第9話 接敵
高台から見ると、遠くに山が見えた。だが山=やばい魔物というイメージが強い事もあり、そちらの方角には進まない事に決めた。目的の方角にあたりをつけた優理はすぐ移動を開始した。
来た方角を見失わないように、木々に色のついた果物や薬草などで色付けをしながら、来た道とは違う方角へと進むことにした。優理は慎重に警戒しながら進んでいく。
「地元の山だったらイノシシとか鹿くらいだし襲ってこないから大丈夫なんだが、魔物とか見た事ないしわからんな」
優理は来た道のその辺に落ちていた木の棒、幅太目のこん棒のような物を手に持ちながら、ポケットには石を詰め込んでいた。
しばらく歩いて進んでいくと、川のせせらぎのような音が聞こえてきた。興奮してどうしても抑えきれなかった優理は足早になり、川が見えた瞬間、一直線に走っていってしまった。
「おー! まじで川だーー! ・・・・・え?」
そこでは優理初の接敵となる魔物、ゴブリンの姿があった。
「えーとこんにちわ? お話通じる感じですかー?」
よく見ると目が合ったゴブリンは震えていたが、こちらを捕食するため覚悟を決めたようだ。何を言ってるのかわからない言葉で威嚇してきたのだ。
「グギャギャッ」
こわ!
(話は通じないってことでいいのかな)
やらないとやられる世界だとは理解しているのだが・・優理は人を殴った事はあっても動物や魔物を殴った事がないので躊躇っていた。それでも恐怖と立ち向かいこん棒を持つ手に力を入れ
「それ以上近づくと敵対と判断します!よ!」
敵は待ってくれない弱肉強食の世界。震えが止まり、下卑た目でこちらを見ていたゴブリンが大声をあげて、ついにこちらへ向かい、走り出し攻撃を開始した。
――
優理はこの瞬間。無意識に思考加速を発動さえ考え、無意識に自制心のスキルを発動させて威嚇に負けない精神力の強化を行い、大女神の寵愛の与える生きる希望と勇気をもって、敵を倒す覚悟を決めた。
「あーもう。とりあえず逃げるが。やるしかないよな。くそごめん!」
まず距離がある為、もってきた石を投合し、外れもしたが動きが遅めのゴブリンには当てやすく、肩や腹に2,3発当てることに成功した。
そのままフラフラの状態で近づいてきたゴブリンをよく見て、身体が震えたが、ぐっと構え直して手にもつこん棒に再度力を注入する。その時
ゴブリンは、殴る前に倒れ、びくともしなくなったのだった。
「・・・・・あれしんだ?」
ゴブリンと言えば死んだふりをすることがあるのを記憶していたので、これかと思い、近くの石や木などを何度か投合してとどめ? をさした。
「あれー?この世界のゴブリンってこんな弱いの? ええ・・・」
こうして初めての戦闘は終わったのだった。
「確か死体を放置すれば匂いで他の魔物が寄ってくるんだよな。埋めるか燃やすかだけど火も使えないしなー。放置もあれだし、川に流すか。」
優理はまだ剥ぎ取り童貞なので、びびって素材をとることができない。よって川に蹴り飛ばして流すことにした。
「戦闘童貞卒業したな・・・ 興奮してて意味不明だったけど。経験値って貰えてるのかな。レベルのある世界なんだろうか。」
「とりあえず今は・・・ステータスオープン! 13:30か。仮の拠点まで何もなければ約1時間くらいかー。貯めて入れて置ける入れ物もないし、飲んでいくか・・・飲むしかないよね。」
魔物の死骸や動物のフンなどが混ざって菌が入っている可能性が高いため、川の水はそのまま飲んではいけないと優理も認識していたが、さきほどの戦闘での緊張により喉の渇きが尋常ではなく、飲み水もないので思い切って飲むことにしたのだった。
「入れ物もないし。火もないし。ペットボトルなんかもないし。多少お腹が痛くなるくらいは・・・仕方ないか。はあ。」
なんでこの程度の知識で森に行きたいと思ったのか、前世の知識は参考にならないというのに軽い気持ちで森に飛ばしてもらった事を今更後悔する優理だった。
――仮拠点
現在優理は日が暮れだしたあたりで仮拠点へと帰ってきたあと、その辺の草などを引っこ抜いて仮拠点の床に敷き詰めた。さんざん歩いて疲れたからか、昼間の飲み水のせいか寝転んでいるところだ。もちろん入り口の方を警戒しながらだ。
「夜間の警戒とかしたほうがいいんかなー。一人だしなー。火もないし、武器もない。こん棒と石だけだ。初期装備貧弱すぎるだろ」
入り口をどうにかして草で隠したまではよかったが、現代人に土に上や草の上で寝ろっていうのは控え目にいって地獄だと思う。わりとまじで。
でも無人島生活とか、村作りとかそうゆうのに憧れるんだよねー
(素潜りとか得意なんだが、異世界で披露することはおそらくないだろうな・・・)
なので己の限界が来るまで、ここに我慢して住んでみようと考えてみた。
「今日のこれまでの事をまとめておかないとだな」
まず、昨日の水は飲んでもお腹痛くならなかった。やっぱり異世界、精霊とかよくわからん要素が浄化してくれてたんかな。知らんけど
拠点でやったパッチテストの結果だが。 大成功。 なんだけど・・・これ意味あるのかな。でも自分で決めたので大丈夫なら食べるって基準で食べてみたんだが。めちゃくちゃうまかった。木の実はあれは生で食べるものじゃなかった。苦いし固いし。それより果物だ。 めちゃくちゃ甘くておいしかったー色はえぐいけど。
見た目食べれそうな草は食べてみたけど味もそんなにしないし、腹にも溜まらないので今後食べる事はないだろう。あとキノコは笑いダケとかよくわからん毒キノコだったら嫌なので食べてない。
手につけた軽い傷だが、夜になった時見たときにはもう塞がってた。本当に意味がわからない。
ゲーム的に言うと自然回復とかしてるのかな。わからん。とりあえず食べれそうな果物があることがわかっただけで収穫としては十分だ。水分も採れるし。
明日は水を入れる物をなんとかしないと、水飲むだけで片道40分は訓練になるけど飲みたくなった時にちと困るな・・・
優理が知るのはだいぶ先になってからになるが、初日から大女神の過保護と毒耐性スキルのおかげで、優理がこの森で食せないものは存在しない。ある程度の寒さ、暑さ、毒や菌に対しての耐性が非常に高く、よっぽど凶悪な毒をもっている生物にでも出くわさない限りは、優理はこの森で安全に生活することができる。過保護だ。
まぁあとは今からの時間なんだけど、前世の記憶頼りや想像できる範囲で無詠唱魔法などを試していこうと思う。スキルがなくても使える可能性もゼロじゃないはずだ。もし火でもついたらラッキーだしね。
無属性魔法や生活魔法も試してみたいけどそっちは原理がわかんないからたぶん無理な気がする。試しては見るけど・・・
とりあえず今日は行き当たりばったりだったので、明日から本気出すってことで。やっぱり一度人間の住む町にいってみようかな。情報がほしいよ~
リトルファイヤ! ・・・・・
フレイムランス! ・・・・・
ファイヤボール! ・・・・・
ヒートテック! ・・・・・
・・・うん。適正がないのかな。つらい。火がないつらい。このあと色々な魔法を試し各属性を試してみたところ、水属性の反応があった。 ちょー嬉しい
調子にのった優理はいるかもわからない水の精霊を呼び出す勢いで、気合を込めて詠唱する
「麗しく清き精霊ウンディーネよ。我が魔力を礎とし、清らかなる水を与えたまえ!」
・・・・・
・・・ チョロチョロチョロ ポタン。
水が出ました。すごく・・・おいしいです・・・
「悲しい。寝よ。」
この日は悲しさのあまり警戒もせずに。疲れていたこともあり何も考えずに寝てしまった。
チョロチョロチョロ・・・ポタン
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