第18話 白銀の世界

 最初の敵を倒してから、またしばらく歩みを進めてきた。あたり一面に雪景色が広がっている。たいていの岩は厚い氷で覆われている。だいぶ標高も上がってきているのだろう。酸素が薄くなっていて息切れしやすくなっている。まさしく魔の雪山ということができるだろう。少し油断しただけでも命取りになる。

 ふと何かの気配を感じた。ここまで登ってくる住民はまず居ない。おそらく敵が近くにいるのだろう。よりいっそう周囲を警戒して歩いた。少しずつ気配が近くなってくる。僕は剣を構えた。


 大きな岩の陰に身を潜めて周囲の様子をうかがっていると、それは姿を現した。今度の敵は顔が3つあり、それが1つの胴体につながっている。4本足で動いている。ふと思い当たる物があった。

 敵の姿はいわゆる「ケルベロス」、そのものであった。まさか伝説上の生き物すらも創り出すことができるということなのか。ニューワールドメーカーが持つ技術は並大抵のものではないようだ。まあ、この世界を変えようというくらいなのだから当然のことではあるだろうけども。


 敵の様子をじっくりと観察していると、どうやら致命的な欠陥があるようだった。3つの頭それぞれが独自の意思をもっているようだ。そのため連携が取れず、ばらばらの方向へ動こうとする。おそらくまだ開発段階、試作品といったところだろう。

 そのことさえ分かってしまえばあとは簡単だ。敵の隙をついて、いとも簡単に倒すことができた。組織の企みのせいで無理やり生み出されてしまう生き物に罪はないのかもしれないが、この世界を守るためには仕方ない。

 今回の敵はまだ開発段階であった。しかし、組織の技術はどんどん向上していくことだろう。今後はよりいっそう強い敵が出てきてもおかしくない。こちらも多くの経験を積んで、日々の鍛錬を怠らないようにしなければならない。





 僕は再び歩みを進めた。頂上まではあと半分ほどといったところだろうか。これから先は、いつ強い敵が出てきてもおかしくない場所だ。気を引き締めて進んでいかなければならない。

 だいぶ標高が高くなってきているため、進むスピードをゆっくりにしなければならない。無理して進んでしまうと体調を崩しかねない。適宜の休憩が大切だ。焦って進んでしまって命取りになっては元も子もないのだから。


 しばらく進むと、とても大きな樹がそびえたっていた。きっとこの世界の始まりの時からずっとここに鎮座しているのだろう。真っ白に雪化粧していながらも、その荘厳さがひしひしと伝わってきた。

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