《番外編第3話》 過剰なる追跡"者"と少女の邂逅
メルの葬送が無事に成功をおさめた最中、ローダが一人、途方もない
(………あ、アスター・バルトワルド!? まさか彼も
「ど、どうしたの貴方? 酷く驚いた顔して………」
夫が余りに複雑な顔色で自分の黒い瞳を手で
「あ…………い、いや、何でもない。おぃっ、リグレ。お前の主人……パルメラらしき人物を探知した」
「えっ………ほ、
変わらずの泣き虫顔で主人の無事に
「こんな嘘をついて俺に何の得がある? リビドって街に向かっているな。当初の約束通り、そこで落ち合う手筈なんじゃないのか?」
見つけた連中から得た
よくよく考えてみたら
(………実は
いっそのことリグレの深層意識すら
「………リイナ、頼む」
「
ローダが「頼む」と真顔で告げただけで、その意志を
「あっ、あ、あ、………あれ?」
突如リグレがクラッと意識を失い、固い地面にうつ伏せで倒れそうになる処をロイドが支え事無きを得る。
リグレを交易町リビドまで運ぶだけなら何も眠らせる必要はない。部外者には余り見せたくない力を
「………
加えてローダが
リイナが懸命になって綺麗にした例の白猫の
「…………ニャオォォォンッ!!」
ただの縫いぐるみであったソレが、同じネコ科でも
リイナの胸から跳び出すと、力強く地面を4つの脚で踏みしめ、全身をブルブルと震わせた。
「……リスベギリアト・フェニス、さあ私の中の『
さらに詠唱を続けるリイナ。不死鳥という
だがこれまで耳にしたことがない内容であり、何しろリイナが「…与えなさい」と告げたことが少々異質。目覚めた白猫へ自分の右手を向けているのだ。
「ニャオォォォンッ!!」
白猫に天から一筋の赤い光が降り注ぐ。大きく開いた口で嘶き、自らを
次第に
ネコ科の猫であった筈のソレが、やがて本物の
「
「
燃え上がったままの背中を意にも介さず抱き締め、再会の喜びを全身で表現するリイナである。
当然のように互いの名を呼び捨てるのを
「再会の喜びの処をすまないがジオ、
「はいっ!」
頼り甲斐の塊と化したこのジオーネには有り余る依頼内容であろう。
「その後は若干
「
猫癖の語尾をハッと改め、返答を言い直す。YESを
グッタリしているリグレを無造作に乗せたジオーネが炎を翼を広げて青い空へと駆け昇ってゆく。
そこへ
(ハァ……
父が気付いた時にはもう手遅れ………まあ何を言っても曲げない処なんか、自分と瓜二つなのでどうしようもなかった。
◇
同じ日の夜………無事リグレをコッソリとリビドに送り届けたジオーネ。
ローダの指示を忠実に守り、アスター・バルトワルドとその連れ、メルや褐色の商人パルメラ等の一団を見つけていた。
昼間、魂送りをやり遂げたメルは、馬車の中で安らかに眠っている。
煮え切らない
聞こえは良いが、そんな理由で
お陰でようやくメルは、アスターの武骨な手に自分の手を重ね合わせ「私が眠るまで
白猫となったジオーネが、人に気づかれないよう、抜き足で忍び込む。既に夜半を過ぎて、他の者達も旅の疲れと
「ン………」
一方、酔いに任せての睡眠というものは実の処、浅いものだ。誰よりも先に寝ていたメルが月明りに
チャラリ………。
「…………」
彼女の足元で無粋な音を奏でる楽器の正体は、元・奴隷の証である
それらは今のメルにとって
けれどそれは仕えし者が入れ替わっただけ? 誰か
アスターへの想いが好意であるとするのならば、この重い足枷すら
チリンッ。
メルの足枷と明らかに異なる軽やかな鈴の音が、馬車の外から聞こえてきた。
「あれれ? 可愛い子猫ちゃん……何処から
「ニャア……」
地面にチョコンと座りメルを見ている白い子猫の首輪の鈴が奏でた音であった。夜空に浮かぶ白い月に負けぬ程、白い毛並みを輝かせている。
メルが両手を差し出し「おいで……」と誘うよりも先に猫の方が、軽快な足並みでピョンと馬車の中へ飛び込んで来た。
この白猫、語るまでもなくジオーネが化けた姿だ。
完璧に猫を演じきっているので隠れているより、
「わわっ!?」
思っていたのより早く自身の元へ飛びつかれたので
「ニャッ」
ちょっとやり過ぎではないか? そう思える程、
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