第15話 次の世界へ

 第1の世界から戻ってきて、1週間ほどが過ぎた。次の世界へ向かう準備をしているところだ。第2の世界はどんなところなのだろうか。すごく楽しみだ。

 母さんから励ましの言葉をもらった。かなり期待してくれている。それにしっかりと応えることができればいいなと思う。

 明日には出発することになる。また、しばらくは戻って来れないだろう。家族との時間を噛みしめて、任務に臨む力に変えたい。


 久しぶりに友達と遊ぶことにした。みんなでゲームをした。最近は友達との時間を作れていなかったので、すごく楽しむことができた。友達からも心強い励まし、応援をしてもらった。ありがたいことだ。

 友達との時間をしっかりと堪能することができた。ワールドトリッパーになってから








 翌日、出発の朝だ。ぐっすりと眠ることができた。荷物はすでにまとめてあるので、抜けがないかをチェックした。

 母さんに見送ってもらい、出発した。コンゲルネの光に包まれながら、次の任務について説明を受けた。


 任務の舞台となる第2の世界は、常に氷に包まれた世界だそうだ。我々の世界でいうところの氷河期が一生続くようなものだ。寒さ対策が何より重要だ。甘く見ると命を落としかねない。平均気温がずっと氷点下20度以下だそうだ。

 寒さ対策に関してはコンゲルネの力を借りることもできるが、やっぱりできる限り自分の力で頑張りたいと思ったので、防寒具をしっかりと準備した。


 無事、第2の世界に到着した。本当に辺り一面が分厚い氷で覆われている。ハッキリ見えるほどに吐く息が白くなっている。

 この世界では、植物が存在していない。人類は特殊な進化を遂げており、我々とは呼吸のメカニズムが大きく違っている。

 この世界の人類は呼吸する時に空気を出し入れするだけで、我々のように酸素と二酸化炭素のガス交換をすることはない。酸素がなくても生きていけるということだ。


 僕が呼吸することで影響を与えてしまわないように、コンゲルネの力でこの世界に適応した肉体になっている。

 いくらなんでも呼吸しないというわけにはいかないので、そこはコンゲルネの力を借りざるをえないだろう。


 この世界には人類以外は生息していないようだ。みんなで助け合って生きている。

 今回の任務は、この世界に新しい生き物を生み出して破滅を目論む「ニューワールドメーカー」という組織を打ち倒すことだ。

 ニューワールドメーカーは科学技術を研究し、生き物を新たに生み出す技術を実現させてしまった。それを上手く活用すれば良かったのに、世界を破滅させるという方向に動いてしまったのだ。

 彼らを打ち倒し、野望を阻止することが今回の目的だ。先に述べたほどの技術を持っている組織だ。どんな力を秘めているか分からない。油断せずに進みたい。


 人口は1000人程度しかいない。国という概念がなく、全員が一族の仲間だ。みんな氷で覆われた山に穴を掘って生活している。

 さっそくこの世界を統べるトップである族長にあいさつをした。ワールドトリッパーのことをすごく頼りにしているようだ。

 族長へのあいさつを済ませると、この世界でも歓迎を受けた。ワールドトリッパーは伝説の勇者として語り継がれている。伝説といっても実在するものとされていて、凄いという意味での伝説だ。


 宿、ホテルのようなものはなく、族長の家に泊まることになった。この世界の主食はとうもろこしと小麦だ。それぞれの家の中に氷を取り去って土を耕した畑がある。極寒の地でも育つ穀物があるそうだ。我々の世界とは異なっているようだ。

 食事を終えてゆっくりしていると、族長が声をかけてきた。かつて世界を救ったワールドトリッパーの女性に似ていると言われた。僕が母さんの写真を見せると、その人だと目を潤ませながら答えた。

 母だと伝えると、とても感激したようで、抱擁を交わした。親子二代で世界を救ってもらえることがすごくありがたいと言ってもらえた。何としても任務を遂行しなければと、心に固く誓った。

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