第5話 衝撃の行動

「あなたがそう言う対応をするのであればこちらとしても考えがあるわ。」


どうやら彼女には考えがあるらしい。俺はそれを聞いてとんでもなく嫌な予感がするのであるが気のせいだろうか?俺がそんなことを考えている時だった、なんと彼女は俺が食べようと箸で持っていた卵焼きをそのままパクっと食べたのだ。


その瞬間、彼女以外のクラスの時間が止まったのが俺には明確に感じられた。かく言う俺の時間も完全に止まってしまっている。そんな俺たちとは正反対にこの状況を作り出した彼女はそれは、それは美味しそうに卵焼きを頬張っている。


「ん~、幸せ、やはりにらんだとおりね。この卵焼きは一見、誰にでも作ることが出来るような料理だけどこれは違うわ。例えるなら序盤に与えられた初期装備を極限まで強化してラスボスを倒すまでに至る装備といったところかしら。


もはやこれは卵焼きであって卵焼きではないわね。卵焼きの極致に至っていると言ってもいいわ、こんな代物、いったいどこで仕入れてきたのかしら?私はシェフの食事を何度も頂いているけどここまでの腕を持った料理人は知らないわよ。」


彼女はご丁寧に口にハンカチを寄せ、食レポをしている用だが人の箸から直で奪っていった後だ。そんなお上品に食べてももう遅いだろ!それと、例え方が絶妙に分かりそうで分からん。俺の作った卵焼きをここまで褒めてもらえたのは純粋に嬉しいけどよ。


俺は彼女の予想外の行動に脳内でツッコミを入れているがこの状況を周囲のクラスメイトも当然見ていたわけで・・・。


「「「「「ええええ~~!!!」」」」」


彼女の行動に驚きを隠せないもの、呆然としているもの、頭を抱えながら涙を流しているもの、黄色い悲鳴を上げているものとクラスはカオスな空間に仕上がってしまったのだ。


「な、なんだと、あの院西知佳が間島の箸から直接食べただと・・・。俺なんて周囲5mに近寄るだけで睨みつけられるのに。どうしてだ、俺とあいつの何が違うと言うのだ、初対面で頭をなでなでしたのが良くなかったのか、壁ドンをしておけばよかったのか!」


「嘘でしょ、僕なんて気さくに何回話しかけても”はい”か”いいえ”しか返ってきたことがないのに間島くんは彼女と会話をしている。どうなってるの!」


「キャー!見てみて、院西さんてあんな大胆な子だったの。もしかして間島くんの事が好きなんじゃない。絶対そうよ、じゃないとあんなことできないって。」


「絶対そうよ、きっと、今まであんな態度をとっていたのは間島君以外にやさしくしたくなかったのよ。私はあなただけにしかデレませんって。あれは効果抜群よ、院西さんの作戦勝ちよ。


あそこまでクラスにそっけない態度をとっておいてここで突然箸から直接なんてあれで落ちない男はいないわよ!」


何だろうか、このクラスメイト達のちょっとそうじゃない感想は。全員どこかずれていないか?俺はカオスとなった空間の中心にいる人間の一人としてこれからどうすればいいのか頭を悩ませるのだった。

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