第3話 真の導き手が引っ張り上げた母の胸
遂にフォルデノ城下町での争いが幕を開けた。
先ずアイリスを発動させた、レイ、ガロウ、ランチア、プリドールの4名が突出してどんな相手が来ようともバッタバッタと
それに隠していた
面白いのはサイガンの
車の前に何やら
『
「……全く、これじゃまるで私達が悪者みたいじゃない。ねえローダ」
「フフッ…違いない。戦争が終結したら
ルシアが半ば
隣を舞っているローダもこれには苦笑を禁じ得ない、しかもけし掛けたのは他でもない自分なのだ。
次に全く話題に関連のない東の空に浮かぶ
「ルシア……さあ俺達も始めようか」
「え、あっと……は、はいっ………」
不意にローダの方から結婚指輪が輝く左手を、同じルシアの左手に絡ませてきた。
その軽い不意撃ちにルシアが少々
「少し長い詠唱………と言うかまじないが必要なんだ。面倒だが付き合ってくれ」
「う、うんっ」
ネロ・カルビノンで既にローダからの説明を聞いているルシアなのだが、正直余り意味が
………自分をローダの中継点にするとかどうとか、とにかく信用する以外に選択肢がない。
「
(あ、明けの
いつになくローダが集中していることを感じたルシアは、その大きな緑色の瞳を閉じることにした。此方が見ていては集中力を乱すのではないかと感じたからだ。
確かにローダの口から紡ぎ出されるそれは、
ルシアはローダと共に東の空に輝く金星を見つめながら「俺に取ってのお前はあの
「我、これより
「…………っ?」
淡々とローダの
ローダが月で私が金星………やっぱり聴いていても
「我、これより
(な、何か
夜明けが近いとはいえど、まだまだ日の出の
けれど閉じた
「満ちた我の真円なる
「ちょ、ちょっとこれは一体!?」
もう余りに眩し過ぎて、そしてとにかく気になり過ぎて、とうとうルシアはその瞳を開いてしまう。
だがせっかく開いたというのに、目の前のローダが放つ輝きが強過ぎて、直視が出来ない。
どうやらローダの言葉通り、彼は真円の月………
その白き輝きと金星の輝きが同時にルシアを照らし出し、その場の光量だけが昼間に太陽を
最早ローダを直視は出来ないので、自分のことを見つめ始めるルシアである。自身も
やがてローダの背後にあった月は、満月の
「み、見てお父さん………る、ルシア姉さまが……」
「嗚呼……何と美しく
余りにも信じ
それも仕方のないことだ、
そこから
「そうかローダ………我が息子よ。お前さんは自らの
相変わらず目指すフォルデノ城だけを見て、愛車を
………やはりローダが最初の扉を開く青年で良かった。自分の生きた59年間……それに加えた約350年の眠りの期間。
およそ400年を超えた行いの愚かしいさ、それを全て洗い流して貰った。実に
「あ、
あと緑の髪飾りや帯があるのだがこれはローダの趣味か、はたまたロットレン家族の
………とにかくルシア・ロットレンが、神の導き手である天使と
「こ、これが私!? 私が天使!?」
「俺の
「わ、私に導きなんか求められても………こ、困るよ」
顔を赤らめてモジモジする天使が実に愛らしい、確かに「今からお前は天使だ」と言われて
「大丈夫だ、その姿でいつもの自分を大いに
「そ、そうなんだ………うわあぁぁ!」
そんなことを言ってる
「おおっ! 成程……これが我等の
ジェリドがまるで降り積もる雪を喜ぶ少年のように見上げてしまう、それ程までに
「そろそろ私達もやるよっ、お父さんっ!」
「うむっ、リィンよ……この力無き我に再びどうか力を貸してくれ。アイリスっ!」
ジェリドが祈る想いで
「リィンっ!」
「ま、ママっ! お母さんっ!」
再び愛する妻であり、甘えたい母の幻影が形を成したことに感激し、声を掛けずにはいられなかったジェリドとリイナ。
………ただネロ・カルビノンの上で呼んだ時と明らかに違う温かみが返ってくるのだ。
「り、リイナ? あ、貴方なのジェリド?」
「え…………う、嘘。ま、ママ?」
「り………リィン?」
まさかの声が聴こえてくる、相変わらず見た目はホーリィーンそのものなので、幻聴なのかと初めは思った。
ところがこのホーリィーンは、温かな白い手で以って、二人の家族の手を握ってきたのだ。
「え……待って………ママ? ママァァァッ!」
もうリイナは遠慮する気を全く失い、その膨よかな胸に涙雨を降らせながら飛び込んだ。このホーリィーン、向こう側が透けて見える存在ではない。
甘ったれた娘を大いに受け止められる身体を持っていたのだ。リイナが母のその手を、胸を、頬を、腕を………全身を辿ってから胸の内を容赦なく濡らしつつ自分の頬を擦り付ける。
「ママッ、ママッ! わ、私、気がついた時にはもう冷たくなっててッ! せめて最期に声を交わしたかったよぉぉ!!」
「ごめんね、ごめんねリイナッ!」
「………り、リィン、良かった………ほ、本当にッ!」
ホーリィーンは色々な意味で驚いたのだが、何よりも一番なのは10歳で家を飛び出した娘がこんなにも甘えてきたことである。
当に独り立ちしたものとばかり勝手に思っていた、例え自分が亡くなろうとも夫のことをしっかりと支えてくれるとものと………。
そんな妻と娘を後ろから震える両腕優しく
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