EP24 宿屋カラス亭
ギルドの方はひと息た。
残るは宿屋の採用だ。
今日はひめ先輩が例の夫婦を連れて来る。
宿屋の前で10時に待ち合わせだ。
『うわーーー!』
ぼーっとしてるといきなり後ろ驚かされた?
(ぴょんぴょ〜ん)
思わずその場で飛び跳ねた。
「も〜〜ひめ先輩はいい歳して何をしてるんだよ」
『主人殿は無防備過ぎるんです』
「ハチクロも見てたなら教えてよ」
『主人殿のリアクションが見たくてそのままにしておきましたぞ』
『まあ敵ではござらんし』
「そーおなの〜」
スキルに頼らなくても気配は探れるようにしないとな。
『おはようございます』
「おはよう!」
ひめ先輩はオレとは学生のノリなのか?
ビジネスパートナーなんだけどな。後ろの2人もひめ先輩を諭しながら挨拶した。
「今日は早くからありがとうございます。グレイです」
『初めましてよろしくお願いします』
『よろしくお願いします』
『すみません』
『気を許している証拠なんで許して下さい』
と奥さんは言う。
50代には見えない2人共モデルさんの様なお似合いの2人だ。旦那さんは挨拶以外まだ一言も発しない。無口なタイプは職人気質でいい。初対面で男がベラベラ喋るのも信用ならない。
まず店の外観を見てもらった。
石壁に木組み作りの中世欧州風の建物に2人は興味深々感動している。
『素敵ね〜』
『ああ…』
まあこの秋葉原ジャンク通りにいきなり現れた洋風建築には違和感ありありだろう。
こっちとしては逆に目立ってくれると考えている。良く現地についてお店の建物が見つからなくて困った事がある。スマホのマップは使えても東京は分かりづらい。
「入口から入って直ぐ右側にレセプションの受付兼夜はカウンターバー」
「左側にはテーブル席4人掛け丸テーブルが6つ、奥にキッチン」
「倉庫と社員寮(2LDK1室、ワンルーム2部屋)
2.3階は客室全16室。22.4㎥、13.5畳」
「キッチン横の通路から階段かEVで客室へ、通路先は従業員Only」
「トイレは階段手前のレセプション側に配置してあります」
「キッチンはオープンキッチンでカウンター席から料理を作るところを見ながら常連さんとお話ししながら調理が出来ます」
(ポケラーン……)
2人は中に入るなり呆気に取られていた。
そりゃ建物内も趣のある作りになっているが揃っている設備は最新だからな。
『ねぇあなた凄い凄い…」
奥さんはキッチンへ向かう。
『うーーーん、なるほど…』
旦那さんは唸りなが全体を見回している。
ひめ先輩は奥さんと楽しそうにキッチンで話しをしている。
『色々扉を開けてもいい』
「どうぞご自由に」
調理道具、食器、カトラリー、カップ、グラスなどは用意してあり食材以外は一通り、知り合いのレストランのシェフに見てもらって揃えた。
「何か足りない物があれば買い足して下さい」
「あとメニューなんかはまだ決まってないんです」
コンセプトは異世界の宿屋だからラノベに載ってるスープ、パン、肉料理をベースにして好きな物を作ってくれればいいと話した。
宿屋の朝食はバイキング形式でも良いしな。
「それでは上の客室も確認して下さい」
それから2.3階の客室を見てもらった。
広めに取った客室は全室ツインで外国の方にも来て欲しいからベッドも少し大きめのにしてある。窓を開けるとそこは都会の喧騒、秋葉原でまさに異世界。室内と外のギャップが凄い。
1階に戻り社員寮を案内する。
『へぇ〜かなり広くて素敵だねあなた…』
『あ、あ、いいな』
2LDK、72㎡と単身者用ワンルーム22.4㎥、今住んでるところは2Kなので広くなるし設備も新しくお風呂とトイレ別って最高と奥さんは言う。
『ねぇ、ねぇ、ひめちゃん!あ!ここ、こっちも』
『かなりしっかりとした作りですね。私も住みたいなぁ』
旦那さんはこれまで色々迷惑かけたから彼女が楽しそうに毎日過ごせるならと今回応募してくれたらしい。さっきから子供の様にはしゃいでいる姿を見ていつ振りだろうと話してくれた。
社員食堂はやる事が決まっていて調理はするがほぼ機械的流れ作業だったらしい。昔みたいにあの頃の洋食屋さん時代に戻れるかも知れないと涙ぐんでいる。
『ねー!あなた私ここで働きたい!』
『え?ってなんで?泣いてるの?』
「建物に感動したらしいですよ」
すかさずフォローしておいた。
『じゃ決まりね!』
ひめ先輩が決定?
「まあいいか」
宿屋もオーナーだからあまり口出ししないしスタッフ採用は丸投げするつもりだ。ギルドスタッフ応募者リストもあるし2人共採用活動頑張って。
オープンは3週間後に決まった。
サポートのシェフやパテシェには心当たりがあるらしい。
ちなみにフロアのアルバイトさんの衣装(制服)、カラスの様な光沢のある藍色、ダークネイビーのスカート丈膝下くらいのメイド風コスチュームを作ってある。
奥さんがあたしもこれ着たいと言い出し旦那さんが静止していてなんだか微笑ましい。
『じゃーん!見て見て、どお?かわいい?』
ひめ先輩にモデルになってもらい全体のバランスを見た。
「なかなかお似合いですよ。ひめ先輩!」
『やっぱり!惚れたか?見惚れたか?』
「はい、はい…」
全体的にはこれでいい、汚れ易いエプロンは白から少し紫か青でベースの薄い色と変更しグラデーションすると映えると提案してくれた。流石!
スカート丈はスタッフの身体に合わせてお直しで調整する。
シェフは動き易く着なれた物のデザインから自分で選ぶ事になった。
最後に2人にはオレは色々やる事があるから、オーナーの立場で実質宿屋の経営、窓口は全て任せると伝えて資金以外は全ての裁量権を委ねた。
あまり張り切り過ぎなくていい事。
決算利益配分ボーナスも用意するからそこの収支は頑張った分だよと伝えた。
後2人がお休みの日は何かあったらギルドの方でサポートするから週2日シフトを組んでしっかり取ってと言ってある。
これはひめ先輩が入り浸ること間違いないな。
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