掘り下げるところ、描写するところ、ライトな所。バランスがよく、とても読みやすい。ワンシチュエーションで話が進むが気にならず読み進めて行けるのは、そうしたバランスがあるからだと感じる。
キャラクター二人の軽妙なやり取りも面白い。関係性のバックボーンも軽く説明されているが、それ以上に、会話のやり取りが二人の関係性を何よりも表していて、いつもこうしてやり取りをしているのだろうなという想像ができる。それは描かれる二人の会話がしっかり生きているからだろう。
映画のワンシーンに不意にぱっと輝く日常の描写があるように、この短編もそんなぱっと輝く瞬間の切り抜きのようだ。二人がいる空間や、周りの音なども想像したくなる。
ライトな語り口で読みやすく、けれど軽すぎずに描くべきところは描いている。なによりも、二人の関係性が魅力的だから、読み進めるのが楽しい。
家で読むのもいいが、あえて出かけた先で読みたくなる、そんな空気を感じることができる作品だった。面白かった。