第6話 ローダの指名した意外な相手
義父のサイガンが止めるのでなく「とにかくその手を握って応援してやれ」とルシアに告げた。
………ローダを応援、ならば手を繋ぐだけじゃ絶対に足りない。思考でなく身体が勝手に動いたルシアは、その豊満な胸に苦しむローダの頭を
そしてルシアはローダの真っ白な意識の中へ潜り込むことが出来た。まるで既にシグノの白さに取り込まれてしまったかのような世界。
けれどハッキリしたローダの意識が語る「シグノと対話がしたい、だからお前の力を貸してくれ」と。
共に白い、何処までも白い空間を、意識だけの存在となって
先ずは白い羽が落ちているのをルシアが見つけた。白に溶け込んでいる小さな白い羽をよくも探し当てたものだ。
この純白で
さらにこの白だけの世界に
―これは………
それを拾い上げたローダが考えを
―そうか、成程……。主人であるヴァイロの魂の解放、あの世で子供達が………彼の弟子達が待っている。何だお前、随分と優しくて
―うんっ、何だか可愛いね。
―判った、では
こんなやり取りを経て、ローダはシグノとノヴァンの
彼は最早、白の軍団のリーダーを超え、黒の象徴さえも受け入れ、そのどちら側にも属さない生き証人と化したのである。
「ば、馬鹿なっ! 弟はあのマーダですら引き出せなかった
その様子を終始見てしまったルイスが、城壁外のローダ達一行にすら届く声を上げてしまう。
皆がルイスの方を見上げる、それも堂々と全く
「来たぞ兄さん、それに俺だけじゃない。さっき
「フフンッ」
「ゴホッ、ゴッホッ!」
腕を組んで胸を張り、堂々と鼻を鳴らすルシア、流れとはいえ、かつては一応部下という立場であったドゥーウェンが
「それに城下町の
―そして何より兄さんにも、恐らくマーダにすら見えやしない友達が、全てアンタの相手をするっ!
―友達? そんなものに何が出来るって言うんだい、第一そうやって他人を頼らないと何も出来やしないお前に一体何が出来る?
ローダの両目が火のように
ルイスもわざとらしく
「おいでノーウェン、フォウ。もうこんな
「………グラビィディア・カテナレルータ、暗黒神の名において命ず。解放せよっ、我等を縛る星の鎖よっ、『
真っ赤に染まった大剣『
その呼び掛けに応じて破壊された城壁の穴から、
ヴァロウズ4番目の女魔導士フォウ・クワットロが金色のナイフ、コルテオを周回させながらゆっくりと浮かんでくる。
さらにヴァロウズのNo1、
二人共、ルイスの前に陣取って冷たい笑いを敵へと向けた。
「何だァお前等っ! たったそれっぽちの数でこの俺達とやろうってのかいっ!」
確かにそうだ、此方は11名もいる。しかも無力な者は一人として存在しない。加えて
負ける気がしないと感じるのが普通の状態だと言えよう。
「それは果たしてどうでしょう? 見えているものだけで早合点は危険だと思いますよ、せっかちなお兄さん」
「ジオ君っ!…………じゃない、ヴァロウズの
小さな身体に見合っていない大司祭の衣装、幼い割に勇気と知性を兼ね備えた少年が浮かび上がってランチアのことを馬鹿にする。
それを見たリイナの全身から炎が上がり、火の鳥の姿を成す。ジオーネは死んだとはいえ、その魂はリイナと共に在るから召喚出来る訳がない。
今さらジオーネに化けて一体何を狙っているのであろうか。
「そこの
「
細身の剣エストックではなく、初めから青白く光る日本刀を
ガロウはトレノを本名で呼びながら不審を抱く。確かに士郎は言った「日ノ本の侍だな?」とまるで初見のような疑問符を以って。
あの時、直接
これでも5人Vs11人だ、未だ数の優位こそ揺るぎはないが、先ずノーウェンの不死と異常な再生能力。
フォウの暗黒神高位魔法が炸裂すれば形勢は大きく揺れるだろう。
それに何よりルイス・ファルムーンである、フォルテザ襲撃の折には手の内を殆ど見せなかった彼が、マーダの中に潜む意識達を集めて開いた扉の力は計り知れない。
「フフッ、今の僕は不死です。そしてコレを使いますっ!」
「あ、あれは? やらせないはしないッ!」
ジオーネに化けたセインは、右手の人差し指で印を結びながら、何かの詠唱を始める。
セインが何を狙っているのかリイナにも想像が出来た、偽物のジオーネに飛びかかろうとする。
「邪魔はさせませんっ、『
セインはありったけのナイフを飛ばして、リイナを釘付けにする。全身にナイフが刺さったその姿は、まさに釘付けといった
もっとも今のリイナは燃え盛る炎の塊、刺さったナイフ如き瞬時に溶解させたのだが不覚にもセインに時間を与えてしまった。
「セントモルトの火の力、命を燃やす
セインの頭上に燃えさかる火の鳥が現れる。なれど同じ火の鳥でもあちらは地獄の使い魔だ、取り込んだが最期、
…………だがリイナは肝心なことを失念していた。
「不死の僕ならば、フェネクスすら操れる。本物の
確かにノーウェンによって召喚されたセインは既に死んでいるのだ。けれどもだからと言ってフェネクスの炎に耐えるというのであろうか。
「さあ、俺達も始めよう…………
「ムッ!?」
「な、何だって?」
ローダが
特に兄ルイスの動揺が治まらず戦いの最中だというのに、すっかり思考が停止してしまう。
二匹の竜に身体を差し出してまで、
「ウグッ? な、何だと?」
「
ルシアが懐に押し入り、みぞおちを燃え
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