11.魔導書なんて燃やしましょう
吐いた後に、口を自分のTシャツの裾で拭きました。それを見てヴェニアミンは汚いなと思いました。
「あぁ、仕切り直そう。まずはその本は二アミンさんが内容を和訳してくれないか」
ヴェニアミンは正直この人に頼まれてもやる気が出ないのですが、とても良いあだ名を思いついたので承諾しました。
「分かった、針ゲロ」
「頼んだ」
一瞬、針口裕精は自分のことを呼ばれているのか認識出来ませんでした。
そしてヴェニアミンが本をパラパラとパッと見しています。
「針ゲロはその絵画でも考察しておいて下さい。私は骨で遊んどきますので」
「石器時代の子供か、お前も俺と絵画を考察するんだよ馬鹿」
またです。彼は聞いてないフリをします。そして蝦蛄エビ菜が棺桶の中の骨を分解しようとしているので、彼がシバいて元に戻させました。
「針ゲロ〜この子ども服についてなのだ」
天使だと思っていた薫田あるじですら、彼の名前を弄ってきます。もう堪忍袋の緒が切れた彼は大きな声で間違えを訂正しました。
「俺の名前は針口だ!吐いたからって変なあだ名をつけるな」
「針ゲロ…」
1番幼く、1番純粋な五郎にまで言われてしまったという事実に彼はショックを受けて、膝から崩れ落ちました。
「五郎とあるじたんに言われたら、俺はもう立ち直れない」
「冗談だから気にしたらダメなのだ」
「この
この二人の過去がどのようかものかは今の段階では分かりませんが、人としての印象は最悪です。
ゴキブリならばまだ救いがあったでしょう。いや、あれは存在からして駄目でした。
そしてその本の題名を見て、ヴェニアミンはゾッとしました。彼はこの本の和訳だけは絶対にしたくありませんが、この本から得られる情報は大きそうです。
「ニアミンこれ読みたくなーい」
「えぇ…題名だけでも読んでくれよ」
幼い子のように駄々をこねれば針口裕精は諦めてくれると思いましたが、それは見当違いでした。彼は少し白けてしまいました。
仕方なく題名だけ和訳することにしました。
「
彼以外の全員が政府というワードに引っかかりましたが、冗談だと思いました。
「どんな内容が書かれているのだ?」
そう薫田あるじが尋ねると、彼はできる限り大まかな内容に和訳し、全員に伝えました。
「
常識人二人と五郎はどこかのアニメのような、ファンタジーのような非現実的な事を言われたのでポカンとしています。
しかし蝦蛄エビ菜だけが、いつも通りの真顔でおりました。
「その
「簡単に言えばそんな感じだけど先天性の才能がなかったら無理。首から頭にかけて
針口裕精は普段ならば、その魔法使いのような子供の空想のような存在を否定します。
しかし、このような状況なら信じなければ道は開けません。
「皆さんはそんな印ありませんね」
「あったら目立つだろ」
蝦蛄エビ菜は全員の顔をペタペタと触って確認しました。針口裕精、彼だけが恥ずかしがって触るのを強制的にやめさせました。
他の全員は彼女の思うままに触らせましたが誰一人として、頬を赤らめた人はいません。彼が普通なだけで、他の人達が普段から人に触れられる事に慣れているだけです。
「なんというのだろうか、信じられないはずなのに、すんなりと受け入れられている自分に驚いている」
「つまり妖術が使えちゃうのだ?!」
ヴェニアミンの説明を聞いて、常識人二人が驚いています。
「その本燃やしましょう、あとから代償を請求されては元も子もありません」
「タダで妖術は使えなかったのだ…」
全ての物事に対価交換があるようにデメリットとメリットがあります。
その呪文や魔法のような物を使うのならば、それ相応の事をしなけれはなりません。しかし、先天性の才能がなければ、自分が家族だと思っている身内に不幸が訪れます。
「一服とこの本を燃やしたいのでライターとハッピーストライキを探しますか」
「奴らの手に渡ると苛立つから、ニアミンも手伝うよ」
「炎の妖術でも使うのだ?」
狂人二人がこの本を燃やそうとしています。ヴェニアミンは本を擦って火を出そうとしており、蝦蛄エビ菜は煙草とライターを探しています。
「あぁ、いいぞ。俺も協力しよう」
「わーい」
「早くしてー針ゲロ」
そして全員が火を探していました、まるで原始人のようです。
「そんた訳ねぇべぇ!えっかだな事して何が社会人だぁ?笑えるな。社会人ならしゃんとしろ!」
「キレ方に方言が追加されたのだ、そして針口はニートなのだ」
彼はキレました、烈火の如く。
和訳するとこんな事をして何が社会人なのだ。社会人ならちゃんとしなさい、と言っていました。
しかし、早口で怒っているので少し高い声なのも相まって、何を言っているのか分かりませんでした。だから狂人二人と五郎は無視して本を調べています。
そして本を調べていると中から、薄汚れた黄色い紙が出てきました。半分に折りたたまれていますがシワが沢山ついています。
「あれ、なにこれ」
「その小汚いメモ用紙はしおり代わりでしょうか」
ヴェニアミンはその汚い折りたたまれた紙を開けました。蝦蛄エビ菜はもう興味がなくなってしまったのか、煙草とライターを探しに行きました。
「読んでくれ」
針口裕精に催促されなくても、彼はもう内容を確認していました。
そして悪寒が走りました。内容は大したこともないのですが本の内容をしっかりと見た彼にとっては、最悪の事態に起こっても不思議ではない内容でした。
「この状況は現段階で考えられる最悪のシナリオかもしれない」
「何が書かれているんだ、それに」
全員が息を飲んで彼の次の言葉を聞きたがっていましたが、ずっとヴェニアミンは黙っています。
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