喧嘩太鼓

 ようやく公募用の作品の第二稿が仕上がる。


「わだばワナビになる」

 と、突然に小説を書くと私が騒ぎ出してから。

 処女作から今作までいつも下読みに付き合ってくれる友人達に感謝。


 公募に出すにしても、ボツにするにしても、既に読者が二人も居るというバッファは大きい。

 死屍累々のプロットの亡骸の中から、どうにか作品にできそうな者を救い上げ、それを文章にしたためていくのだが、辛辣な意見を貰うことがある。

 特に思い入れが強い作品に対しては「えぇもん書けた」の作者と、「凡庸」の友人達の間で侃々諤々の討論となり、やむなく折れた私が「ぐぬぬ」と砂を食む想いで、堪えながら次稿に取り掛かることもある。


 そうして生まれた作品達は全て愛着がある。

 難産だったほど、我が子(主人公)達が可愛くて仕方ない。


 だが、今回は本当に難産だった。

 下読みフレンズ達に相談してから、初稿、そして第二稿と経てみても、いつも彼らの顔色ばかり窺ってしまう。

 それは仕上がった作品に自身が無いせいだ。

 いつものことだけど。

 締め切りぎりぎりまで読みなおしと推敲を繰り返すが、実際に応募してみても不安で仕方ない。

 そのくせ、愛がありつつも手厳しいアドバイスや、「ぐぬぬ」になる的を得た批判を食らうと喧嘩間際まで腹が立つこともある。

 それは書きたい奴と読むのに付き合わされてる奴。

 どちらも互いに「どうせやるならいいものを作ろう」という想いがあるから。



 そして、企画会議という名で温泉宿に集まり、風呂に入り、山海の珍味をしこたま食い、酒をしこたま飲み、マッサージチェアを満喫し、夜半過ぎまで会議は続くのであった。

 つまり私がもう小説を飽きる、断筆宣言をするまで温泉旅が続くのだ。

 これは一生モノの趣味にするしかないでしょうね。

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