第5話 揚げパン博士と遊ぼう! その2

 夏が終わり、秋が過ぎ、冬になった。僕たちの生活には、特に大きな変化はなかった。僕たちは平日には学校に行って授業を受け、学校が終わればみんなで遊び(僕は塾のある日は遊べなかったが)、週末には揚げパン博士を訪問した。

 揚げパン博士は朝に揚げパンカーで僕たちの村までやって来る。僕たちを車に乗せると、揚げパン博士は村の人たちに揚げパンを売って、それから自宅兼揚げパン工場兼揚げパン屋に僕たちを連れて行った。

 僕たちはかなり真面目に揚げパン作りを学んだ。いつしか僕たち4人は一人前の労働力になっていた。揚げパン博士は僕たちにお給料を渡すようになった。ただし内密に。

 その収入は法外に大きかった。ざっと月に10万円はあった。たぶんそこらのアルバイトより稼いでいたんじゃないだろうか。

 僕は揚げパン博士は金を捨てているも同然だったとしか思えない。なぜなら、僕たちにはそんな大金を適切に使うことができなかったからだ。巧巳はほとんどをゲームへの課金に使ってしまったし、彩は堅実に貯金していたものの、たまに高い服を買ったりしていた。もちろん服なのだから、あまりたくさんは買えないーー親にバレてしまうから。

 でも、僕はその資産を気前よく散財しようとは思えなかった。神奈のことがあったからだ。あの日神奈が言った彼女の病名は僕には馴染みのないものだったけれど、調べてみると治療には気の遠くなるような金額が必要だということがわかったのだ。

 だから僕は、どこかで神奈の治療費の足しになればと思って、その莫大な収入を全部貯金に回していたのだった。だが、それはやはりすぐに神奈に気付かれてしまった。


「まったく、水輝ったら……意味のないことをしなくてもいいんだからね」

「何だよ、意味のないことって」

「水輝はウェブサイトをちゃんと見てないでしょ。確かに『治療費が高額だ』とは書いてあるけど、『高額の治療費をかければ治る』とは、どこにも書かれていないでしょ」


 言われてみればそうだった。僕はまた勝手な勘違いで神奈を傷つけてしまったのだった。

 それでも、僕はやはり散財家になることはできなかった。もしかすると、単に僕が堅実な人だっただけのことかもしれない。だが、僕らは楽しく揚げパン博士と一緒に働き続けた。

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