第17話 悪夢再び
12月26日。この日は日曜日で朝からいつものように通勤ラッシュに巻き込まれることはない。多くの家族やカップルはまだ昨日の夢の続きでも見ているのだろう。できれば、俺も昨日の出来事は夢であってほしいと願っている。合コンのこと?いや、もちろんそれも夢であってほしいのだが昨日の電話だ。昨晩、ヒデのお母さんから聞いた内容は正直信じられないような内容だった。でも、とにかく会って確かめるしかない。
ヒデがいる病院に着いたので俺と信長は急いで彼がいる病室に向かう。
部屋は三○三号室。
「ヒデ!!」
そこには前回会ったときとそれほど変わっていない秀幸の姿があった。
「次郎殿」
「よかった………本当に良かった」
目頭が熱くな……ってはないが、こんなに動揺している気持ちになったのは何日ぶりだろう。この感じ……まさか。
「お久しうございます。おや、どうされましたかそのお顔は」
おいおいおいおい。
「……なんだよヒデ、その戦国武将ごっこの頃の話し方は。今じゃないだろ。でも、本当に良かった」
嘘だと言ってくれ
「ごっこ?やや、ごっことは心外な!それよりも殿。再び相まみえましたこと、それがし誠に嬉しく存じ上げまする」
「猿よ、よう戻った。難儀であったな」
「ははっ。心遣い、ありがたく頂戴いたしまする」
頼むから夢であってくれ
「あの……ヒデ。一応確認な。念の為に聞かせてくれ。お前、ヒデだよな?」
「次郎殿、それがしあいにく次郎殿の知っておられるヒデではありませぬ。木下藤吉郎、いや、信長様に仕えてからは秀吉。浅井を滅ぼしてからは羽柴秀吉と名乗らせていただいておりまする。が、これまで通り、ヒデと呼んでもらっても構いませぬぞ」
……目眩がする。三十過ぎにもなって二人も転生者と会うことになるなんて
____________________________________________
その後、ヒデのお母さんにも詳しく話を聞いた。彼が目覚めたとき、「ここはどこじゃ!?」「殿は何処じゃ!?何処におる!?」とよくわからない発言を連発していたこと。脳に異常がないかCT検査を行ったが異常は見つからなかったこと。そして、俺や信長にいち早く会いたがっていたこと、などなど。
ただ、本当にこんな事ってあり得るのだろうか。信長だけならまだしも(まあ信長の時点であり得ない域を超えてはいるのだが)ヒデまで同じような状況に陥るなんて。しかもなぜか信長は当たり前のようにこの状況を受け入れている。そういえば……ちょっと前に「二人(秀吉と光秀)はこの世におる。儂にはわかる」みたいなこと言ってたよな。信長はこうなることが最初からわかってた?
っていうか……
「殿!賢き箱で調べてみたものの、元の世に戻る術が見つかりませぬ」
「ふん、儂も賢き本で既に試しておるわ」
「やや、これは失礼つかまつりました。では
「それもやったわっ!貴様、儂を愚弄する気かっ!!」
「ややや、それは大変失礼つかまつりました」
なんだこいつら……。マジで面倒くさいんだが。
「むむ!殿、これは一体。ここに殿のことが書かれておりますぞ」
「ほう、なんと書かれておる」
は?信長の事が書かれている?そりゃそうだろ、織田信長の情報なんてネットで検索したらいくらでも出てくる。秀吉くんも自分の名前で調べてみたらどうだい?
「ははっ。こう書かれておりまする。『生配信中に放送事故か。あきちゃんに激怒する信長と名乗る男』と」
は?
「で、あるか」
いや、それって……おいおいマジかよ
俺はいつになったらこの悪夢から覚めることができるのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます