《番外編第6話》猫の知らせ
「好きなのか判らない? そんなの自分の想いに身を任せればいいだけじゃないですか?」
最年少12歳のジオーネが直球でその想いをメルに
「だ、だって私……
「そ、それとこれとは………」
初対面の相手に構わず両目を
「大体これまでずっとずっと(主人から)言われた通りに動くことしか出来なかったっ! だから人を好きになるってどういうことか判る訳ないじゃないっ!」
メルが思いの丈を周囲に当たり散らす。続けざまに
「メル………ちゃん………」
掛ける言葉をどうにか
けれどもこの場合、自分の
「うんっ、そうだね。アスターって人を好きかどうか、それは
「……………」
「親でも友達でも関係ない。メルちゃんの想いはメルちゃんにしか判らないの。ただ………ね」
そうかと思いきや
「どうしてこれまで出来なかった
「うぅ、ううぅ………。そ、それは………」
リイナから魂送りを無事に果たせた要因を問われ、メルの心に
「まさか、ただ亡者達を
「………そ、そうかも知れないけど」
「貴女の
トクンッ、トクンッ………。
脈打つ鼓動がただ自分を生かすための機能によるものだけじゃない気がしてくるのを感じ取るメル。
「何だっ、今の声はっ! 何があったっ!?」
メルが強く投じた
「あっ、まずい。私達もう行かなきゃ、ごめんなさいメルちゃんっ」
「ま、待ってっ!」
他の護衛に見つかっては流石に言い逃れが出来なくなる。リイナ達三人が慌ててその場を去ろうとした処、メルが
「ま、また………
「
そう言い残すとリイナ達は元の白猫の中に
然し実の処この白猫、その後も遠巻きにアスター等を追跡し続けたのである。
◇
それから
「ねえ、この辺りって本当に秋なんだっけ? 何か暑くて仕方がないんだけど………。で、これから一体どうするつもり?」
ルシアの訴える通り、今日は何故だか異様に蒸し暑い。一行は風通しの悪い馬車の中に身を潜めている。
普通にしているだけでも不快であるのに、5人もすし詰め状態なので、さらに酷く悪化していた。
薄着のルシアがその不快さを隠す気がまるでない。シャツを構わずバタつかせ、自分の
そのあられもない姿、見て見ないフリをしているロイドとリイナの目がバチバチに重なってしまう。リイナのキッ! とした顔に泡を食ったロイドが背中を向けた。
「
「ルシアお姉さま。これは余り言いたくなかったのですが………」
もう一言告げねば
ルシアの「水浴びしたい」という台詞にビクリッと反応するのを止められないロイドが、自身の心の弱さを張っ倒したくなった。
「え、
「御結婚されてから
相変わらずのボーッとした顔で受け答えする
「へっ? 何の話ぃ?」
「………御自分の格好を
リイナの言う「そういう処……」が本当に理解出来ないようだ。完全に立腹した
「えっ!? あ、あーっ、
「「えぇ………………」」
思わぬルシアの返しにリイナとロイドの妄想が余計な仕事を
ローダさんとの日常がこうなの? 今度は思わずその
((………
将来の結婚生活に
「この周辺は知っての通り、亡者が
リイナとロイド、若い
こういう場面の空気を
「あの
此方は拳銃の手入れをしながらのレイである。やはり軽装には違いないのだが、武器の手入れに
不思議とルシアのような男の気を
「……今の処、彼等が動いたという話は聞いてない。ただ墓を荒らされているという少々気になる
「墓を荒らすっ!? 随分軽々しく言うが俺は気に入らねえな………」
予定調和の如く、ボソリッとローダの口から出た言葉。その内容がレイの正義感を大いに
隣のルシアが、こんなレイは珍しいと感じ、緑色の大きな瞳をことさら丸くする。普段のレイは
けれども彼女の昔の仕事は警察官、正義感は人一倍強いのだ。人生という
「………それもどうやら若い女性の墓ばかり、ジオも聞きづてらしいから詳細はあくまで不明だ」
飄々としていると言えば、ジオーネからの報告を語り続けるローダの方は、全く以って
「もしその噂が仮に正しいとしてだ。この間やり合った
「そうだ………。だから必ずしも関連があるとは限らないという話だ」
レイの言っていることは正しい、なのでローダは、まだ慌てる時間じゃない。そういう気分で落着き払っている。
―………ローダ様。
「ん、どうしたジオ」
不意にローダの心へ投じられたジオーネからの
丁度ジオーネからの報告について話をしていただけに奇妙な
―どうやら亡者達から、とある剣士を救ったようですね。
「……名前も場所も知れないのか?」
―これ以上近寄ったら、また(ヒビキちゃん)
亡者達、墓荒らしの噂、そして剣士………。
けれどもこの偶然の重なりに何かあるんじゃないかと
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