第3話 初級試験

 ワールド・トリッパーの能力には、いくつかのランクがあるらしい。初級に始まり、マスターまでの7段階があるらしい。まずは初級を目指すことになる。そのためには試験に合格しなければならない。

 僕の場合は魔導士と剣士、両方の試験を受ける必要がある。初級試験はさほど難しくないらしいが、コンゲルネが全ての試験を実施するらしい。筆記試験だけでなく、実技も試されるようだ。

 筆記試験は普段からコツコツと暗記してきたので、それなりに自信がある。繰り返し問題を解いて慣れていけば、本番でも落ち着いて考えることができるだろう。

 それに実技に関しても、母さんと共にコツコツとトレーニングを積んできた。いつも通りに落ち着いて臨めばきっと大丈夫だろう。


 そしていよいよ、試験の日がやってきた。試験はまず筆記から始まった。それぞれ各100問を60分で解かなければならない。かなりの集中力を要するだろう。最初はひどく緊張してしまったものの、何度か深呼吸を繰り返すことで落ち着いて問題を読み進めていくことができた。すべて4択の問題なので、慌てることなく考えることができた。

 とは言っても、魔導士と剣士の両方で200問になるので、頭を使いすぎてすごく疲れてしまった。流石にどんなに体力があってもこれは大変だ。疲れない方が不思議だろう。でも以前と比べると、自分でも逞しく、強くなったなと感じた。


 昼食を挟んで、午後から実技試験を迎えた。剣士の試験は基本的な動きや実践的な技能、剣さばきが試される。

 油断は禁物である。一撃を食らうと致命傷になりかねない。もちろん逆に言うと、相手に一撃を与えることが出来れば、勝ちが見えてくるだろう。いずれにしても真剣な態度が必要とされる。剣術は命のやり取りであり、決して遊びなんかじゃない。

 いつもの練習イメージを頭に思い浮かべながら、瞬時に動くことができた。さらに予想外の状況が起こっても落ち着いて対応することもできた。今の自分にやれるだけのことはやったと思う。結果はそんなに悪くないと思う。


 引き続き、魔導士の試験になった。魔法の扱いや強さ、制御できているかなどが試される。魔法は上手く使えば、とても便利なものである。しかしその一方で、一歩間違えれば暴走する危険性もある。使う側がしっかりと制御できなくてはならない。

 より高度な魔法になればなるほど、その術式も複雑になる。それだけ扱いづらくなる、制御できなくなってしまう危険があるということだ。自分だけでなく、周囲にも被害が出てしまいかねないのだ。

 だから、ランクに応じて使用を認められる魔法が細かく定められている。そして、日々の研さんが何よりも大事だと言われている。訓練を怠ると、すぐに能力が衰えてしまうらしい。常に修行の日々である。


 魔導士の試験も落ち着いてこなすことができた。全ての試験が終わって、とても安心した。あとは結果が出るのを待つだけだ。

 自分の実力を精一杯出し切ることができたのではないかと思う。だから悔いなどは一切ないし、どういう結果であれ満足だ。

 そして結果が通達された。無事にどちらも合格することが出来た。すごく嬉しかった。母さんも心から喜んでいるようだった。初級の証である勲章が与えられた。

 晴れて初級剣士と初級魔導士になれたわけだ。もちろんこれで終わりではないし、これからも努力を続けなければならない。

 初級魔導士になったことで、簡単な魔法を使えるようになった。魔法にはいくつかの属性がある。火や水、氷や光、草などさまざまだ。全てに精通することは難しく、どれか1つだけか多くても2~3個程度の属性に絞るのが一般的だ。それはまだ先で大丈夫らしい。今はまだ、いろいろな属性を試すことが大事だと言われた。

 初級剣士としては、新たな剣術を習得した。回転斬りや後ろ突きなど、体の動かし方が重要なものだ。




 試験の翌日からさっそくステップアップのためのトレーニングが始まった。身につけた能力をよりいっそう高度なもの、確固たるものにしていく段階だ。もちろん新たな学びもある。

 上位のランクになればなるほどより多く、より高度なものを求められることになるのは当然のことだろうと思う。

 変に気負う必要はないと思う。今まで通りにコツコツと努力をしていくだけだ。そのスタンスは変わらない。何事も努力してこそ達成できるのだから。


 次に目指すのは中級試験だ。それまではしばらく期間がある。だから、しっかりと準備をした上で臨みたいと思う。初級ほど容易くはなく、多くの人がここでドロップアウトしてしまうのだそうだ。

 中級に合格すると、実際に任務をこなすことになる。だからこそ、試験も難しく厳しいものになっているのだ。そこにはそれ相応の責任を伴う。生半可な気持ちではとてもじゃないが、成し遂げることは不可能だろう。


 母さんも中級以上は1回で合格したことがないらしい。だからこそ、精一杯努力していい結果を出したいと思う。応援してくれている母さんのためにも、必ず合格してみせる。

 これからは剣士と魔導士を合わせた、魔導剣士というジョブになることもできるらしい。剣に魔法の力を宿して、より幅広い戦い方ができる。選択肢が増えるのはとてもいい事だ。2つを融合させた戦い方を身につけることにした。

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