第16話 予感
はぁーまさかこんなことになるなんて。有名Youtuberのアキちゃんに会えたのは正直驚いたけどその後が酷すぎた。信長とアキちゃんが言い争っていたはずなのに途中からなぜか俺までヒートアップ。アキちゃんが怒って帰るのは仕方ないとして、まさか奈々ちゃんと雪さんも一緒に帰ってしまうとは。とんでもない会になってしまった。
「…あーもうマジで最悪だわ〜。せっかく奈々ちゃんともっと仲良くなれるチャンスだったのにさぁ〜」
ミッチーが嘆いている。無理もない。
「すまんミッチー。俺までイライラしてしまったわ」
「ホントだよー。まあ、お前はまだいいとして」
ミッチーが信長に振り返る
「信長。マジでお前どうしちまった?なぁ。いつまでその戦国お遊びを続けるつもりなわけ?お前のせいでユッキーが怒ったんだぞ?アキちゃんが来なかったとしてもどちらにしろお開きになってたわ。お前のせいでな」
光安は本来お調子者で物事を誇張して大袈裟に話をする癖がある。ただ、今回のミッチーの言い分に関しては決して大袈裟ではないと俺は思う。
「………」
「おい、聞いてんのか信長?」
「ん、なんじゃ?なにか申したか?」
「聞いてねえのかよこの酔っぱらいが!もういいわ。はぁ〜奈々ちゃんと二次会に行きたかったな。じゃあな二人共、俺はもう少し飲んで帰る」
そう言ってミッチーは一人夜の繁華街へと消えていった。きっと行きつけの店があるのだろう。それにしても、さっきから信長の様子がおかしい。
「信長様、大丈夫ですか?」
「なにがじゃ?」
「いえ、なんかさっきからボーっとしてません?」
「……で、あるな」
……で、あるな?なにそれ。つまり「はい、ボーっとしてますよ」ってこと?
「……次郎よ、お主に聞きたいことがある」
「はい、なんでしょう?」
「なぜ雪女は怒っておったのじゃ?」
「え?」
「
「……え?」
……は?え、あんなに雪さんに暴言を吐いていた張本人が何を言ってる?
「あのー信長様。やっぱり酔っ払ってますか?」
「いや。全く醉うておらん」
「そうですか……。で、なんで雪さんが怒っていたのかわからないと…」
「うむ」
あの……なんで?普通に考えたらわかるよな?思い当たる節はいくつかあるどころの話ではない。思い当たる節しかないだろ。最初から命令口調なのは信長だから仕方ないにしても、肌が白いからと言って雪女呼ばわりしたり、雪さんが気を遣ってお酒を頼もうとしても馬鹿だの阿呆だの罵ったり。これで怒らないほうがどうかしている。
「信長様、いくらお酒の場だったとはいえ、初対面の人に雪女はどうかと…」
「なぜじゃ。雪のようにきめ細やかで綺麗な肌をしておったわあの女。儂としたことが、あまりの美しさに思わず雪女と呼んでしもうた」
「は?なんですかそれ。最初は馬鹿にしていたじゃないですか。顔の生気がないから雪と名付けられたのか?って感じで失礼なこと言っていませんでした?」
「ふん、たわけ。あれは場を和ませるための一種の戯れじゃ」
「………」
マジで何言ってんだこいつは。呆れて何も言えない。こんなの伝わるわけねーだろ。どうやら雪さんが怒ってた理由がわからないのは本当らしい。ただ、雪女っていう褒め言葉なんか戦国時代でも通用しねえだろ!
「信長様、雪さんとまた会いたいですか?ミッチーに聞いてみれば奈々ちゃん経由で連絡先を聞けるかもしれませんよ」
「ふん、よいわ。雪女とはおそらくいずれ会うことになる。儂にはわかる」
「そうですか」
ふーん。そっか。どうやら信長はあの子に本気で恋をしたようだ。どうなるかはわかんないけど拙者、殿のことを応援しますで候。
『ブーンブーン』
ん、こんな時間に電話?知らない番号だ
「はい、もしもし」
「あの、次郎くん?わかるかな?私、秀幸の母です」
「あーヒデのお母さん!久しぶりです!えーっと…どうしたんですかこんな時間に?あれ、ヒデは?」
「実は…ひで君、数日前に塾の階段から転げ落ちたって病院の先生から連絡があってね…」
「え……」
「命に別状はないって聞いてたからホッとしたんだけど…五日間ずっと意識が戻らなかったの。それでね、ついさっき病院から連絡があって…ひで君意識が戻ったって」
「本当ですか!?よかった……。え、でも…意識が戻ったって事を俺に伝えるための電話…ではないですよね?」
「ええ。実は……」
嫌な予感がした。まさか……。俺と信長は翌朝すぐにヒデがいる病院へ向かうことになった。
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