第9話 合同紺羽の戦い <冬の陣>その1
90分食べ放題の時間はあっという間に過ぎ、俺はもちろん信長もおじさんも満足していた。おじさんにも別れを告げ、この会はお開きとなり俺たちもUshi-Ushiを後にした。信長は俺のことなど気にもせずさっさと前を歩いている。さて、どのタイミングで切り出そうか。そう思っていたのも束の間、急に信長が立ち止まり
「次郎よ。先程こそこそと何かを確認しておったな?何をしていた。申せ」
と信長から聞いてくれたおかげで、話を切り出せるいいきっかけとなった。
「信長様。同級生のミッチーを覚えていますか?」
「みっちー?みっちーとは
「はい、そのミッチーです。実はさっき彼から今度の土曜日に合コンに来てほしいと誘われました」
「ごうこん…なんじゃそれは?」
…なんじゃそれは?
おいおいおいおいおい。信長くんよぉ。スマホの使い方やパチンコの打ち方はわかるくせに合コンを知らないっていう設定ですか?
「あ、知らないなら大丈夫です。すみません、今の話は忘れてください」
「待て待て待て、ごうこん…ごうこん。もしや
「いえ、違います」
「次郎……貴様。わ、儂を…儂を愚弄する気か」
夜道なのに信長の顔がみるみる朱色に染まっていくのがわかる。短気すぎるだろ。
「すみませんすみません!わかりましたよ、そうです。合同紺羽の戦いのことですよ。信長様もよかったら参加しないかとミッチーに誘われたんです」
「ほう、なるほどのう。なんじゃ、聞いて損したわ。儂にはまるで関係のないことよ」
「ですよね。なので俺だけ参加するつもりです」
「が、戦となったら話は別。次郎、戦支度じゃっ!!」
……なんだこのキャラ。面倒くせえ。そもそも何の準備すんだよ。まあいいか、俺もミッチーと会うのは久々だから信長が居てくれたほうが俺としても有り難い。正直あいつとはなんかノリが合わないんだよな。
「ではミッチーに参加するって返事しますね」
「……で、あるか」
で、あるか。じゃねえよ!!なんだこいつ!!あーなんかだんだん腹立ってきた。っていうか……そもそも大丈夫なのか、この信長が参加しても。
それにしても、もうすぐクリスマスか。俺も信長も長い間彼女が居ない。今度の土曜ってことは25日、つまりその日はクリスマス当日。なんだろう、少しだけ高揚している自分がいる。この日に集まる女の子ってのはもちろん彼氏は居ないはず。こっちはおそらく俺と信長とミッチーの三人。つまり、最低でも彼氏が居ない女の子が三人も集まることになる。今年のクリスマスは期待していいのだろうか
残念ながら、この期待は儚く散ることとなる。なぜなら俺が参加することになるのはどうやら本当に
地に足がついていないこの日の俺たちにはそんなことなどまだ知る由もない。
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