第3話 知らない闘いと初めての遭遇
ローダはゆっくりと目を開いた。
その目に入ってきたものは、
「うっ……」
身体を少し起こそうとした所、全身の痛みに思わず声が漏れた。苦痛に
これだけ痛いのだ。きっと身体中傷だらけ………と覚悟したが、不思議と傷は一つしかなかった。
手の指、
さて………身体の次は頭を
自分は一体どれだけの間、こうして眠っていたのだろう。
ほんの
そう言えば船乗りのディンは、無事に自分の家へ帰れたのだろうか。彼は両親を亡くしている。4人兄弟の長男なのだ。
「俺が頑張るしかないんだ」と
島に渡る前、海が
小舟に巨大な火の玉が飛んできた際、家族にとって大事な彼を
だが彼はきっと無事に家族の元へ帰り、今頃英雄気取りで語っているに違いない。
ディンの思い出はこの位にして、なくした記憶を辿る行為に
暗闇の海に飛び込んだ自分、正直絶望的だという暗い意識に支配されそうであった。
だが思っていたより船は、既に陸地へ近づいていた様で、余り長く泳ぐ事なく足が届く様になった。
重い装備と視界が
夜空は
身体を動かす力も、周りに警戒する意識すら失った彼は、老人の様におぼつかない足取りで一番近い岩まで歩き、身体を
太陽は天高く登り切っていた。彼の耳に大きな爆発音が飛び込み、無理矢理起こされる。
「何だよ……」
明け方、島に辿り着いた時には気がつかなかったのだが、そう遠くはない東の方に民家の集まりが見えた。火災だと
どう考えても危険な行動なのだが、疲れ果てた身体に
するとどうだ、彼の目に巨大な青白い光が映り、その光は
「痛っ………」
此処まで記憶を辿った所で、急に刺す様な頭痛に襲われ頭を抱えた。何故だろう、此処からの記憶が戻る気がしない。
「な、なんだ? どうしたっていうんだ?」
訳が判らなくなった所に部屋の扉が
扉の向こうに現れたのは女性であった。
サラリとした輝く金髪は、肩に届くかどうかの長さ。二重の目は大きくエメラルドグリーンの様な緑色で、左目の下には泣きホクロがある。
両肩と胸には白くて赤い縁取りの入った防具を身に着けている。防具の下にはやはり白を基調とした衣服、フワリとした長袖でスカートは、膝の辺りまでを
透き通るような白い肌……という程のものではなかったが、健康的で綺麗な肌だと思った。余計な
耳には派手さはないが
ローダは
彼女はそんなローダの
「良かった、ようやく意識が戻ったのね…………気分はどう?」
そう言いながらベッドの脇にある椅子に座る彼女。明るくて活発さを感じさせる声である。
「か、身体中痛いけど、まあ平気だ」
顔を伏せ強がってみせたまま続けるローダである。
「き、君は誰なんだ? いきなりドアを開けたから正直驚いたよ」
別に急に入って来られた事に怒ってなどいないのだが、思わず文句を言ってしまった。そんな自分に驚き、ますます顔を
「あ、ごめんね。何か痛そうにしている声が聞こえたから、ノックもしないで開けちゃった」
そっぽを向いたまま文句を言ってきた青年を可愛いと思ったのか、ニヤリとしながら心が
「私はルシア、宜しくね。………って、貴方の名前をまだ聞いてないんだけどなあ……」
いよいよルシアの声が
「お、俺はローダだ……」
ボソリと相変わらず目を合わせずに名乗る。我ながら最低な自己紹介だと思った。
「そっかあ、ローダって言うのね。改めて宜しくね、ローダ君」
ちょっと面白くなってしまったので、ついからかってしまい、ルシアは本来最初に伝えるべき言葉を思い出し、ハッとなって
「ご、ごめんなさい………ちょっと調子に乗っちゃった」
ルシアはそう言いながら自分の頭を軽く小突いた。
「ローダ、本当に助けてくれてありがとう。貴方が助けてくれなければ、きっと私達は全滅していたわ」
「助けた? それってどういう意味だ?」
「……え?」
ローダは本当に訳が判らず、そっぽを向いていた顔をルシアに戻した。
それにルシアも思わず面食らった顔をする。
「覚えて…ないの?」
ルシアの大きな瞳がさらに大きくなってローダの方を
その後の事を思い出そうとすると、酷い頭痛がしてどうにも思い出せない状況も伝えた。
「そう、なんだ……覚えてないんだ。ローダ……貴方はね、本当に信じられない凄い力でこの村を救ってくれたんだよ……」
彼女はこの如何にも不器用そうな青年が、どうやって自分達を救ってくれたのか語り始めるのであった。
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