第21話 碧眼のオオカミ
僕の前に一匹のオオカミがやってきた。白い毛に覆われていて、青く輝いた綺麗な眼をしている。僕の目の前に立ち止まってしばらく見つめていたが、こちらを襲おうという気はない様子だ。思い切って近づいてみることにした。
すると、オオカミが頭を下げた。その頭に手を置くと、突然光に包まれた。僕は少し驚いたが、光が消えるとオオカミが話しかけてきた。どうやら元々は組織に造られた生物だったようだ。だが組織からの扱いがあまりにも酷くなって逃げ出したらしい。
僕が幹部を打ち倒したのを見て、もしかすると組織に勝てるかもしれないと思って近づいてたのだという。昨日の夜に聞こえた遠吠えについて聞いてみると、このオオカミの声だったようだ。その点では夜の不安が消えたのでよかった。
オオカミが協力を申し出てきたものの、どんな能力を持っているのかが分からないので、まずは力を見せてもらうことにした。すると、かなりの素早さと噛む力を持っていることが分かった。ジャンプ力も4mはあるだろうか。
やはり組織の技術力を持って造られた生物というだけのことはある。一般的なオオカミと比べて何倍もの身体能力を持っている。仲間になってもらえれば申し分ないどころか、すごく頼もしいことだろう。是非にも協力をお願いすることにした。
このオオカミには名前がないらしく、考えてほしいとのことだった。青色に輝く眼を見て、スカイという名前に決めた。これからはスカイが僕の相棒だ。2人で力を合わせて組織を打ち倒したいと思う。
スカイは雪の中を移動することに長けているらしく、背中に乗せてもらうことにした。今までよりも少ない休憩で進むことができるようになり、かなり効率が上がった。とはいえ、スカイも休憩が必要だ。正午くらいの時間になったところで食事を摂ることにした。
スカイはオオカミなので肉食なのだろうかと思ったが、人間のように何でも食べるそうだ。甘味や酸味など、味覚も人間と全く同じらしい。辛いものが好きだというので、カレーを食べることにした。
スカイは初めて見るカレーに興味津々だった。いうまでもなく、お米も初めてだ。まず最初は匂いを嗅いでいた。イヌ科ということで嗅覚が鋭いのだろう。組織の技術力でさらに強化されて、匂いだけで安全かどうかを察知できるようになっているそうだ。
実際に一口食べてみると、どうやら気に入ってくれたようで美味しそうに食べていた。その食べっぷりは、見ているこっちまで嬉しくなるほどだった。デザートには桃を用意した。半分に割って仲良く食べた。
食事が終わってゆっくりしていると、スカイが横にやってきた。最初は僕に受け入れてもらえるかどうか、すごく不安だったそうだ。対峙する勢力の関係者だったのだから当然だろう。だけど、仲間にしてもらえてすごく嬉しかったし、心から安心できたと言ってくれた。
スカイの目には涙が浮かんでいた。そんなスカイを見て、僕はしっかりと抱きしめた。そして、仲間として共に力を合わせることを誓った。スカイの姿は凛々しくて、力強さを感じた。
それからの日々はすごく楽しかった。仲間がいるだけでこんなにも前向きになれるのだ。お互いに鍛錬の相手をして高め合っていった。きっと僕たちなら最高のパートナーになることができるだろう。
組織のアジトはもうすぐだ。スカイが道案内をしてくれたおかげで迷わず進むことができた。組織からしてみればスカイは裏切り者ということになる。それでもスカイは僕と一緒にこの世界を守るという選択をした。
スカイの勇気を讃えて、僕がしっかり守らなければと思っている。大切な相棒であり、最高の友だ。その手を取り、アジトの入り口をくぐるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます