第3話-2 初めての冒険

子供服売り場に着くと、さっそく魔王ちゃんの服選びを始めるのだが…。


カジュアルからロリータ服まで揃っていて、とにかく品揃えが豊富なのである。


うーん。


どれにしようかな。


魔王ちゃんかわいいからなんでも似合いそうだし。


悩んでいると、店員さんがやってくる。


私が事情を説明すると、おすすめの服を何点か用意してくれたので、手伝いながら魔王ちゃんに試着をしてもらう。


私はもちろんだが、店員さんもかわいいと大絶賛。


終始、私にかわいいと言われる度に照れながらも、にこにこしている魔王ちゃん。


服選びはあっという間に終わる。


最後に魔王ちゃんにどうしても着てもらいたかったロリータ服を着てもらう。


「ゆ、ゆうり。どうじゃ?」


着替えると、少し照れくさそうに口元に手をやる魔王ちゃん。


「………。」


どうしよう。


あまりのかわいさに言葉が出てこない。


「ゆ、ゆうり…?」


私が何も言わないので心配そうにしている。


「ご、ごめん!かわいすぎて何を言えばいいか、わからなくて…。」


「そっか!そうだったんじゃな!えへへ。」


魔王ちゃんが今までで一番の笑顔になる。


あぁ。


ほんとにかわいすぎるよ魔王ちゃん…。


思わず抱きしめそうになるが、なんとか我慢する。


それから、お揃いのパジャマを選び、会計を済ませると、服を着替えたままお店を出ることにした。



その後、また魔王ちゃんと手を繋ぎながら、昼食を取るために一旦ショッピングモールから離れた場所にあるレストランへと向っている時だった。


「ゆうりちゃん?」


背後から声をかけられる。


振り返るとそこには、一人の女性が。


「あれ?先輩じゃないですか!」


「こんなとこで奇遇だね~!」


この女性は私が働いている会社の先輩で、よくお世話になっている方。


美人で優しくて、ほんわかしてるけど、仕事も出来る憧れの先輩。


「ほんとですね!なにしてるんですか?」


「私はペットのチロルちゃんの散歩だよ!」


よく見ると、先輩の足元には小さい子犬が。


「わぁ!ちっちゃくてかわいいー!」


私がおいでーっと手を出すと人懐っこいのか、近づいてくる。


撫でるともふもふしてて、すごくかわいい。


「ゆうりちゃんはなにしてたの~?」


「私は、この子の服を買いに来てて、今から昼食を取ろうかなって!」


子犬を撫でながら、先輩に答える。


「そうなんだね~!はじめまして~!私はめぐみだよ~!お名前は何て言うの~?」


「魔王なのじゃ…。」


あれ?なんだか不機嫌そうな魔王ちゃん。


私以外の人間はまだだめなのかな。


でも、さっきの店員さんはそうでもなかったような。


というか、まずい。


さすがに魔王って言っても先輩わからないよね。


なんとか誤魔化さないと、と考えていると…。


「まおちゃんか~!よろしくね~!」


「うむ…。」


やっぱり少し不機嫌な魔王ちゃん。


あと、先輩がなんか聞き間違いしてるけど…。


いいの…かな…?


「かわいい子だね~!妹さん~?」


「そうなんです!歳の離れた妹で!」


「そっか~!仲良さそうで羨ましいな~!」


とりあえず今は魔王ちゃんのために、離れたほうがいいかも。


「あ、それじゃあ私達はこれで!先輩また会社で!」


私は子犬を撫でていた、手を離すと先輩に挨拶をする。


「またね~!」


先輩が手を振り、見送ってくれる。


魔王ちゃんと手を繋ぎ直し、その場を離れると魔王ちゃんの様子を伺う。


ぶす~っと不機嫌そうな顔をしている。


「魔王ちゃん…?大丈夫?」


「大丈夫なのじゃ…。」


「やっぱり私以外の人は怖い…?」


「違うのじゃ。ゆうりが側にいるから怖くないのじゃ。」


じゃあ、どうしたんだろ…。


「それじゃあ、どうして…。」


「ゆうりが、あの小さい生き物をかわいがっておったのじゃ。」


「え?」


「我がいるのに。かわいがっておったのじゃ!」


魔王ちゃんがぎゅっと身体を抱きしめる。


もしかして。


魔王ちゃん。


ヤキモチ妬いちゃったの!?


「ごめんね。たしかにあの子犬かわいかったけど。でも、魔王ちゃんのほうがもっとかわいいよ!」


私も魔王ちゃんを抱き返す。


「我のほうがかわいいのじゃ…?」


「うん!魔王ちゃんのほうがかわいい!」


「むー。なら許すのじゃ。」


「えへへ。魔王ちゃんは優しい子だなぁ!」


頭を撫でるとすっかり元の笑顔に戻る魔王ちゃん。


魔王ちゃんには悪いかもだけど、ヤキモチ妬いてくれるなんて嬉しいなって気持ちになる。



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