《番外編第18話》もう………メチャクチャだよ
ルシアが炎の精霊を
単純な防御力だけを考えるとあの
これからの
亡者狩りのエキスパートであるアスターならまだ判るが、まさかの
敵、リグレットは大人一人分程宙に浮いてる。空を飛べないアスター組。攻撃を届かせるだけでも一苦労なのだ。
一見適当に散らしてるかに見えるパルメラのスリングショットによる攻撃。
それをウザったく感じたのか、
(クッ! 何てこった!
ええいっ、ままよ! 最早どうにでもなりやがれと言わんばかりの態度で、
勿論その振り下ろしてきた手に合わせてである。カウンター…………? そんな格好良いものじゃない。このままでは、ガレッツオ自身がその蝿と化す未来しか見えない。
「グォォ!!」
パルメラの護衛から借りた盾を全面に押し出して、そのハエ叩きをまともに受ける。盾越しにも伝わる圧力に思わず叫ぶ。
(……今や!)
此処でパルメラが
蝿と化したガレッツオにトドメを刺そうと出現した騎士の
バシュッ! バシュッ!
「クッソ、
堪らず文句を言うガレッツオ。だが騎士の傀儡とて、これには同様に
まさか味方ごと撃ってしまうとは、想定外であっただろう。
お情け程度に口と鼻を白い布切れで
加えて身体の大きなガレッツオの影に隠れるという
「……フンッ!」
両手持ち、全力で突いたアスターのバスタードソードが、手に出現した傀儡の首を寸分なく
―おのれ
「どやっ!」
「……これでようやく一人分か」
怒りに打ち震えた声を出すリグレット。一方、してやったりのパルメラが、此処ぞとばかりのガッツポーズで勝ち誇る。
アスターは「ようやく……」と言ってる割に、これで
「あっ………」
「成程、アレで良かったのか」
ルシアとローダが
そしてローダ達は教えられた。勝ちに
「どうや! うちはなあ、戦闘に参加したことなんか確かにないわ。せやけど、いつも後ろから見ながら、どうすりゃええんか、ずっと考えとったんやでぇ!」
もう、このパルメラ……。自分の身内のみならず、
「それにチェスとか大好きなんや。見てみい、あのアホんだら! やたら強いだけの丸裸の
鼻息が荒い、きっと
「成程成程………
不意に響き渡る甲高い声。気が付けばルシアの背中に居た筈の赤ん坊が消えていた。
「………こ、この声! 間違いない!」
「だ、誰やあの子?一体どっから出てきたん?」
アスター組の中で、メルだけがその存在を知っている。あとはパルメラに限らず、
―な、まだ仲間が居たのかっ!?
そう……リグレットの驚きのままに、『まだ仲間が居た』のである。
しかし想像の
14歳程の金髪で眼鏡、如何にも学生といった出で立ち。
「ラァァァァァァァッ!!!」
地面に仁王立ちで、腹から巨大な声を出すヒビキ。その名前に捻りがないと言われそうなほど響き渡る。
「馬鹿ッ! いきなりやるなッ!」
「うぉっ!?」
「み、耳があァァァッ!」
耳を
―な、何だってんだッ、この
リグレットの中に
それらが全身へ及んでいるので、不気味さの頂点を極めた
「オラオラオラオラオラオラッ!!」
耳の痛みなんぞ構ってらんねえとばかりに、レイが可愛い
先程、ローダの剣を弾き返し、ルシアの拳すらも防いで見せた輩と同じとは思えぬ程の
「あ、そこの可愛い
「え…………わ、わ!?」
ルシアが
ディアマンテ………
その後、
「さあ、メルちゃん………だったよね? 靴飛ばしをする感じでそのまま足を蹴り出してごらん!」
「く、靴飛ばし………こ、こうかなァ!?」
ブンブンッ!
ルシアに言われたことを一応意識しつつ、メルが利き足を振り抜いてみる。確かに履いてる靴がすっぽ抜けた感じで足枷の影だけが飛んで行った。
「うわぁぁっ!?」
「あちゃァァ~…………流石に狙いが定まんないかあ…………」
だが残念なことに鋼より強固と化した足枷の先に居たのはロイドであった。どうにか避けて事無きを得る。
「こうかな? 違う………? こうだ!」
「うわぁぁ!? やめやめっ!! もう、
せっかく貰った力である。どうにかならないかと、その危険な香り
その度にロイドの頭上に爆弾が降り注ぎ悲鳴を上げつつ逃げる羽目に
「
リイナが再び
「り、
火の粉を巻き散らしながら舞い上がる友達に向けてメルが叫ぶ。メルの立場にしてみれば、置いてきぼり感の
けれどリイナは、それすらも知り抜いた上で敢えて置き去りにすると決めた。これから自分は、あの強大な敵と直にやり合う。
そこへメルを付き合わせようとは幾ら何でも踏ん切りが付かない。万が一………何てことがあるかも知れないからだ。
しかもそんなことを判った上でのことなのか? リイナの大好きなルシアお姉さまが、敵に近づかなくても攻撃が出来る超が付く強力な飛び道具を与えたのだから。
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