第1話 レイ
フォルデノ城の元・国王の寝室。前にも語った通り、今は黒の剣士マーダの寝室。
今日も彼はこの寝室でヴァロウズ4番目の女、フォウと共にダラダラと、裸同然の姿で過ごしている。
勿論、国王の間と玉座は存在するのだが、彼は滅多にそこに座る事はなかった。
マーダの側近とも言えるヴァロウズの連中は、
よって普通の王の様に玉座でふんぞり返って、部下を招集したり、客人の相手をするといった類の
「オットー、良くやった。貴様に与えた
マーダはフォウを傍らに寄せて、実に上機嫌であった。
「フォウよ、あれを見るがいい」
寝室のベッドの向かいにある壁には、アドノス島全土を示す巨大な地図がある。この地図は実に精巧なもので、実際のアドノス島とほぼ違わぬ姿を表現している。
アドノスの技術力の高さが
その地図の方を
「これは何を指しておられるのですか?」
「あれこそ、
主に身体を預けたまま質問するフォウの顔は、どこか
フォウの黒い頭を撫でながら、愛しい女に諭す様に答えるマーダ。
「
「サイガン、た、確か、エディン民衆軍の指揮者と言いながら、裏で
「そうだ、我こそがこの世界を創造したと言わんばかりの不届きな
マーダは頭を撫でたまま、もう片方の手の指をフォウの身体の上で、好きに歩かせながら、クククっと笑う。
時折吐息を
「そっ、創造主、かっ神は、こっこの世にマーダ様だけでっ」
「その通りだ、フォウよ」
マーダが
実に楽し気にフォウの反応を見ながらその身体を
「けっ、あっ、消されるので、ございますかっ」
フォウは勝手に身体が動くのを止めるのに
この寝所には風呂も
「いや、泳がす」
「なっ、なぜ、ハァ…で、ござっ、アッ…」
フォウの真っ赤に染まった唇に深いキスをするマーダ。
「
(ハァハァ…)
もうフォウの方は、流石に会話を続ける事が出来なくなり、マーダにその身を任せ、グッタリとするしかない。
突然、寝所の扉の向こうから大きな声がした。フォウの肩が驚きで震える。
「よおっ、
「おおっ、戻ったか。ご苦労。遠慮は無用、入れ」
およそ遠慮を知らないデカい声であった。
マーダはフォウに対する行為を止める事なく、扉の外にいる人間の入室を許可した。
(えっ、そ、そんな……)
こんな姿を他の人間に晒す。フォウはうろたえたが、もうどうにもなりそうにない。
「おっと、お楽しみ中だったのか。ホントに良かったのかい?」
女はベッドの二人をじっくりと冷笑しながら見つめて告げる。流石に開けた扉を閉じてやる事だけが、一応の作法であった。
「構う事はない、そんな事より
言葉通り本当に構うことなく、自分とフォウの裸体を晒し、フォウを弄ぶ事を止めない。
「おやおや、随分とご
女はそう言いながら、両太腿のホルスターから
(う、うるさい、黙れ! 力だけの
フォウはマーダにいい様に弄ばれながらも、鋭い視線を女に送る抵抗を止めなかったが、哀れ…その姿は相手のいやらしい笑いを、かえって助長してしまった。
「まあ、どうでもいいぜ。俺に男は不要。こいつらがいれば野郎も女も化物も関係ねえ。こいつらをぶっ放す事が、俺の最高の快楽さ」
言いながら女は、相棒達に深いキスをする。
女の名は『ディエディン』身長170cm程、髪の色は銀色、女の割には無頓着らしくボサボサである。
5番目の女『ティン・クェン』の様な鋼の肉体は持ち合わせていないが、格闘術とボウガンの腕をかわれてヴァロウズの10番目になった。
一見、他のヴァロウズがまとう黒い制服やスーツの様なメイルに似ている格好だが、この装備、実は彼女の私物。
自国に居た時の彼女の職業は警官。白い革製のグローブと保安官を示すバッジが輝いていた。もっともバッジは千切って捨てた跡がある。
格闘術とボウガンと言ったが、これは彼女本来の
「ほぅ、見つかったのだな。元仲間に取り上げられたお前の相棒とやらは」
マーダが彼女の相棒を
「そう言う事だ。此奴は『コルト・ガバメント』っていうイかした銃だ。日本人が言ってる”ヒナワ”とかいう花火とは次元が違うのさ」
今度は黒光りする相棒を見つめながらニヤニヤしている。
「やつら、俺を捉えた時に二度と使えん様に此奴等をぶち壊すって言ってたんだぜ。でも価値に欲に目が眩んだんだろうな。後生大事に金庫に隠していやがったよ。全員ブチ殺してやった」
10番目は言うなり、ケラケラっと笑い飛ばした。
「随分と威勢のいいことだな、それはそこまで良い物なのか」
「そりゃあそうさ。コイツが撃ち出す
(この女! マーダ様まで侮辱するつもりか!)
この女、本当に礼儀を知らないと悔しくなったが、マーダにすっかりいい様にされて声も出せない。
「いいかい、此奴等を手にしたら、もう俺の事を
自ら8番である事を勝手に宣言した女はさらに続ける。
「但し、オットーなんて名前はさらに願い下げだ。そうだな……これから俺の事は、『レイ(ley)』って呼んでくれ。二丁拳銃のレイ、異論は認めねえ」
レイとなった女は見下す様な視線で、マーダとフォウに言いたくった。
「か、勝手な事ばかり言うな! 仲間殺しが
息を切らしながらようやく反論するフォウ。
「おっと、まだ起きてたのか
白目になって逝ってしまう真似をしつつフォウを挑発するレイである。
「自ら法の番人を語るか、良かろう、認めてやる。まあ私が認めるも何も、言い出したら聞かないのがお前だ」
冷笑しながらそんな自由なレイを認めるマーダ。器の違いを見せつける。
「さすが大将! 話が分かる奴は楽でいい。あ、あとついでにご所望してたガトリング砲。あれも
たった今、改名しレイとなった女はクルっと背中を見せて、挨拶代わりに右手をひょいっと挙げてから、退室していった。
「マ、マーダさまぁぁ……」
フォウは気が付くと涙を流していた。自分の
「なんだなんだフォウ。私のために泣いてくれるのか? まあ、気にするな」
マーダがフォウを優しく抱いてその頭を撫でる。
「私にとって女はお前だけで十分なのだ。どうだ、満足したか?」
さらに大粒の涙を流すフォウ。全ての
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます