注意を払わないといけなくなるが、そこは優理には問題はない。なんだかんだと言いながら教会に行っていないため、スキル閲覧することなくここまで来てしまっているため自覚はしていないが、睡眠しながら警戒する自信があるのだ。
解体は習いたいところであるが、森で生物や魔物を殺傷することに慣れ、汚物の清掃をこなした優理には、精神的な耐性も多少備わっていると自分では思い込んでいる為、解体に関しては問題はないと感じている。
精神的な物で言えば、人間が目の前で内臓や脳みそをぶちまけてはじけ飛んだりしない限りは、そこまで苦労しないだろう。
料理の包丁はゲットし、生活魔法で火の確保も終わった。狩りはまだ訓練する必要があるが、携帯食はなくても生きていけるくらいにはソロ専門としてやっていける自信はついていた。
本人はこの世界にダンジョンが存在していることに高揚し、おかしな妄想を行って惚けているが、ダンジョンには罠などもあり、予期せぬ事故がつきものなのだ。
資料を読みながら自分に足りないもの。最悪のケース。今から得るべき技能、アイテムなどを考察する。一通り思い浮かべながら大量の資料に目を通していく。
この都市ならではであるが、この都市は多くの若者が夢を追いかけて訪れる場所であり、そのせいか世界で一番若者が死ぬ場所でもある。
こうゆう理由もあって、先輩冒険者や、あらゆる事例を見聞きしてきたギルド職員は、自記やレポートなどで資料したものをもうやって見やすくまとめ。資料を作成するのだ。
死んでほしくないのだ。
大抵の若者は、こういった資料を見ないで、外の魔物と戦い、痛い目にあって後悔し、うまくいってもいつか行き詰まる。先輩やギルド職員に叱咤されながら経験して成長していくのだ。
先日の3人組の冒険者も何かしらの自惚れがあって、クエストに失敗し、反省し、次に活かすのだろう。
痛い目、とは簡単にいうが、それで最悪手や足が欠損した、仲間が亡くなって後悔した。じゃ遅いのだ。そのまま精神を侵され、再起不能になってしまう場合も少なからずあるのだ。
ランクというのはあくまでも基準であり、いくら強くなりランクがあがろうとも、いつだってイレギュラーな事態というものは突然やってくる。
ランク昇格試験の際や、討伐系クエストを行う際に、何度も何度も忠告は行っているが、聞く者が少ない現状なのは致し方なく、それは己の腕や力が商売道具である冒険者であるからともいえる。
腕っぷしに自信があるため、その自信こそが稼ぐ能力で、その自信がないと目の前の強敵と戦えないので、一概に全て悪いとも言えないのだ。慎重な人やパーティーリーダーがまともな知力があれば未然に防げるので、自己責任といってしまってる現状である。
そういった意味では優理はとても慎重で、安全マージンを必要以上にとって生態系を壊すほどの自動狩りを行っているため、褒められることではないが、責められることでもないため、結局は本人が納得していれば、怪我しようが、死のうが、いいのだ。冒険者とはそうゆう仕事なのだ。優理は自分の力を過信していないので、楽しむ以外の事をあまりしないだけなのだ。
冒険者としての接敵、横取り、擦り付けなどNGとされるルールは存在するが、一人で誰もいないところで魔物を狩りつくしても、フィールドは誰の領地でも物でもないので文句を言える人はいないのだ。
ここには書かれていないので優理が知ることはないが、経験値はパーティーを組む、もしくは近くにいるだけで分散される世界の仕組みとなっている。ある程度レベルが高い人やパワーレベリングを行っている貴族などはこの事を知っているが、一般人が知ることはほとんどない。
パーティーを組むことにより、より安全性は増加するが、その分成長率は下がる。なのでどうしても数をこなす必要が出てくる。しかし時間は有限であり、命の軽い世界だが誰も死にたくはないため、パーティーを組むのが常識であり、素材を持ち帰って生活している冒険者の中で、ソロであほみたいなレベリングを行う者も素材を放置して走り回っている物もいないのだ。
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