第17話 道を進む

 雪や氷に足を取られないように気をつけて先に進む。足を滑らせると奈落の底へ落ちかねない。命綱が重要だ。

 いつ敵が出てきてもおかしくない。いつでも戦える態勢を取りつつ、周囲を警戒している。まだどんな敵か未知数だ。有用な情報はほとんどない。


 しばらくの間進んでいくと、何かの気配を感じた。足を止めて、周囲を注意深く観察した。おそらく近くに敵が居るのだろう。剣をかまえ、いつでも魔法を繰り出せるように備えた。

 辺りをどんなに見回しても、敵の姿が一向に見えない。しかし気配は確かに感じることができている。おそらくだが、どこか近くに身を潜めているのだろう。とはいっても、周囲には身を隠せるような岩場などはない。あたり一面は雪景色なのだから。  

 敵の気配は右前方から感じる。その方向へ向かって慎重に歩みを進めた。少しずつ進んでいくと、敵の気配が一段と強まった。敵がどこにいるのか、やっとわかった。分厚い雪の中に潜っているのだ。

 まだ敵はこちらに気づいていないようだ。だけど、敵の情報を収集するため、あえて気づかれることにした。すると敵が雪の中から飛び出してきた。武器は持っていないようだ。氷魔法を繰り出してきた。

 サッと敵の攻撃を避けた。さほど強い魔法ではないようだった。中級の炎魔法を敵にぶつけた。するとあっけなく崩れ去った。たいして強い敵ではないようだ。他の敵も近くにいるかもしれない。気をつけて進んでいこう。


 しばらく進むと、前方から何かが気づいてきた。どうやら人ではないようだ。おそらく組織が生み出した新たな生物だろう。僕の世界でも見たことない可能性がある。剣を構えつつ敵との距離を詰めていった。

 敵の見た目は猿のような姿だ。だけど、しっぽはない。それ以外は猿そのものだ。武器を持っているわけではないようだ。直接襲い掛かってきた。その攻撃を剣で受け止めて、振り払った。すかさず魔法を繰り出した。

 今度の敵もなんなく倒すことができた。しかし初めて見る生き物に正直言って驚いた。人類の技術で新たな生物を生み出してしまうことができるのが恐ろしいとさえ感じた。人間さえも造れてしまうのではないかという懸念が沸々とわいてきた。それと同時に、なんとしてでも組織の野望を食い止めなければと心に誓った。


 僕は再び歩みを再開した。周囲一面が雪景色だ。さっきの戦闘で体を動かしたかからか暖かくなっていた。汗をかくほどではないが、気温がかなり低いのですぐに元に戻った。極寒の地なのだということを実感した。

 周囲の警戒を怠らないようにしつつ、ゆっくりと歩みを進めていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る