6.暗号は分かんないのだ
ヴェニアミン以外の4人がこの廊下の1番奥まで行きました。そして、彼の背中で隠れていた金庫のダイヤルのようなものがありました。
その上には金色のプレートに書かれた問題文もありました。
「暗号…か?」
針口裕精はこのダイヤルに書かれた英語の意味を思い出しました。adolescentとかかれており、その意味は青年期の〜、未熟な、という意味です。
「これは未熟って意味か」
「さっき回してみた、ちゃんと全部のダイヤルにアルファベットが書いてある」
それを聞いた彼はヴェニアミンがこのダイヤルを適当に回した結果この意味の単語が出来たのかと思いました。
一応ではありますが、このダイヤルを元の状態に戻していたのかを聞きました。
「元に戻しているんだろうな?」
「そりゃあもちろん」
彼はそれを聞いてホッとしました。対して、ヴェニアミンはなぜそんな事を聞くのか疑問に思っておりますが。
「対となる夫婦、片割れは元気に一人のshellsが生まれた。そしてもう片割れはshellsにもSwordにもならないもの、何回も何回も。それがanswerだ」
「なんで英語が混じっているのだー?」
金色のプレートに書かれている問題文をヴェニアミンが読みました。それを聞いた薫田あるじは、ちんぷんかんぷんの様子です。
「元の文章が英語だったからですかね」
「それか意図的にしているかだな」
蝦蛄エビ菜はそのプレートを指でなぞっており、それをヒヤヒヤして見ているのが針口裕精です。彼は変態がまた突発的な行動に移ると思っているからです。
しかし、その不安は無駄だったようです。
「shellsは貝、Swordは剣、answerは答えという意味か。しかしそれが分かったとしてもどういう事だ?」
「これに正しい英単語を入れればいい」
「十文字の英単語なんてわかんないのだ」
「とりあえず、この暗号は放棄しましょうか。他の部屋に何かヒントがありそうですし」
全員、この問題について考えましたが、答えがまるっきり分からないので放置する事にしました。
そして耳のいい薫田あるじだけが妙な声を聞きました。獣のような声にも聞こえますし、赤ちゃんの泣き声にも聞こえます。
しかし、その音は聞こえるか聞こえないかの瀬戸際にいますので、断定は出来ません。
彼女は両耳に髪をかけました、こうした方が音がよく聞こえるからです。彼女の左耳がV字のように欠けているのを五郎以外の三人が気づきました。
「なんか聞こえるのだ」
「何も聞こえませんよ?」
彼女の発言に針口裕精はギョッとしました。彼は普通の人よりもビビりなので、顔色がどんどん悪くなっていきます。
そして蝦蛄エビ菜も耳をすませますが、何も聞こえません。
「そういうのはやめろ」
「気のせいなのだ、もう何も聞こえないのだ。それよりどの部屋に入るか相談するのだ」
薫田あるじはもう何も聞こえなくなったので、その音の主なんてどうでも良くなってしまいました。
また、針口裕精は何も聞こえなくなった事にホッとしました。
「あそこがいい」
「なんであれなのだ?」
五郎が薫田あるじの服を引っ張りました、制服のシャツのシワが伸ばされていきます。そして五郎はあの白い部屋から見て右の扉を指しています。
追記しておきましょう、この廊下の扉は4つあり、どれもきっちりと対になるように配置されています。
「なんとなく」
「なんとなくであそこを選んだんだね」
五郎は素っ気なく言いました。ヴェニアミンは彼女の目線に合わせて、それを言いました。彼女は人と目を合わすのが恥ずかしいのか、すぐにそっぽ向いてしまいました。
「この部屋の扉、全て鍵がかかっていたら私達終わりますね」
「それは流石にないだろ。あの白い部屋にあった紙から推察すると、例え鍵がかかっていたとしても何か解決策はあるはずだ」
蝦蛄エビ菜が今思いついた事を言ったら、針口裕精にグチグチと反論を言われてしまいました。彼女は表情は変わらなくても、面倒くさいと思っています。
「蹴れば?」
「またあの凄いのが見れるのだ」
「絶対に駄目だ、野蛮な事をするな」
そしてヴェニアミンも彼女と同じように適当に思いついた事を言っています。それに便乗して、薫田あるじはワクワクしながらドアを見ています。
それに針口裕精はまた彼が愚かな事をすると思うと、胃が痛くなってきました。
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