第2話 道中にて
ローダ達一行は、洞窟の賢者に別れを告げて、エドナ村へ向けてアマン山の森の中、帰路の途中であった。
ルシアとガロウは今一度、サイガンの元での修行を望んだのだが「お前達は充分強く、そしてそれぞれの道を歩んでいる。
今さら私が教える事など何もない、自らの精進だけを怠るな」と、アッサリ断られてしまった。
「ただ、もしどうしても困った時には、これに頼ると良い。いざという時は私と話をする事も出来る」
そんな前置きで”スマートフォン”、通称”スマホ”という機械を預かった。
これは以前語った鏡の本の4分の1位、
さらに同じスマートフォンを持つ者と互いの顔を見ながら通話が出来るという優れたモノであるらしい。
ま、もっとも、この世界でスマホを所有する人間がどれ程いるものか、定かではないが……。
おそらく通話の方はサイガンかドゥーウェンとの連絡だけに使われる事だろう。
ちなみに鏡の本は、サイガン
「全く……結局の処、何にも判らなかったぜ」
「そうかしら?」
頭をボリボリ
ローダはいつか枝にぶつかったり、転んだりするのではないかと、内心ハラハラしながらルシアの動きを追っていた。
しかしとても残念な事に彼自身が、太い木の枝に頭を強打してしまう。頭の中で星が回った。
「
そう言いながらスマホの画面を見る事を決してやめないルシアである。
(お前が言うな!)
と、言いたげなローダだが、ルシアの方はスマホを見ながら実に器用に歩くので言うだけ無駄だと諦めた。
「だって、そうじゃねえか。結局ローダの例の力の具体的な説明がなかった。それに封印がどうとか…なんだかたっぷり宿題を貰った気分だぜ」
そう言って
「ガロウ
ルシアはようやくスマホをいじるのをやめて、
「じゃあお聞きしますが、これまでにあの師匠が
兄弟子の鼻先を指差しながら問い詰めるルシア。
ガロウの思考が一瞬停止する。そして酷く間抜けな顔で肩を落とした。
「ねえな……皆無だわ」
「ねっ、そういう事。それにね……」
ガロウは深いため息をついて酷く
兄弟子の苦悩も理解しつつも含みを持たせながらローダの方に視線を送るルシア。ガロウもそれに習った。
「あー、言いたいことは判りますよ
顔も声も間抜けなまま、ユラユラ歩きながらそう言ってみるガロウ。
ルシアは兄弟子があまりにも間抜けになったので、思わずちょっと吹いてしまう。
「ホント、期待していいと思うの。まだ……よくわかんないけどね」
「お姉さま、恋する乙女の顔になっていますね」
リイナがガロウとルシアの間にひょこっと、その小さな身体を滑り込ませた。
「確かに……それだわ」
意地悪い顔でニヤっと笑い、リイナと二人して腕組みをしながら相づちをうつガロウ。
「もぅ! 何でそういう事になるのよっ!」
ルシアはガロウの脇腹に左肘を鋭くねじ込んだ。左拳を右掌で思い切り押した容赦のない一撃。
「うおっ………ちょっと、それ
ルシアの肘はガロウの
ルシアは「知るもんですか」と言って、顔を背けた。
一行から一番後ろ、少し離れた所を
昨晩、サイガンと二人だけでした会話の内容を幾度も再考しながら歩いている。
いや……正確に言うと、彼はサイガンの話の内容があまりに理解出来なくて、考えるというよりは、ひたすらに悩んでいるだけであった。
けれどただ一つだけ感じた事があった。
(これは
これがジェリドのサイガンのこれまでの行いに対する理解…と、言うよりも正直な感想である。
(よ、よくも
一人、
(こんな話、決して誰にも言えぬ! しかし……いずれ彼が成長するのだとしたら、皆も知る事になるだろう……)
ジェリドはその皆の中に、
(……私が重く考え過ぎなのだろうか?)
自分の前を楽しげに歩む若い仲間達の方を見るジェリド。
若い彼らならこの黒い雨雲の様な話を聞いても受け入れられるのだろうか。
どうか彼らが道を踏み外さないで欲しい。ジェリドは、そう願わずにはいられなかった。
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