お尻は焦げたが、なんとか脂肪の塊から逃げることは出来た。


「な、分かっただろ。頑張れば


 結局ウサギは格好付けたまま消えていった。

 あいつ私のお尻燃やしにやって来ただけじゃない?


「で、逃げ切れたのはいいんだけど……」


 今私がいるのは、荒れ果てた野原。しかもぐちゃぐちゃした汚物みたいな物が山積みになっている。しかも臭い。


「通りたくないけど……ここしか道はないからなぁ」


 鼻を摘まみながら汚物にぶつからないよう間を縫って歩く。でも完全に避けきることは出来ない。


 ぐちゃり、と。


 肘が汚物の山に触れた途端、バランスを崩した汚物達が私へと降り注いできて――


「きゃああああああっ!?」


 ――その瞬間、二枚目のお札が反応。

 光り輝く妖精が飛び出して、バリアーを張って汚物から身を守ってくれた。


「大丈夫かしら?」

「あ、ありがとう。えっと、あなたは?」

「あたしはティンカー・ヴェール。ヴェールちゃんでいいわ」


 妖精――ヴェールちゃんは鱗粉を撒きながらお淑やかにポーズを決めた。


「ところで……その、ヴェールちゃん。ここは何なの?」

「ここはスキン・フィールド。あなたのお肌の状態を基に作られた場所よ」


 私の肌ってこんなに汚いのか。

 ……うん、多分そうなんだろう。泣きたい。


「それで、どうすればいいの?こんなんじゃあまともに通れないんだけど」

「決まっているでしょ、キレイにして通れるようにするのよ」

「はい?」


 ヴェールちゃんは「ほい」と作業着とブラシ、薬品等々を私に手渡す。それと同時に、再び光る文字が頭上に現れた。


『試練2:汚いお肌荒野を掃除せよ!』


「あたしは水と泡の魔法を使うから、あなたはお掃除頑張って」

「……オ、オッケー」


 魔法を使うのにやり方はやけに地道だなぁ。



「おりゃりゃりゃりゃーっ!」

 汚物をブラシで擦り落とす。


「どりゃりゃりゃりゃーっ!」

 ガサガサの大地に薬品を塗って滑らかにする。


「ほりゃりゃりゃりゃーっ!」

 あと、他にも色々。


 血眼で汚れを徹底的に落として、荒野は漸くつるつるキレイな更地になった。心なしか、しっとりしている気もする。


「よくやったわ!ナイスウォッシュ!」


 ガッツポーズで健闘を称えると、ヴェールちゃんは消えていった。


「これで残る試練はあと一つ……」


 もう少しで試練が終わり、ゴールを目指すだけ。

 あと一息、気合いを入れて行こう。


 私は艶やかなお肌の上を駆け抜けていった。

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