人生も執筆と同じようなもの

 偶然というご縁が重なり、お邪魔した自主企画で、久しぶりに『あの娘に「すき」と言えないワケで』を読み返して、あぁやっぱりいい作品だったな、と執筆当時を感慨深く思い出す。


 2020年初夏、あの頃は暗中模索という感じだった。

 ちょうど会社を休職したその春は、未知のコロナウィルスで世間は騒乱の真っただなか、前年には母が亡くなり、人生の迷路や長いトンネルの中でもがいていた。


 以前にもちょろっと書いたが、趣味で始めた執筆が、自分には上手く行く訳がないと常々思ってる、非常に卑屈でネガティブな人間だ。

 だから、処女作『神のまにまに』も「自分が趣味の執筆で上手く行く訳ないんだから、京都の話なら京アニさん大賞に応募して、こんなのダメだ、お前に才能ねぇよって綺麗に介錯してもらおう」と応募した。

 それが、あの事件でごたごたして、中止の後に別の公募に応募したら、一次選考を通ったので「まだ書いてもえぇんやで」と言われた気がした。


 んで、先述の略して『あのすき』である。

 人生のどん底に居たので、趣味の執筆でただ時間を潰し、休職している自分は世間から爪弾きにされていると錯覚してしまい「今流行りのコロナのせいでテレワークしてる人間ですよ」って、謎の在宅勤務アピールをする、という地獄の時間を過ごしながら、パソコンに向かい執筆をつづけた。

 とにかく、書くという作業をしていないと、世間から目を逸らして空想の世界に身を置いていないと、怖くて仕方なかったから。


 その頃に書いたのが

『太陽が2個あってもいいじゃない!』

『東洋の魔女』

 そして、『あのすき』だ。



 しかし休職中で、おそらく近々で無職になる自分が執筆など続けて意味があるのだろうか、自問自答しながらも現実から逃れるための執筆は続く。

 そうして完成した『あのすき』を読みながら、ふと思った。


 処女作『神のまにまに』と同様に、もうこの趣味の執筆も終わりにしよう。

 だったら日本最高峰の電撃大賞さんに送って、綺麗に介錯してもらおう。


 そう考えて送った。


 ちなみにこの思考は、学生時代に二次創作をしたり、ビッグサイトで薄い本を出していた妹には理解できない帰結だと言う。

 趣味なら趣味で続けるでもなく、プロ志向でもアマ志向でもなく、いきなり公募とかキチ〇イの所業と言われたりもした。


 そうして、電撃大賞さんのクビ宣告を待っていたのだが。

 それがまたも一次選考を通過してしまったから、困ったもんだ。

 またしてもラノベ神から「まだまだ書いてもえぇんやで」と言われた気分だ。



 そして、今はおかげさまで仕事もある。

 休暇を取って京都に行くこともできる。

 枯れ果てたと思っていた創作も、新しいアイデアもぽつぽつと浮かぶ。


 まさに『万物に感謝』。

 埼玉県など南関東で有名な某ラーメンチェーンのごとくだ。

 席に座ると、オーダー前からゆでたまごが1個つく。


 そして、好きなものを好きなように、好き勝手に書いているインディーズを公言している私も、ほぼ無宣伝なのに長編作品にフォローを頂戴したりする。

 こんな自分の作品も読んでくれる人が居る。ありがたい限りである。

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