第10話 合同紺羽の戦い <冬の陣>その2
「斎藤さんお疲れ様でーす」
「あ、お疲れさまです」
ふぅ、やっと終わった。今日は12月25日。私にとって一切関係のないイベントがまた今年もやってきた。他の子達は今から素敵なディナーにでも行くのかな。私は特にそういった予定もなく、安定の休日出勤。クリスマスに予定がないことが焦っていたのは何歳の頃までだっけ。今ではすっかり予定がないことに慣れてしまった。
なんだかな。クリスマスというだけで少し憂鬱になる自分がいる。でも、誘われてもなぜか断ってしまう。仕事の後に飲みに行くのってなんか疲れるし。じゃあ休日はと聞かれても休みの日にわざわざ外に出たくない。一人で居るのは好きな方。でも、やっぱり少し憂鬱になる。
「雪さん!今日ってこのあと…予定とかないですか?」
憂鬱な私なんか知ったことじゃないという勢いで私に話しかけてきたのは後輩の奈々ちゃん。
「奈々ちゃん。予定って?特にないけどどうしたの?」
「えーよかったぁ!いや、てっきり雪さんのことだからこれからデートにでも行くのかと思ってましたー!」
「そんなことないよ、これから帰ってドラマの続きを観るつもりだよ。よかったって何?」
「あの、実はぁ。今日これから合コンなんです!でも…私の友達の一人が急遽体調崩しちゃって…だから。雪さんさえよければ一緒に行きませんか?」
「え、私?いやいや、無理だよ。だって奈々ちゃんと私って年も結構離れてるし…。さすがに参加はできないよ。ごめんね」
「大丈夫ですよぉ。雪さんものすごく綺麗だし、今日来る男性もみんな三十代ぐらいって聞いてます。むしろ、雪さんみたいな女性が居たほうが男性陣も喜ぶんじゃないかな」
今日来る男性もみんな三十代ぐらい…か。
「いや…でも」
「お願いしますっ!さすがにこっちが二人だとこの会自体なくなるかもしれないんです。私、クリスマスのこの日の合コン、すっごく楽しみにしてたんです。雪さーん、いっしょうのお願いです」
「んー……」
結局OKしてしまった。私は昔から押しに弱い。
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店に到着すると男性が三人横並びに座っている席を見つけたので、今日の会の参加者なのだとすぐに分かった。
「こんばんはぁ。はじめまして〜!」
「こんばんは。すみません、待たれましたか?」
「いえいえぜ〜んぜん大丈夫っすよ〜外寒かったっしょ?ささ、座って座って〜」
うーん。なんか軽そうな人だな
「はじめまして」
爽やかな方だな。私より年下かな?まだ二十代後半ぐらいに見える
「座れ」
???……えーと。何か怒ってらっしゃる?
「ねえねえ奈々ちゃん。もう一人の子はまだ来ない感じ〜?」
「うん、もうひとりは少し遅れるって。だから先に始めちゃおう」
「おっけぇ〜」
なるほど、奈々ちゃんと左奥の少しチャラそうな方がお友達か。真ん中の方は奈々ちゃんとは面識なさそう。で、私の前に座っている方。
「なんじゃ?何を見ておる?」
……えーと。何か怒ってらっしゃる?
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