《番外編第5話》 好き(Like)と好き(Love)
馬車から降りた4人の少年少女達。何となくこの人達の存在を皆にバラしちゃいけないことを察したメルが、なるべく目立ちそうにない岩陰へと案内した。
「………そ、それはそうと、あなた達って一体どう……いう………」
「「「あっ………」」」
メルの突っ込みに冷や汗………いや、この
さらにこの異常事態に気づいた一人の剣士が物陰から足音を立てずに近寄ろうとしていた。
「………ッ! パ、パルメ」
「シーッ! 少し落ち着ちつきいな………」
剣士の方は勿論アスターであり、その肩をガシッと
文句を言いたいアスターの唇に人差し指で
「何故止める?」
「いや、子供相手に短気はいかんて」
一人だけ剣を抱えたまま地面に腰を下ろして目を閉じていただけのアスター。気が抜けない野営である。有事の際には飛び出せるよう、決して準備を
一方考え事をしていたパルメラの方は、馬車の奥の方でウトウトしてはいたものの、余り寝つけずにいた。
「訳を話すから此処からちょっと離れよ。こっちの声も届いてしまうわ。アレ、確かに
「………判った」
パルメラに
「………で、どうした、何があった?」
「いや、それがハッキリ判らへんからどうしよ思ってな。そしたらさっきの猫騒動やろ? ただの
それからパルメラとアスターは、馬車の影に身を潜めつつ会話を始めた。
パルメラの話によると本日の早朝、彼女の護衛達は、自分達より先んじて山小屋を出発した。だがその内1名だけ行方知れずになったそうだ。
ただそれに関しては驚く程のことではないという。リグレというこの護衛、これまでにも何度か同じような
何故そんな頼りにならない者を護衛任務に就かせているのか、アスターにしてみればそれだけで
何とこのリグレらしき人物が、目的地であるリビドの街外れで倒れているのを見たという情報を夕暮れ時、偶然に此方を通りすがった商人から聞いたというのだ。
それも命からがら辿り着いて行き倒れていた様子ではなく
「……せやから、これは誰かに送り届けて貰ったんに違いないんやろうけど、見ず知らずの
身振り手振りを交えながら、独特の
「それは確かに妙だ。
パルメラの話に耳を
これはかなり
「せやろっ? そしたらさっきのけったいな白猫や、なんや
「まさかっ………繋がりがあると?」
これには聞き捨てならないといった変化を見せるアスターである。直ぐに立ち上がろうと腰を浮かせる。
「それが判らんから、ちょっと
良いから落ち着けとばかりにアスターの
(……………ちょっとでええから
これは焼き餅という程、
「どう………だろうな………」
「えっ………」
此処で普段は余りお目に掛かれない、この男の複雑そうな顔をパルメラは目撃する。
「まるで得体が知れないものをあの三人から感じる………。ただ、
緊張、
一体何が正解なのか判らないといった気持ちを自分だけに見せてくれた気がして、
「アスター? なんや………らしくないなあ、何を言うてるのか判らへん」
「ハァ……俺もだよ」
人は同じ気持ちを伝えるのに相手が替わると違う態度で示す生き物だ。増してや年齢や性別が異なればより
この男、恐らく新しい
そう思えたらまんざらでもない気分に
さて………メルを含む4人の少年少女達である。中々気を赦してくれないメル。
そんなメルに自分でも良く判らぬ親近感を覚えるリイナ。
(どうしてだろう………)
最初はそう感じたリイナであったが成程と、直ぐに
「ご、ごめんなさいね。いきなりこんな出会い、ビックリして当然だよ。私達のこの状態をしっかりと説明するのちょっと難しいから………」
機転を利かせたリイナが出来得る限り簡単に、自分達のことをメルに説明した。私達はこの場に居る訳じゃなくて、この白猫が映し出しただけの言わば映像。
実際には少し西の離れた処に居るのだが、この白猫を通して貴女の声も聞こえていると言ってみせた。
「エイ……ゾウ…」
ただ困ったことにメルは余り字を知らない。映像とは? 先ずはそこから入らねばならないのだが、向こう側が透けて見える今の状態が映像なのだろと勝手に
「何しろこうやってお喋りが出来るんだし、せっかく歳の近い女の子に出会えたのだから私、メルちゃんと友達になりたいっ!」
これが掛け値なしのリイナの本音なのである。彼女はこれまで一回りも歳が離れている者ばかりを相手にしてきた。
勿論ジオーネとロイドという相手は確かに存在する。けれど同性で歳の近い人とお近づきになることは
約2年間、戦いに明け暮れて終わってみれば
大人達に
「歳………歳かあ。言われてみれば奴隷だった私を助けてくれた人、9つも歳が離れているの」
実に単純な話であるが、メルがリイナとの接点を見つけられ、ようやく心の鎖がほんのちょっとだけ解ける。
「え、え、その人って男の人? ひょっとしてメルちゃんが好きな人ぉ?」
恋バナが始まるのを感じ取ったヒビキが興味深々の顔で勝手に割って入ってくる。確かに女子定番の話題であるかも知れないが忘れることなかれ、彼女の実年齢を。
この割り込みにメルの顔が紅葉した
「……好…き、なのかな………。わ、私ってずっと奴隷で言われた通りにやってきたから、この気持ちが良く判らない………の」
これを聞いたヒビキとジオーネは首を
ヒビキとジオーネにしてみれば"
だけど今や恋人がいるリイナにしてみれば、"
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