《番外編第19話》ヒビキ・ロットレンの本気
───ヒビキ・ロットレン。
サイガン・ロットレンへ
本来であれば未だ1歳児である彼女。何故14歳の
───そしてヒビキが叫んだだけで、リグレット・バルバリアの中に潜みし魂を抱く傀儡共の意識を混乱させるに至ったのか?
まず最初に………というよりこれが最大の理由なのだが、最初に扉の力を開いた父の
能力者の創造を具現化出来る扉の力。ヒビキの場合、生まれた直後どころか、胎児である頃から既にその能力を父ローダへ分け与え、その力を底上げしていた。
………ヒビキ。漢字で書くと響。以前も似た様なことを語ったが、彼女は自分の意志を周りの人間達へ
以前祖父サイガンが語った『この子、自らの考えを隠すことに
寄って彼女が度々見せるその姿も、自身が今一番
回り道をしたが本題に入ろう。相手の意識を
良く考えてみて欲しい。
ヒビキ・ロットレンはこれを傀儡達へ使ったに過ぎぬ………と語ればこの力の根源が伝わったであろうか。
さらに
しかも150年前、暗黒神と呼称されたヴァイロのみならず、その戦闘で散っていた命とすら纏めて会話するという人間の脳で出来
無論、これをやってのけたのは、ローダ自身である訳だが、これを後押し出来たヒビキ………。他人の意識と
人の世に生きる彼女に取って、これは大層困った能力………というより決定的な欠点と言っても過言ではなかろう。
ただ逆転的なことを言えば、ヒビキ・ロットレンは1歳にして、本音で他人と
寄って相手の気分を乱す行為………これは彼女の本気ですらないのだ。もしこれを将来
◇
───さて話を本題に戻そう。
ヒビキの声で
「………『
リイナが炎の獅子に騎乗しつつ、大胆にもリグレットの首を
─ガキがいっちょ前に
これは流石に直接的過ぎた。リグレットの首を見知らぬ翼が現れ
炎の獅子が襲い掛かったのはリグレットの左側面。気が付けば乗っていた筈の炎を
ズバーーーンッ!!
遂にリグレット当人の
─おのれッ! よくもッ! ………グハッ!?
「………あ、
蹴り込んだ
これが悔しがっている最中であったリグレットの脇腹へ、偶然にもぶち当たった。
反撃に転じようとしたリグレット。またもや不意を突かれた格好となる。防御を忘れた脇腹へダイヤモンドのように硬質化した攻撃が飛び込んだのは、余りに手痛い。
偶然の重なりとはいえ、リイナのパンチに続く屈辱感満載の強烈なる
「ソラソラ! 今ならうちらでも
パルメラの護衛達がそれぞれその手に弓矢を持って、
「………これはもう終わったも同然かなあ」
───………た、ただの人間如きが調子に乗りやがってぇぇぇッ!!
バアァァッと黒いカードが大量にバラ
だが相手の気分を読むことに
「い、いかんッ! 敵はまだ終わっちゃいないッ!」
「………そのカードに触るなっ!」
二人の悲痛とも取れる警告が仲間全員へ伝達される。指示が抽象的なローダに比べ、アスターの内容はより具体性を帯びていた。だが
もっと自分の放つ矢で相手に深手を負わせようと不用意に近寄った護衛の一人に、黒いカードが当たってしまう。
………それだけではない。
彼等が騎乗してきた馬達にもそれが刺さってしまったのである。
カードの犠牲者になるかと思えた連中だが、これといって悲鳴を上げる訳でも無ければ、血を流したりすることさえない。
けれども瞬時にその目が白目を失い、真っ赤に染まると一斉にリグレットの巨大な
─アーハッハッハッ! 迂闊な馬鹿共め! 我が力、
「………な、何だと!?」
まだ、まだ続きがあると言うのか? そんな思いのアスター。驚きの度合いがさらに増す。
─その黒きカードに触りし者は、人畜無関係で我の可愛らしい傀儡と化すのだ………。そしてこのカードは永久に降り続ける。何しろ死した魂共を元に
リグレットへ飛び込んだ連中が、次々と血肉と化す。馬達を
「……くそっ! あんなものが後ろの町まで降ったら、あっちは際限なく力を増すぞ」
これには熟練度豊富なアスターですら、驚きを超えて恐怖を覚えた。
「………問題ない、アスター・バルドワルド」
隣に降りたローダが異様な程、落ち着いている。相変わらず目は合わせずに、
「何故だ? どうしてそこまで落ち着いていられる?」
この騎士見習い、気でも触れたかと感じたがそういう訳でもなさそうだ。
アスターへの返答をする前に、ローダが我が娘ヒビキ、不死鳥を我がものにしたリイナ………。
………そして最後にその質問者である
「簡単な答えだ。全てに有無を言わせん
再びローダが視線を送るその先にいる者。自然と釣られアスターもその先を追う。
「………そしてどんなに
まるでこれまでの激しい争いが茶番………とでも言いたげなローダである。その口元が楽し気に
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