第一章 3『ヒロインとの出会い』

——なんて気持ちがいいんだ。


 俺は笑いながら道を歩いていた。

 服を着たことにより、恥ずかしさがなくなり晴々しくなったのだ。


 突然、俺は思った。

 アニメや漫画の世界では、最強のスキルや武器など持って異世界に行くが……。

 俺はというと……。

 まだ何も見つかっていない。

 まぁ、これくらいはわかっていた。

 なぜなら、転生系、転移系の漫画やアニメは最初に『俺には最強のスキルがないのか……。』とかなんとかいうけど、結局あるものが多い。ないのは、ギャグ系のやつだ。

 そう。つまり俺にもあるかもしれないのだ。


 そんなことはさておき、どこで俺は寝ればいいんだ!?

 太陽が沈みかけ、空が赤オレンジ色になっているところだ。

 宿を見つけたいが……。

 金……って……日本の……やつ……使える……よな……?———


 あっ。

 俺は忘れていた。死んだから何も持っていないということを。

 やばい。どうしよう。

 俺の異世界人生は一瞬にして幕を閉じた。

 

 って!そんなことがあってたまるか!


 まず今日は、どこか路地裏とかで寝よう。怖い人とかいないはず……。そう思おう。


 そして俺は何だかんだで、どこか分からない路地裏についた。

 布団も枕もなんもない。座って寝るか。


『おい。お前誰だよ』


 俺はその瞬間、やったな、と思った。


『あれ?本当じゃん。あいつどうする?』

『とりあえず殺しちゃう?』


 おい。殺すって言ったか?多分高校生くらい、だから18とかそれくらいの年の人だろう。俺とほぼ同じくらいの年だ。それで殺すって流石にネタだよな……?

 するとそいつらはナイフをポッケから出してこっちに刃

をむけてきた。

 いや待てよ。こいつらガチで殺す系じゃね?やばいやばい。

 いやでも待てよ。俺ならもしかしたら…。


——勝てる。


 そんなことは思わない。無理だ。逃げよう。

 でも、逃げ場がない……。


 

 それと同時刻。

 家一軒一軒の屋根を踏み場にして、渡っている者がいた。

 その者は、ある路地裏を見つけると、剣を抜き、目を大きく開け光らせた。

 路地裏のところの地面に着く瞬間、その者は3人のある男たちに向かって剣を向けた。


 

——助…かったの…か…?


 俺は腰を抜かした。誰なんだ。

 俺はある人に助けられた。

 カッコいい。かっけぇ。


 さっきの男らはどっかに走って逃げてった。


『助けてくれてありがとうございます』


 俺はその人にそう言った。すると、その人はこっちに顔を向けて、


『いえ。あなたが助かって何よりです』


 そう笑って言った。

 赤色の光るような綺麗な髪、ポニーテール、素敵なスタイル、素晴らしく可愛い顔。

 な、なんだこの気持ちは。エロゲーで新キャラが発表された時よりも胸が熱い。


 まさか。


 これは初恋というものなのか…!


『えっと。すいません、名前なんて言うんですか?』


 俺は咄嗟に言ってしまった。

 少し掠れた声でそう言った。


『私の名前はミライ、ミライ=アクアよ。あなたは?』


 ミライちゃんか。

 デュフフふふふふさふふ。

 そんなふうにはならなかった。普通の俺ならなっていたはずだ。

 恋の力という者なのか…。


『ス、ス、スト=バナーと言います』

『ストさんですか!よろしく!』


 思わず適当に言ってしまったが、まぁいい。

 俺はこれからスト=バナーとして生きていこう。

 

『というより、ストさんは家がないんですか?』

『いや、違う町からやってきたんですけど、お金を途中で落としちゃったみたいで…』

『そうなんですか!?それなら私の家に泊まって行きますか?』


 ん?

 ん?

 ん?

 ん?

 ん?

 思わず『ん?』と5回心の中で言ってしまった。

 まさか、俺これ誘われてる!?

 おいおいおいおいおいおい、全世界の非リアジュウどもよ。すまん。

 俺は抜け駆けするぜ!!

 

『えっ。いいんですか!?』


 とりあえずここは濁しておこう。ここでもしも、俺が誘われてることに気づいてると、わかってしまい、冷めてしまうかもしれんからな。


『いや全然。こっちなんでついてきてください』


 ふっ。きた。これは勝った。

 すまん。すまん。すまん。

 全国の非リアよ。俺は抜け駆けするつもりなんてなかったんだ。

 でもでも。しょうがないじゃん!!

 俺はミライさんの家に向かった。

 向かう途中、俺は質問をした。


『なんでミライさんは僕を助けてくれたんですか?』


 これで脈ありか試させてもらうぜ。

 まだ俺は魔法を撃てないが、脈ありかわかる魔法なら使えるぜ!

 というか、魔法はこの世界にあるのか?

 まぁそんなことは今はどうでもいい。


『あ。ミライでいいですよ。なんか、さん付けされると気になっちゃうんで』


 きた。勝った。俺は今、全てに勝った気がした。

 

『私、人を助けるのが趣味なんですよ。騎士団に入りたいんですけど、女性はなかなか受け付けてくれなくて…。だからボランティア活動みたいに自分でやってる感じです!』


 おいおい。なんて偉い子なんだ。

 初恋の相手がこんな偉い子でよかった。

 まっ、初イキももらっちゃいますけどね。


 そんなこんなで、ミライの家についた。


『ここが私の家です』


『ふぁ!!.???』

『…………』

 思わず時が止まってしまった。

 そこはそう。豪邸だ。貴族が住んでる豪邸だったのだ。

 おい、やってるやん。

 顔もスタイルも良くて、性格も良くて、さらにはいい家系。

 やってんやん。


『ど、どうしました?』

『いや、こんなすごい家見るのが初めてなんで』

『そうなんですか。まぁまぁ上がってください。後それと、私もストさんじゃなくてストって呼んでいいですか?』


 恥ずかしながらミライがきいてきた。


 キタキタキタキタキタキタキターーーーーー!!

 呼び捨てきたーーーー!!


『いえ、全然大丈夫です!!!!』


 俺は結構大きな声で言った。

 もぉこれは童貞卒業したと言ってもいいのではないか。

 まだしてないが、したと言ってもいいだろう。


 そんなこんなで家の中に入った。

 天井は高く、シャンデリアがあり、階段は中央に大きくあり、部屋は何個もある。

 

『おい、ミライ。そいつは誰だ?』


 おっさんの太い声が聞こえてきた。


『あー。ストっていう人なの。さっき助けてきたの』

『あー!?なんでこんなもんを拾ってきたんだ。悪人だったらどうする!』


 その人はとてもキレていた。

 多分だけど話を聞くに父親なのだろう。

 無理もない。こんな外から知らない見ず知らずの男と一夜過ごそうとしてるんだから。


『困ってる人を放っておけなくて…』

『うっ』


 その父親らしき人物は、娘(ミライ)の可愛さにやられたのか分からないが、承諾してくれた。


『ごめんね。あれは私の父なの。それと早くこっちきて。ご飯よ。』


 やっぱり父親だったか。

 それにしても、ご飯までくれるのか?


 おいおいおい。

 こんなご飯食べていいのかよー。

 いやこれは、ご飯じゃなく『ディナー』だ。

 ご飯はなんか日本食みたいで一般職?みたいな感じだが、これは違う。高級だ。高級だからディナーなのだ。

 まぁ、俺の意味のわからない理論は置いといて。

 今日の食事を紹介しよう。


『カニのスープ』(みたいなの)と『サラダ』(盛り付け綺麗すぎ)と『ステーキ』(牛かどうかは分からない)と『チーズケーキ』だ。


 最!!!高!!!だ!!!

 俺はこの料理を食っていいのか?


『早く食べて食べて』


 ミライは食べて食べてと勧めてくる。

 ありがたくもらおう。

 まっ、本当のディナーは君なんだけどね⭐︎

 

『うまい!!!!』


 俺は思わず口に出してしまった。

 だってうまいんだもん。


『よかったー。もっと食べて』



 そんなこんなで俺の食事ターイムは終わった。

 ターイムと伸ばしたのは気分がうきうきだからだ。


『本当に美味しかった。ありがとう』


 俺はお礼をミライとミライの父親に言った。

 

『いや。別にまぁ。うん』


 父親は『そんなにうまかったか?』という顔をしている。

 

『いやいや。全然。それとお風呂入ってきなよ。あっちにあるから!』


 ミライは優しい。優しすぎる。

 とりあえずお風呂入るか。

 それより、ミライの母親は見当たらなかったな。

 聞いてみようか。いややめておこう。

 それくらいきいてはいけないと、俺でもわかる。

 なにも分からないフリをするのが大人の対応さ。(大人ではない 現17歳)



『うわぁぁぁ、いい湯だーー。』


 俺は1人、お風呂に入ってた。


『おーい。入るぞー』


 えっだれだれだれだれ。

 扉が空いた。

 扉の奥からは…。

 おいおい待てよ。


——で…でかい。

 

 何がとは言わない。

 扉の奥からはそう。ビックソーセージの持ち主、ミライの父親が入ってきたのだ。



——き、気まずい。


『ま、まぁなんだ。ミライはいいやつだろ』


 ミライの父親が俺に話しかけてきた。

 めちゃくちゃ話しかけづらそうだったが話しかけてくれたのだろう。


『はい。めちゃくちゃいい人です。僕みたいな人を助けてくれるなんて』

『そうだろ!そうだろ!いいやつだよな。後、顔も可愛いしな!ぎゃははははは』

『はい!顔もめちゃくちゃ可愛いです!』

『そうかそうか。そうだよな!』


 俺とミライの父親はミライの話で盛り上がった。

 まぁ、俺はミライと今日初めて会ったばっかなんであまり自分から話していないが、父親が色々話してくれた。

 例えば…、赤子の頃のことや、剣の訓練中になぜか魔法が使えるようになったとか。

 って、今思えば魔法ってこの世界にあるんだ。

 

『後、君も知ってると思うけどさ。ミライは今いろんな国から狙われてるんだ』

『えっ…』


 急に重い話に変わったな。


『ミライには魔物を引きつける能力がある。その能力で魔物を引き寄せ、倒し、お金を得たりしようと目論んでるものなどもいるらしい。今はその能力を封じさせる札をお腹に貼ってるから、魔物は来ないんだ』

『えっ。じゃあ僕入れないほうがよかったんじゃ…』

『そうだ。だからさっき怒ったんだが、多分大丈夫だろう』

『えっなんで…?』

『お前からは悪いにおいがしないんだ。まぁするとしたら変態の匂い?かな』

『はっはは』


 わかっただと。変態だと。

 こいつはただものではないな。

 それより、この父親の名前ってなんていうんだ?


『あの、重い話の後失礼かもしれないんですけど、名前を教えてもらっても…』

『そうだったな。俺はローデ=アクアというものだ。よろしくな』

『はい!』


 そのあと、俺とその父親は何分か話し、風呂を出た。


『あっ!』


 ちょうどだった。

 アクアが髪を結んで、歩いてるところにばったり会った。

 アクアもちょうど風呂を出たってところだろう。

 よし、今日の締めだ。

 

『ここが、ストの部屋ね。ゆっくりしていって』


 俺はその部屋に入った。

 ミライもそのまま来ると思いきや、自分の部屋に戻った。

 はいはい。タオルとか着替えとか持ってくるのね。

 待ってる待ってる。


 それにしても、いい部屋だな。

 ベットも綺麗だし、トイレもあるし、ドアはすごい、いい木使ってそうだしね…。


 ん?


 ドアの下に一枚の札が落ちてあった。

 

——なんだこの札。


 あれ?札。札といえば。まさか。

 俺は窓から外を見た。

 出遅れだった。


——おい。なんだこれは。


 大量の魔物がこの家に近づいてきていたのだ。

 

 

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