5
「あれがゴール……だよね」
視線の先、山の麓には光り輝くアーチが見える。そこにはこれ見よがしに“GOAL”の文字のネオンがくっついていた。
ここまで長かった。
スキン・フィールドの後も霧で迷ったり崖から落ちたり落とし穴に引っ掛かったり……結構危ない目にあったけど、あと少しでクリアだ。
「あれ?ちょっと待って」
「試練はあと一つでもう一息」って思ってここまで必死にやってきたけど、最後の試練はまだやっていない。
ということはまだ大変なことが残っているということで……
ズシン、ズシン。
しかもそれは、所謂ラスボスで。
ズシン、ズシン、ズシン。
今までの何よりも規格外なんだろうけど。
「嘘でしょ……」
だからって、怪獣はないでしょ。
『試練3:怪獣を倒して安眠を守れ!』
「ギャオガガガガガガガガガッ」
怪獣の口から鼓膜を破壊しそうな程強烈な叫び声、というか騒音が弾け飛んできた。
その爆発的な刺激に反応して、最後のお札が光る。そこから現れたのは――
「りゅ、龍一郎!?」
鎧を身に纏った、龍一郎だった。
「何を言っている。我が名はサムライピーチ・ドラゴンワン!鬼達が送る刺客、騒音で人々の安眠を害する不眠怪獣ネムラセンガを退治するために派遣会社から参上したのだ!」
ごめん、情報量が多すぎて頭がついていけないわ。
「我が貴様を成敗する!はぁっ!」
ドラゴンワンは天高く飛び上がり、銀色に煌めく日本刀で怪獣に斬りかかる!
べしん。
「ぐはぁっ!?」
一撃ではたき落とされたけど。
「あの、もしかしてドラゴンワンさんって……弱いんですか?」
「我が弱いのではない。ヤツが強いだけだ」
あまり変わらない気がする。
「やはり秘密兵器を使うしかないな。お嬢さん、我が隙を作るからその間にこれを怪獣の口に投げ込んでくれ」
そう言って、ドラゴンワンさんが渡してきたのは万能携帯食、きび団子。
「その団子には強力な睡眠薬が練り込まれている。ひとつ食べればどんな怪物もぐっすりだ」
その薬、用量用法を正しく守っているんだろうか。
「では頼んだぞ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ――」
私にツッコミをさせる時間を一切与えず、ドラゴンワンさんは飛び出していく。
どうしよう。私、ボール投げ超下手くそなんですけど。
「はぁっ!」
「そりゃっ!」
「ぎゃあぁっ!」
「ふんぬぅっ!」
おろおろする私を余所に、ドラゴンワンさんは何とか怪獣に食らいついている。ボコボコにされながらも、少しずつ怪獣の動きを鈍くさせている。
「今だお嬢さん!きび団子を!」
「ああ、もう!分かったわよ!」
私は意を決して、いや、やけくそになってきび団子を怪獣へ向けてぶん投げる――が、最高にワイルドピッチ。団子はあさっての方向に飛んでいく。
しまった、そう思った瞬間に草むらから一匹の獣の影が飛び出してくる。
勇ましい犬の姿だった。
尻尾の一振りがバットの代わりになって、きび団子を打つ!しかし、軌道修正にはまだ足りない。
続いて飛び出してきたのは筋肉ムキムキの猿。きび団子を鮮やかにキャッチして怪獣へ向けてドストレートに投げつける。
「この流れはもしかして……」
私の予想通り最後に現れたのはきじ――ではなく、
「きじは珍しくてお供に出来なかったんだ」
「不死鳥の方が凄いと思うけど!?」
不死鳥が放つ業火の旋風がきび団子を包み込み、香ばしくローストして焼き団子にする。
それはまさに火の玉ストレート。
怪獣の口にすぽんと入った団子は爆発し、一撃で怪獣を眠らせた。
勿論、ドラゴンワンさんはその千載一遇のチャンスを見逃さず、必殺技を叩き込む!
「秘技、すもももももももものうち斬り!」
技名のセンスが壊滅的。
でも威力は申し分なし。怪獣は爆発四散して消滅したのでした。
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