第一章 魔獣の森 編
第8話 第2の人生。
――魔獣の森
・・・・シュイン。
木々が立ち並ぶ森の開けた場所を中心にして、極級の魔法陣が出現し、すぐに消失した。
極級の魔法陣が消えた場所には、人間がひとり。17歳に若返った優理少年だ。
周りには人は誰もいない。魔物も、小動物さえも。
優理をこの世界に転生させた存在の神聖な魔力を感じて全力で逃げ出したのだろう。それほどまでの極大の魔力振動波が発生していた。おそらく逃げきれていない魔物がいれば消失していたに違いない。
優理をこの世界に転生させた存在は過保護である為、このような周りの危険を遠ざけるような対処を行っているのだが、それに優理が気づくことはきっとないだろう。
「到着かな。要望通りの素晴らしい森だ。深くなく明るく、風も気持ちが良い。」
いきなり変わってしまった周りの風景を眺めながら満足げにそう呟き、木々の間から流れる爽やかな風を感じながら子供の頃に忘れてしまった気持ちが再熱したのを感じた優理少年だった。
近くの木に寄り掛かる。そして自分の姿形を確かめてみることにした優理は少しの間目を瞑り思考を巡らせた。
優理の降り立った場所は森の深部でこそないが、なかなかに深いところにある。地図も持たない方角も地理も知識も何もない優理には関係がなかったが。
「とりあえず、ステータス確認しときますか。ステータスオープン!!」
一人なのでテンションも若干おかしいが、まずは自分の持ち物やステータスを確認することにした。
「ん? ステータスこれだけ?まじかよ・・・俺の3日間の評価辛辣すぎん?」
ステータスは優理の脳内に直接転送されている。優理が表示を見て確認する限りでは、名前と現在の時刻と持っているお金”だけ”が表示されている。
現在時刻【11:05】 所持金 【100銀貨(10000)】
名前:ユーリ・ナカノ
種族:人間?
年齢:17
職業:旅行者(★)
レベル:1
状態:普通
≪スキル≫
【言語理解(共通語)】【ステータス表示:タイム】【ステータス表示:マネー】
【活力】【気配り】【黒髪キラー】【ポーカーフェイス】【隠蔽★】【自制心】
【悪路歩行】【料理スキル】【短剣術】【思考加速】【毒耐性】【水属性魔法】
【回復魔法・極】【以心伝心】【たばこ召喚】
≪ユニークスキル≫
【夢マイスター★】
≪称号≫
【黒歴史】
【大女神の寵愛】
【煙を愛する者】
【異世界からの来訪者】
※ 優理には見えていません
持ち物
【布製アイテムバック】(完全停止)
【おにぎり、さきいか】
他のステータスは、解析鑑定のスキルや、神殿などの祝福でスキル確認する事になるのだが本人が知る由もない。
優理は転生させた存在から3日間の評価で能力やスキルを与えられると聞かされているので、本人は今みたステータス画面にそれらスキルが見当たらない事に残念がっているのだ。優理にはステータスもスキルも見えていないのだ。
「とりあえず持ち物は・・・おにぎり、サキイカ・・・実家の弁当じゃないか! この前食べたのになんで! でも助かるわ~」
それと、この世界のお金らしき銀貨が入った袋が布袋の中に入っていた。
優理の来ている服は普通だ。優理は知ることはないが、所謂村人が来ている一般的なレベルの服であり、耐久性はそこまで高くない。優理を転生させた存在が、異世界の服はこちらの世界では高級品として扱われる事になる可能性も高くデザインも見た事もない部類に入ることで、高確率で襲われるか目立つ事を危惧し、こちらの服に着せ替えて送り出してくれたのだ。やっぱり過保護だ。
「とりあえず移動するか。ここにいても埒が明かないからな。魔物は怖いが、約束通りの場所なら弱い魔物しか出てこないはずだ。雨風凌げる場所と、飲み水だな」
ひとまずこれからの方針を決めたらしい優理が最初に目指したのは川だ。水もないと食事が喉を通らない事だろう。特におにぎりは・・・厳しいだろう。
優理が歩き始めて30分程度経つが、優理から見て周りに魔物の気配はない。自然豊かな穏やかな森で、風が吹き木々が揺れる音が聞こえてくるばかりで、都会暮らしの優理も異世界に来たというより田舎に来たな~程度の実感を感じながら進んでいた。
「この森は魔物がいない森なのかな。動植物とかしかいないとかだったら最高だな。魔物いないんだったらその辺で食べれるものでも油断しながら探してみようかな。」
優理は気づかない。近くに魔物がいたとしても優理にはわからないのだ。優理には異世界へと転生してくれた存在が優理に祝福を与え、魔物に気づかれにくい聖属性の魔力に包まれている。ただ優理は気づかない。どこまでも過保護なのだ。
「おー木の実。食べれるかな。こっちのキノコも一応とっておこう。いいね」
布製の袋に採取した物を詰めながら、木の実、見た事もない草、葉っぱ、果物っぽい実などを集めていく。目的地は川だが、地元の山で小さい頃に遊んでたくらいではサバイバルの知識はつかないので、川に行く方法もわからないのだ。
「よくあるパターンでは木登りしてるけど・・・この周りの木でかすぎて手が回らないから無理だ。木の上からの確認が無理なのであれば、もうちょっと開けた場所で回りを見渡せる丘のような高所とか探してみるか」
ちょうど30分くらい歩いたところで、開けた場所に出た。周りは木々に囲まれているが、ちょうど岩が盛り上がって高台になっているとこがあった。それに人一人が入れそうな穴が見えるので、その場所まで行ってみることにした。
岩山のような場所に存在するその場所に、よじ登る事20分。ようやくたどり着いた。
「誰もいませんかー? 失礼しますよー?」
恐る恐る声をかけながら穴の状態を確認するべく近づいていく。この岩の下の穴は二人ほどしか入れない穴があり、内側は固くそうそう崩れることのないであろう作りになっていた。中は雨風を凌げるし、耐久性も見通しもいい為安全性もばっちりだ。
中の隅々まで確認し終えたことで、ここには人も魔物も誰も住んでいないことが確認できたので安堵し、ここを仮の拠点とすることにした。
「今の時間を確認しとくか! ステータスオープン!【11:32】【10000】」
ステータスは一旦オープンしたらクローズしない限り何度も言わなくても表示されているのだが、興奮しすぎて見えていない優理はいつだってこうして何度も叫ぶのだった。
「さて。そろそろご飯の時間だが・・・この果物とか食べるの怖いな」
一応パッチテストもどきみたいな事でもしときますかね
今から日が暮れるまで時間はまだたっぷりあるので、とりあえず木の実をその辺の石で壊したり、見た目食べれそうな草? を石ですり潰したり、色味の悪い果物を石で切ったりして、腕に石を軽く傷をつけて線を引き、すり潰したりしたものを利き腕じゃない方に塗っていった。とりあえず3種類塗りたくって、時間経過で赤くなっていたら捨てよう。怖いので。
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