第20話 更なる敵との遭遇

 世界樹の試練を乗り越えることができた。更なる力を得ることができた。これでよりいっそう、戦いをこなすことができるだろう。もちろん油断や傲りは禁物だ。慎重に進まなければならない。

 世界樹の場所を過ぎてしばらく進んだだろうか。しっかりと休息をとってから再び歩みを進めようとした、その時だった。前方にただならぬ気配を感じた。間違いない。かなりの強敵が待ち受けている。

 すると前方からものすごい速さで何かが飛んできた。サッとそれをかわすと、防御結界を展開しながらそれが何であるかを確認した。するとそれは、氷の結晶だった。しかも先端が鋭く尖っている。当たってしまうとかなりの怪我を負うことになるだろう。



 少しずつ敵に近づいていき、その姿を捉えた。敵の方から名乗りを上げた。どうやら彼は組織の幹部らしい。とても高度な技術を持っている組織の幹部だ。想像もつかない突拍子な技があってもおかしくないだろう。

 すると氷の結晶を連発してきた。だが、僕はそれをサラリとかわした。超集中を身につけた僕にとっては、それはゆっくりと歩くカタツムリ同然なのだ。よく観察してみると、氷の結晶は敵が身につけている装置から出ているようだ。

 そこで、その装置めがけて炎魔法を放った。敵はもちろん避けようとしたが、その避ける方向にも同時に魔法を放っていた。そうしていとも簡単に装置を破壊することができた。



 すると今度は、剣を構えた。僕もすかさず剣を手に取る。間合いをきちんと意識していて、相手もそこまで素人ではないようだ。少しずつゆっくり間合いを詰めていく。あと一歩踏み込めばという間合いになって、剣同士が触れている。

 敵はなかなか隙を見せない。緊迫した時間が続いている。転移魔法を使い、いったん距離を取った。そして、相手の動きを封じるべく魔法を放った。しかし、敵が取り出した不思議な石が魔法を吸収してしまった。何度か魔法を放ったのだが、ことごとく石に吸収されてしまった。

 魔法を吸収できる石、やはり高度な技術力を持つ組織だ。吸収した後はその魔力を使って何か仕掛けてくるかもしれない。相手の動きに注目している必要があるだろう。



 どうやら石には吸収できる限界があるようだ。限界を迎えると、敵は石をそのまま飲み込んでしまった。すると相手の全身を青白い光が包み始めた。そして敵の傷は全て無くなり、完全に回復してしまった。もしかすると敵の能力が上昇しているかもしれない。おそらくこの相手には魔法は使わない方がいいだろう。いや、他にも石を持っている敵がいると考えるのが自然だろう。この先は剣で戦うのが賢明だ。

 再び剣を構えて敵との距離を詰めていった。とはいっても、やはり敵はなかなか隙を見せない。剣を交えつつ、少しずつ相手の体力を削いでいくことにした。しばらく経ってから、転移魔法を使って敵の背後を取ることに成功した。そして、その勢いのまま剣で打ち込んだ。



 どうにか敵を倒すことができた。背後から攻めるのは避けたかったが、それ以外に手はないと判断してのことだった。今回の組織にどれだけの敵がいるのかは分かっていない。とはいっても、幹部が一人だけということは考えにくい。

 まだまだ強敵が待ち構えいえると考えるのが自然だろう。ひとまずは今回の戦いで疲れた体を休めるのが先決だ。しっかりと休息を取って、疲れを癒した。だいぶ日が暮れてきたので、今日はこれ以上進むことはせず待機することにした。

 夜も更けてきた時間だろうか。何かの音が聞こえたような気がして、ふと目が覚めた。今いる場所の近くではないようだが、どこかで遠吠えが聞こえる。耳を傾けてみると、犬ではないような気がする。この世界であれば組織が未知の生物を作っていてもおかしくはない。洞穴の入り口には強力な防御結界を展開してある。それに万が一結界が壊されるようなことがあれば、アラームが鳴ってわかるようにしている。

 明日もきっと大変な道のりになるだろう。今はひとまずゆっくり休もうと思い、再び眠りに落ちた。



 翌朝、何事もなく日の出を迎えた。夜中に雪は降っていなかったようだが、洞穴の入り口には何の痕跡もなかった。とはいえ、昨日の遠吠えの正体は分かっていない。だけど、あれは空耳などではなかった。確かに聞こえていたのだ。

 この雪山のどこかに、間違いなく何かの動物がいるのだ。まあ、組織のアジトがあるのだから普通ではあり得ないことすら起こってしまうだろうけども。

 再び歩みを進めた。今日は雪が降る様子もなく、視界もかなり良好だ。あと2、3日あれば頂上に辿り着けるだろう。周囲を警戒しつつ前進していく。魔法を使って少し先までの気配を探ってみた。しかし何の気配も感じなかった。

 敵があまりにも少なすぎると感じたが、敵のアジトがどこにあるかは分からない。もしかするとアジトにいっぱい集合しているのかもしれない。気を抜くことなく進んでいくべきだろう。



 さらにしばらく進んでいくと、何かの気配を感じた。人間ではない、何かの動物のようだ。岩陰に隠れて様子をうかがっていると、それは猛スピードで迫ってきた。防御結界を広げて、敵の襲撃に備えた。

 すぐ近くまでそれはやってきた。その姿を目にした瞬間、それがオオカミであることを理解した。オオカミは僕の目の前に立ち止まった。攻撃しようという意志は感じられなかった......

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