第3話 近所のダンジョンが崩壊!?
残念なことに、平和とは恒久的に続くものではない
不穏な噂が流れ始めてから身に危険が迫るまで、そんなに時間はなかった。
「最近魔物の数がえらく多い」
「一級冒険者のパーティーがやられたって」
「国が騎士団をダンジョンに向かわせたらしい」
そんな噂が流れてから、ほんの数日後、街のすぐ近くにあるダンジョンが一つ崩壊した。
ダンジョンの崩壊。それはつまりダンジョンという隔離された迷宮の壁が壊れ、中に閉じ込められていた大量の魔物が外に出ることを意味する。
魔物たちは本能的に獲物を探す。獲物ってのは人間のことだ。
最初は野山をうろついていた魔物たちが、次第に一番人の多い街へと狙いを定めた。それがここ、俺が今住んでいる首都だった。
分厚い木で作られた重い街門が閉じられる。街はあっという間に魔物の群れに囲まれて、もう逃げ場がない。街壁の上から弓手と魔法使いたちが攻撃し、タイミングを見て騎士や兵士が外に出て突撃した。そうやって少しずつ魔物を削っていく。冒険者たちにも強制依頼が出て、魔物を倒していた。
けれどいかんせん魔物の数が多すぎる。
魔物の勢いは落ちないまま、街壁を突き破ろうとし始めた。
騎士団から街の人々に警告が出た。
外に居るのは危険だ。誰もが家の一番丈夫そうなところに食料を持って立てこもり震えた。
でももし魔物が街壁を超えて入ってきたら、多くの家が壊され人々は餌食となるだろう。
俺も自分の店の中に避難していた。何しろ俺は冒険者の経験はあっても攻撃力はさっぱりだ。外で迎え撃つよりは、店の中にいるほうがずっと安全でいい。
ところが安穏と隠れてやり過ごすわけにはいかないらしい。ドンドンと俺の店のドアが激しく叩かれて、外で誰かの怒鳴り声がする。
「ディルっ! ここは穴塞ぎ屋のディルの店だろ。頼む、出てきてくれ!」
「誰だ? 俺、避難中なんだけど」
「冒険者ギルド長のギードだ、頼む、開けてくれ」
ギルド長か。久しぶりなんで声とか忘れてたわ。
「俺、もう冒険者ギルドは辞めてずいぶん経つんですけど」
「今さらディルに頼み事なんかできる筋合いじゃないが、依頼したいことがあるんだ」
冒険者ギルドに居た時、ギルド長にはずいぶん世話になった。まあ、辞めた後は全く付き合いはなかったけど。当時の恩があるからな。
俺はしかたなくドアを開けた。
「ギルド長、どうしたんです?」
「すまん、今すぐお前に塞いでほしい穴があるんだ」
「今すぐって、どんな穴なんです? 一般市民は避難しろって国からお達しが出てるんだけど」
「分かってる。でもかなり大きな穴なんだ。この穴を塞げるやつはディルしかいないって冒険者たちが言ってるのを聞いた。頼む」
「やってみてもいいけど、危険な場所なんですよね? 俺が死んだら塞いだ穴がもう一回開きますよ」
「お前の安全は俺達が絶対守るから。頼む、一緒に来てくれ」
どうやら断れそうにないらしい。
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