第7話 決着
ローダの
「……ろ、ローダッ!」
「る、ルイス様ぁッ!」
その痛々しい愛する両者を黙って観ておれずに、遂に悲痛な声を上げる金髪のルシアと黒髪のフォウである。
此処まで互いを殺すことなく、ようやく辿り着けたのである。よもや
けれど、そもそもやり合う以前からボロ雑巾な二人だったのだ。それがこれだけ張り合っているだけで危険なのも確かだ。
この
短めの金髪を
まさか
「………だ、大丈夫だ、ふ、二人共」
「父さんっ!」
「さ、サイガン殿っ! だ、だけどアレでは………」
そんな未だ母に成りきれていない二人へ声を掛ける
最早吐血したものを
「………お、お前達が心の底から愛した男共だ。そ、そこまで馬鹿では、な……い。ただもっとズダボロになって帰って……来る、から、はぁ………受け止めてやれ」
「…………う、うんっ」
「…………は、はいっ」
サイガンに
一体何を
ルシアもフォウも、互いの
他の連中は、声を出すのも
「ま、まさか僕を此処まで追い詰める………とは」
「ま、負けは……しないッ!」
次が互いに最後の手出し、だから様子を
だがローダの方は、惜し気もなくその
ルイスが相手を
逆手で握った右の
とてもコンパクトに素早く振り抜いたのである。この二人の争いで最速だと思える程に。
(……しまったっ!)
これにルイスが金色のレイピアで斬り結ぼうとする。いや、正確にはそうせざるを得ないと感じ、仕方なくやっている。
ローダの右をレイピアで抑えたが最後、次は間違いなく左のダガーで勝ち確の攻撃を仕掛けて来るに決まっている。
けれどもこの右は
(え………)
その
脇差の柄から伸びていた筈の光の刃が、フッと姿を消してしまったのだ。
防御一辺のためだけに剣を出していれば良かったのだが、相手の攻撃を抑え込もうと力を込めて振り下ろそうとしていた。
それ程にローダの右は神速と認識し、必要以上に力を込めてしまったのである。
「グハァァッ!?」
全身をばねにレイピアを全力で振り下ろしたルイスの首が下がる。それも丁度ローダが振り抜こうとしている右拳と柄の所へ。
後はもう
然も運悪く柄の先が
拳闘を得意とするルシアですら、思わず自分の拳を握り締め、相方の勝利を確信した。
余りにも
だが勝利の一撃を決めたローダ自身も苦痛の表情で倒れてゆく。やられたルイスが
「ろ、ローダッ!」
「る、ルイス様ッ!」
これはもう勝負あり。流石に助け舟を出しても構わぬというか、そんな深い考えより先に身体が勝手に反応し、二人を救いに駆けるルシアとフォウであった。
自分まだこんなにも動けたの? それぞれの反応速度と身のこなしに驚くルシアとフォウ。互いに愛する男を受け止める。
フォウがルイスより先に倒れる筈の地面に滑り込み、その上に絡まるように往くかにみえたローダの間に、ルシアが割って入ることが
「………よ、よくもよくも
「……
フォウに受け止められたまま、かなりみっともない様子で、大いに文句を垂れるルイスに対し、ルシアに支えられたローダが身に覚えのない疑問の顔を向ける。
「だってそうじゃないかっ! あの柄から伸びた光の刃で斬り付けた後に左のダガーで二段構えっ! そう思い込ませるための布石じゃないかっ!」
「しかもそう思わせておいてから光の刃を消して殴るッ! 何てふざけたな勝ち方を演出するんだっ!」
「………………違う」
「何が違うっ!」
「あの光の刃は、あれ以上出していられなかった………」
勝利したローダの声の方が余程小さく、勝者らしくない態度だ。負けた腹いせに怒るルイスの方が余程勢いがあった。
けれど相変わらずのボソッとした
「た、ただの………ぐ、偶然の重なりだって言うのかいっ?」
フォウに支えられながら、グッタリと全身の力が失われてゆくルイスである。それに対し、これも頼りなくコクリッと無言で
「ぐっ………。こ、これ折れてるな」
此処で気が抜けてようやく気がついたのか、殴った自分の右手が骨折したことに気づいたローダであった。
サイガンの予言通りにズタボロになった二人を一斉に笑い飛ばす周囲の連中がいた。
「お、お前
「ま、らしいっちゃあらしいですねっ! 然しラストで一番
腹を抱えて引き笑いしながらローダの事を指差しているレイの銀髪が大きく揺れ動く。
息をするのも辛そうである。
いつの間にかその隣にいたドゥーウェンも同様だ。闘いの場に
ローダとルイスを心底心配しているルシアとフォウ以外が皆、これ迄溜まりに溜まった緊張を噴火の如く、一斉に吐き出した。
死に際の老人を支えるリイナですら、自分の
―嗚呼……皆、笑っておる。これ以上の幸福なぞ在りは……しな…い…。
老人は全てに満足し、黙って静かに逝くつもりだった。だが当人すら知らないうちに
「と、
気づいたローダが顔を上げ、声の主を丸くなった目で見つめる。
皆の笑い声もピタリと止んで
「「父さァァァんッ!!」」
血の繋がりがない義理の息子と、やはり血は異なる創られた娘が号泣のうちに葬送した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます